読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

皆川博子

皆川博子「巫女の棲む家」

巫女の棲む家 (中公文庫) 作者:皆川 博子 出版社/メーカー: 中央公論社 発売日: 1985/08 メディア: 文庫 本人曰く、皆川博子自身の実体験が70%含まれているらしい。本書で描かれているのは、一人の霊媒師の存在をきっかけに新興宗教として確立されてゆくあ…

皆川博子「夜のリフレーン」

夜のリフレーン 作者:皆川 博子 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/10/26 メディア: 単行本 明日を夢みて、昨日を分かつ。十全に張りめぐらせた記憶の糸は、紡いで紡がれて自ずと現実を侵食し、無限の地獄に突きおとす。甘い砂糖菓子を口に含み、最後…

皆川博子の辺境薔薇館: Fragments of Hiroko Minagawa

ぼくが一番最初に読んだ皆川博子作品は「猫舌男爵」だった。玄人筋や、本職の方からは絶大な支持を受けているにも関わらず、まだ一般には知名度の低かった頃、いまから丁度十年前のことだ。 この短編集は、なんだか呑気なタイトルに騙されてあまり手応えのな…

皆川博子「絵小説」

皆川女史が好きな詩の一節を宇野亞喜良氏に送り、それを元に絵を描いてもらい、その絵と詩からインスパイアされた話を皆川さんが書くという過程を経て本書の連作は成り立っている。収録作は以下のとおり。 「赤い蝋燭と・・・・・・」(『幻冬抄』木水彌三郎…

皆川博子「U」

ここで語られるのは二つの時代の物語。一つは1600年初頭のオスマン帝国。もう一つは第一次大戦 時のドイツ、Uボート艦内。このかけ離れた二つの時代の物語が同時に語られる。いったい、どうゆうこ と?って思うでしょ?ぼくもそうでした。だって、30…

皆川博子「辺境図書館」

編愛する皆川博子が耽読した数々の本。もうそれだけでご飯三杯いけちゃいます。残念ながらこの中で、読んだ本は一冊もなかった。積んでいる本はドノソ「夜のみだらな鳥」、クッツェー「夷敵を待ちながら」、エリクソン「黒い時計の旅」、ヤーン「十三の無気…

「皆川博子コレクション2 夏至祭の果て」

ようやく時代が皆川博子に追いついた、というわけでありがたくもこういう企画が実現してしまうんだから、世の中捨てたもんじゃないよね。 いまでは第Ⅱ期シリーズが刊行されているが、こちらは比較的入手が簡単な本がセレクトされているみたいで、実際ぼくも…

皆川博子「影を買う店」

幻想小説を書く皆川博子には狂気が宿っている。そう思うしかないほどの奇想にときたまめんくらって しまう。たとえば、「陽はまた昇る」の出だしの二行。 ≪『ホテル』が、今、沈みつつある。 そうわたしに教えたのは〈風〉だった。≫ また、たとえば「柘榴」…

皆川博子「アルモニカ・ディアボリカ」

前回の「開かせていただき光栄です」の事件から5年。いまは盲目の判事ジョン・フィールディングの 元で働いている解剖医ダニエル・バートンのかつての若き弟子たち。犯罪を抑止する目的の新聞を作って いる彼らのもとに奇妙な屍体の身元情報を得るための広…

皆川博子「戦国幻野 新・今川記」

今川義元というと桶狭間において大軍を率いていたにもかかわらず、はるかに少ない兵で奇襲をかけて きた信長に討たれたまぬけな将という印象しかなく、戦国大名のくせに公家のようなお歯黒に化粧をして いたという変わり者でマイナスの印象しかなかった。ド…

皆川博子「少年十字軍」

神の啓示を受けた羊飼いの少年エティエンヌはエルサレム奪還の為、かの聖地を目指す旅に出る。当初 彼に従った者は数人の子どもたち。しかし、その行軍は世間の風評と共に次第にふくらみ百人以上の大所 帯となっていった。彼らをとりまく聖職者や陰謀をめぐ…

皆川博子「ペガサスの挽歌」

烏有書林という出版社は、まったく知らなかった。本書はそこが出しているシリーズ日本語の醍醐味の 第四巻なのである。本書以前には坂口安吾「アンゴウ」、石川桂郎「剃刀日記」、藤枝静男「田紳有楽」 の三巻が刊行されているそうな。知らなかった。本書も…

皆川博子「双頭のバビロン」

頽廃の都市バビロン。本書ではそれはハリウッドと上海に象徴される。そしてゲオルグとユリアンの融 合双生児がそこに配され、先行きのまったく読めない濃密な物語が語られる。 世紀末のウィーンで産声をあげた二人は手術によって引きはなされそれぞれ別の道…

皆川博子「開かせていただき光栄です ―DILATED TO MEET YOU―」

皆川博子の新作長編ミステリが読めるとは思わなかった。本当にうれしい驚きだ。ツイッターでもかなり話題になっていたのですごく期待して読んだのだが、これが期待に違わぬ素晴らしい出来栄えのミステリだったのである。 舞台は18世紀のロンドン。外科医ダ…

皆川博子「死の泉」

皆川博子の現時点での最高傑作ミステリと評価されている作品だ。文庫本で644ページ、重量級の長編 ミステリである。 舞台は第二次大戦下のドイツ。ナチスの政策で設立されたレーベンス・ボルン【生命の泉】という組織の 運営するホーホラント産院にいる妊…

