2006-01-01から1年間の記事一覧
昨年は翻訳本のみのベスト10でしたが、今年はこの一年で読んだ本の中から翻訳、国内問わずジャンル も問わず選出いたしました。 ■1位■ 「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ/早川書房 静かに語られる残酷な真実。この本はおそらく年間ベストの上位に…
ダンセイニ卿といえば「魔法使いの弟子」や「ぺガーナの神々」で有名だが、不勉強ゆえ未だ読んでいない。というか、一種のとっつきにくさというものを肌で感じるので手が出せないでいたのだ。 そんな折、河出からダンセイニ卿の幻想小説の短編集が刊行された…
この本は多大な期待をもって読んだ。だって、『戦後のベストスリー』だとか『クリスティ、ブランドの 傑作にも比肩しうる』とかいわれた日には鼻息も荒くなろうというものだ。 しかし、また前評判に躍らされた。期待でパンパンに膨らんだ胸がラストで一気に…
久しぶりに新刊書店に行ってきた。二週間ぶりだ。 なんの目的もなく行ってみたのだが、ああ、見つけてしまった。そういえば、そろそろ出るってどこかで 見てたっけ。見つけてしまったからには購入しないと気が済まない。 というわけで河出の奇想コレクション…
あれ?これ、結構イケてるじゃん。 登場人物は、ほとんどがアニメの『萌え』キャラなのに、なんなんだこのしっかりした世界観は。 それに、本格物としてもいい線いってると思う。確かに最初の密室に関しては、見え透いたトリックです ぐにわかってしまったけ…
子猫殺しで一時話題になった作家である。 最近はまったく読んでないのだが、本書を読んだときは素直に感心した。 まず、明治末期の越後という雪国を舞台にしたところに惜しみない賛辞を送りたくなった。 この見たことも聞いたこともない、まるで異国のような…
風の冷たさに空を見上げる まるで冷蔵庫の中にいるみたいだ 空は赤い紫に染まって、ぼくを見下ろしている 空にむかって中指を突き立ててやろうかと思うが ぼくの手はポケットから出たがらない あったかいコーヒーが飲みたいな 彼女が淹れてくれたコーヒーが…
踏切の向こう側に立っている男の子と以前に会ったことがあると思った。 どこで会ったのだろう? 知り合いに白人の男の子はいない。なのに、ぼくはあの子を知っている。う~ん、これはいったいどうい うことだろう? やがて、電車が二人の間を遮断した。特急…
キャロルは14年前に一冊読んだきりだった。そのとき読んだのが「我らが影の声」。 これはオビの文句にだまされた本だった。『結末は誰にも話せない』なんて、とんでもないどんでん返しか驚愕の結末が待っていると思ってしかるべきではないか?それとも、多…
音のない世界で きみの声を聞いた やさしく心地いい きみの声 星の降る夜に 遠くまで出かけたきみは 二度と戻ってこなかった きみと最後に食べた アイスクリームは 大嫌いになったよ ぼくは また音のない世界に戻り 目を閉ざした なにも聞こえない なにも見…
99年度版「このホラーが怖い!」で海外ホラー小説部門の第一位を獲得したのが本書だった。 といっても、このランキング正統なホラー(恐怖譚)としての成果を如実にあらわしたものではなく、そ れが証拠にこの時の二位はキングの「グリーン・マイル」だっ…
幼児売春や臓器売買のことは知識として知っていたが、その実情はあまりにも酷いものだった。 もちろん、本書は完全なフィクションである。だが、ここに描かれている惨状が醜く強調された絵空事だ とは思えない。これは信じたくはないが、現実に起こっている…
実験精神あふれる作品を発表し続ける作者の最新作である。 武蔵野を舞台に六つの短編が収められており、その合間をつなぐ形で短い掌編が挿入されている。 各短編はそれぞれ独立したものでありそれ自体で完結しているのだが、合間の掌編によってそれぞれが関 …
本書は、今年度の「このミス」海外部門1位を獲得した。 国内の1位にもブッ飛んだが、海外部門の本書の1位にも少なからず驚いた。いや、誤解を招きそうなの で言い添えておくが、本書は間違いなく傑作である。近年、これほど心を揺さぶられた本もめずらし…
国枝史郎伝奇文庫の存在は、古本屋で「名人地獄」を発見したときに知った。もう、十年ほど前のことである。斬新で美麗な表紙がいっぺんで好きになってしまった。横尾忠則のアクの強い装幀がなんとも印象的だった。 今回はその伝奇文庫コレクションを紹介した…
