読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ドリアン助川「あん」

タイトルになっている『あん』とはあの甘~いアンコのこと。主人公はちょっとワケありの独身男、千太郎。彼はさびれた商店街の一隅でどら焼きを売っている雇われ店長だ。そんな彼のもとにある日、高齢の女性がアルバイトの申し込みにやってくる。当然、千太…

長岡弘樹「教場」

「傍聞き」をすっ飛ばして、いま話題になっている本書を読んでみた。教場とは警察学校のことであって、いままでここを舞台にしたミステリはなかったんじゃない?本書で描かれている警察学校がリアルそのままかといえば、実のところそれはわからないのだが、…

池井戸潤「オレたち花のバブル組」

ドラマが待ちきれなくて、続きも読んじゃいました。今回はまたまたスケールアップして巨額損失を出した老舗ホテルの再建がメインのストーリーとなる。なんとその額百二十億!こりゃ大変だ。本社の営業第二課次長となった半沢はこの誰がみても負け戦になる困…

池井戸潤「オレたちバブル入行組」

ドラマ先行で観ていたのだが、どうもがまんできなくなって原作を読んじゃいました。おもしろいのは、ドラマを観て大まかなストーリーを知っていたにもかかわらずグイグイ読まされたこと。池井戸潤の小説作法のひとつに溜飲を下げるカタルシスの演出があると…

リンウッド・バークレイ「崩壊家族」

前回「失踪家族」を読んでかなり気に入ったリンウッド・バークレイの新作である。前回に続いてまた家族のつくタイトルだが、これはあまりいただけない。家族しばりでタイトルにこだわらなくてもいいのにね。しかし、本書もひとつの家族がおちいる窮地が描か…

コンラッド「闇の奥」

ぼくの中ではどうもコンラッドとメルヴィルが海と難解さという点で大いに重複する作家なのだ。つい先日メルヴィルの小品「ビリー・バッド」を読了し、間をおかずに本書を読んだわけなのだが、難解さという点では本書のほうが格段に上だった。 「闇の奥」は船…