皆川博子「花闇」

三代目澤村田之助。壊疽に罹り両足と右の手首、そして左手の小指以外のすべてを切断しそれでもなお舞 台に立ったという異形の女形である。本書はその田之助のあまりにも激烈で熱い生涯を弟子の一人である 三すじの目を通して語った物語。 本を読んでいて久し…

皆川博子「少女外道」

皆川博子の新刊が読めるとは僥倖ではないか。それも女史がもっとも得意とする短編集である。収録され ているのは七編、すべて戦争の影が色濃く落ちた作品である。 「少女外道」 「巻鶴トサカの一週間」 「隠り沼の」 「有翼日輪」 「標本箱」 「アンティゴネ…

皆川博子「水底の祭り」

久しぶりの皆川博子である。昨年の10月以来だ。本書は著者の第二短編集だそうで、ぼくが読んだのは 文春文庫版なのだが、いまでは絶版のようである。でも、安くで出回っているようなので比較的手に入り やすい本のようだ。本書に収録されている作品は以下…

皆川博子「奪われた死の物語」

これはなかなか素晴らしいミステリですよ。何がスゴイって、あらすじをうまく説明できないくらい入り組んでいるところが一筋縄ではいかないおもしろさに溢れている。それでもがんばって、ちょっと説明してみようか。 本書は二段構えの構成になっている。ある…

皆川博子「薔薇忌」

久しぶりの皆川作品。手軽に読める薄さが、いっそ憎らしい。そんな思いをしながら、やはり堪能しきっ て満足の吐息と共に本をおく自分がとてもいじらしい。 たゆたう大河のように壮大で、しかし表面に見えない部分では常になんらかの作用がおきて、変化に富…

皆川博子「トマト・ゲーム」

『トマト・ゲーム』 『アイデースの館』 『遠い炎』 『アルカディアの夏』 『花冠と氷の剣』 『漕げよ、マイケル』 本書に収録されているのは以上の五編。それまでジュヴナイル作品は発表していたが、皆川博子が一般向 けにデビューした記念すべき短編集であ…

皆川博子「化蝶記」

皆川時代小説集である。全八編それぞれバラエティに富んだ趣向が凝らしてある。まずはタイトルをば。 ■ 「化蝶記」 ■ 「月琴抄」 ■ 「橋姫」 ■ 「水の女」 ■ 「日本橋夕景」 ■ 「幻の馬」 ■ 「がいはち」 ■ 「生き過ぎたりや」 うれしいことに、この中で「化…

皆川博子「祝婚歌」

三ヶ月ほど皆川作品から遠のいてしまっていたので、これまた、もねさんから頂いた皆川コレクションの一冊をありがたく読ませていただいた。 これは、ほんとうに貴重な本なのである。だって、ネットで探しても見当たらないんだもの。ほんと、もねさんありがと…

皆川博子「ゆめこ縮緬」

もねさんから頂いた貴重な皆川コレクションの一冊である。ありがたく読ませていただいた。 本書には八編の短編が収録されている。 「文月の使者」 「影つづれ」 「桔梗闇」 「花溶け」 「玉虫抄」 「胡蝶塚」 「青火童女」 「ゆめこ縮緬」 いつものごとく、…

皆川博子「愛と髑髏と」

またまた皆川短編集である。やはりこの人は短編において素晴らしく鮮烈な作品を数多く書いていて、本 書に収録されている八編においてもそれは言を俟たないのである。 収録作は以下のとおり。 「風」 「悦楽園」 「猫の夜」 「人それぞれに噴火獣」 「舟唄」…

皆川博子「聖餐城」

1600年当時、いまのドイツは、オーストリア、チェコ、イタリア北部らの国家連合として機能する神 聖ローマ帝国として世に知れていた。そこで起こった三十年戦争は、プロテスタントとカトリックの宗教 戦争に端を発し、やがて大きな国際戦争にまで発展す…

皆川博子「雪女郎」

時代物の短編集となっているが、六編中ラスト一編だけは現代物だった。ちょっと変わった構成だね。 でも、このラストの一編である「夏の飾り」はなかなか凄いミステリになっていたので驚いた。以前アン ソロジーで紹介した筒井康隆編「異形の白昼」に収録さ…

皆川博子「倒立する塔の殺人」

戦時下のミッションスクールを舞台に描かれる女の園での不可解な事件。「ああ、おねえさま」という世 界が描かれているがそこにエロティックな要素はなく、むしろ無味無臭の健全な印象を与える。 驚くのは、その緻密な入れ子構造だ。作中作だけではなく、ま…

皆川博子「鳥少年」

本短編集には十三の短編が収録されている。タイトルは以下の通り。 「火焔樹の下で」 「卵」 「血浴み」 「指」 「黒蝶」 「密室遊戯」 「坩堝」 「サイレント・ナイト」 「魔女」 「緑金譜」 「滝姫」 「ゆびきり」 「鳥少年」 相も変わらず、捩れてクール…

皆川博子「結ぶ」

『そこは縫わないでと頼んだのに、縫われてしまった』 これは、本短編集の表題作である「結ぶ」の出だしなのだが、なんとも衝撃的な一行である。縫う?そこってどこ?読者の心を鷲掴みにするという意味で、これほどインパクトのある出だしをぼくは他に知らな…