読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

芦原すなお「山桃寺まえみち」

ここに登場する桑山ミラという女の子は、とてもいい奴だ。 くたびれたからという理由で居酒屋「福乃」をたたもうとするおばあちゃんの後を継いで、大学を休学し てしまうところなどなんとも変わった奴だなと思うのだが、そこに集ってくるクセのある面々と繰…

広い座敷

戸を開けると、そこは50畳はありそうな大きな座敷だった。こんなに広い部屋は見たことがなかったので、度肝を抜かれて敷居もまたがずにたちつくしていると 「ささ、どうぞ遠慮なくお入りください」と傍らにいる人が手を差し出した。 呆然としたままそちら…

岡田秀文「秀頼、西へ」

この人の作品はこれが初めてなのだが、かなり気に入ってしまった。 本書で描かれるのはタイトルからもわかるとおり、大阪夏の陣で自害したといわれている豊臣秀頼が厳重な包囲網をかいくぐり西へ、薩摩の島津領へ逃げ延びたという伝説を下敷きにした決死の逃…

シンシア・アスキス他「淑やかな悪夢 英米女流怪談集」

夏はやっぱり怪談だと思って七月末からこの本を読み出したのだが、途中何冊か他の本に浮気したため、読み終えてみればもう初秋だ。なんとも締まりのない話である。 本書は怪談通として知られる三人(倉阪鬼一郎、南條竹則、西崎憲)が選び抜いた英米女流怪談集…

重松清「青い鳥」

「本が好き!」の献本第9弾。 初めて読む重松清である。本書で描かれるのは孤独な中学生たち。8篇の連作となっているのだが、それ ぞれに問題を抱えた中学生が登場する。そんな彼らに『たいせつな言葉』を届けて希望を与える臨時教員 の村内先生。彼は、吃…

野村美月「文学少女と穢名の天使」

このシリーズ、ほんとうに刊行ペースがはやいよね。なのに毎回毎回これだけの質を保っているのだから 作者の野村美月って人は只者ではないと思うのである。 で、今回メインに語られるのは、待ってましたの琴吹ななせちゃんだ。ぼくは、もうこの琴吹さんと心…

ウェンディ・ムーア「解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯」

本書を読んで感じるのは、一人の男の溢れんばかりの情熱である。それは狂気にも似た熱狂であって、常人の目から見れば常軌を逸していると映っても仕方がないものだ。 しかし、18世紀という暗黒時代に毛の生えたような医療の黎明期にあって、このジョン・ハ…

泥竜退治

ガトマンド城の西南6ジブのところにある霊守の森で生後間もない泥竜の鳴き声がしたという噂が広がり民の懇願が高まるにつれ執政にも支障がでるようになってきたので、やむなく討伐隊を編成して3月3日の早朝に出発した。 神話によれば、泥竜はこの世の汚泥…