ぼくが抱きしめると きみは、ノドを鳴らす やわらかい匂いに包まれて ぼくは、とても幸せな気持ちになる きみのためにぼくは死ねる 本気でそう思う これは自己欺瞞だろうか? 本心からそう思ってるんだろうか? よくわからない でも、とても幸せだ きみと同…
この歳になってラノベ信者となったぼくだが、それでもどうしても苦手なものがある。 それは、この世界特有の『萌えキャラ』だ。そういう登場人物が出てくると、一気にテンションが下がっ てしまう。「きゃうん!」とか「ふにゅ」なんてセリフが出てくると、…
誰かと一緒に商店街を歩いている。 ぼくは、連れとなにやら話しながらキョロキョロあたりを見回した。 店はみんな閉まっている。ぼくら以外に誰も歩いていない。 どうやら、いまは夜明け前らしい。 よくよく見ると、ぼくと一緒に歩いている連れは緒方拳だっ…
古今東西の密室物であなたが一番傑作だと思う作品は何ですか? そんな質問をされたら、あなたならどう答えるだろう? ぼく?う~ん、にげるわけではないが再三言及してるようにぼくは密室物のいい読者ではないみたいだ。 だから、これだ!とオススメできる作…
とても静かな小説だ。だが、とても静かなのにとても激しい小説でもある。主人公であるキャシーの一人称で語られるこの静謐な物語は、淡々とした語り口ながら一筋縄ではいかない物語だ。読者は、彼女の語りに耳を傾けているかのような感覚で読み進めることに…
ここ数年の海外古典ミステリ飽和状態は、ミステリファンにとってはうれしくて悲しい悲鳴を上げさせる ものだった。どうしてうれしくて悲しいのかというと、長らく読めなかった名のみ聞く作品が手に入るよ うになったのがうれしくて、でもそれを購入するには…
いまさらながら気づくことがある たとえば 人は心の中にもう一人の自分が居るってこととか 思いもよらない言葉が人を傷つけてしまうことがあるとか 表情は言葉以上にその人の気持ちを表していることとか ほんとうは心の中でわかっていたことだけど そういう…
ウィンターソンは、この本で二冊目である。先に読んだ「さくらんぼの性は」は、ユーモアと奇想に満ちたとてつもないホラ話で、小躍りしたくなるほどおもしろい本だった。そんな彼女のデビュー作が本書。半自伝的な作品ということで、狂信的な母親との葛藤、…
ベスターといえば、やはり「虎よ、虎よ!」が超有名作品であり、数あるSF作品の中でも最重要図書として知られているが、あいにく未だ読んだことがない。今回紹介するのは、短編集である。 この奇想コレクションに加えられたベスターの短編集、半分がた期待…
読み始めた当初、正直いってあまりテンションが上がらなかった。 まず右手がカニのハサミ状になっているビリィの正体がなんなのかわからないまま進んでいく物語にちょ っと不満だったし、作者の用意する言葉の奇抜さが鼻についてなかなか入り込めなかった。 …
また懲りもせず家にある本を引っ張り出してきました。 今回は節操なく紹介してみたいと思います。 まずは刊行当時(1993年)即購入したにもかかわらず、いまだに恐れをなして手がつけられないでい るトマス・ピンチョン「重力の虹」です。 この航空力学…
一昔前の流行作家であり、380もの作品を執筆した量産作家という目でしか見ていなかったが、本作を 読んで少しその見方を改めた。 確かに時代的な古臭さは鼻についてしまうが、なかなかどうしてこの作品に流れるミステリマインドには 感心させられた。とて…
いつも貴重な本のコレクションを紹介してくださる「三頌亭日乗」のもね店長の真似をして、ぼくも家にある蔵書を紹介してみたいと思います。 まずは、早川SF文庫から。 「危険なヴィジョン」は、ハーラン・エリスンが編集したSF思弁小説の大アンソロジー…
あなたの書いた手紙は法にふれるので、当庁の検閲改善課まで出頭を命じます、ときたもんだ。おいおいおい、ぼくの書いた手紙って、あのラブレターのことか?あれが抵触したっていうのか? いまさらながら、この周回文書検閲制度には腹が立つ。いくらテロ対策…
いやあ、驚いた。いきなりパソコンが壊れてしまうもんだから、どうにも身動きとれなくなってしまっ た。修理しようにも、電源が入らないのだから話にならない。長年使ってたこともあるし、もう買い換え 時だと観念して新しいパソコンを購入した次第。 いまま…