読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2024-01-01から1年間の記事一覧

ジョセフ・ノックス「トゥルー・クライム・ストーリー」

ドキュメンタリーっぽい作りが、いったいどんなおもしろさを引き出してくれるのかと期待して読み始めた。女子大生が一人失踪し、その関係者たちのインタビューが続いてゆく。まず、この本自体がフェイクとして作られていて、すでに最初からこれが第二版だと…

中原昌也「子猫が読む乱暴者日記」

ぼくは京都に住んでいるのだが、いままで一度も三条商店街に行ったことがなかった。つい先日、ミシュランガイドにも掲載されたという空蝉亭で熟成とんかつを堪能した帰りにブラブラ歩いていて、ここを目にして行ってみたのである。 三条商店街は、西日本最大…

高野秀行「謎のアジア納豆―そして帰ってきた〈日本納豆〉」

毎朝納豆を食べます。お酢とタレを入れて食べます。ものごっつぅ旨いです。本書を読んで、それにさらに拍車がかかって、常時納豆が頭からはなれなくなりました。罪な本です。納豆好きには、たまりません。ぼくもミャンマーの納豆せんべい食べてみたいです。…

米澤穂信「米澤屋書店」

本を読むという行為は孤独な作業だ。でも、そこには計り知れない宇宙がつまっている。紙に印刷してある字を読むという行為がこれだけの喜びと感動と知識を与えてくれるとは! と、今更ながらにおもうのである。本書を読んでいると、読書というフィールドで自…

山田風太郎「くノ一紅騎兵」

久しぶりの忍法帖。角川の忍法帖シリーズはあと「忍法女郎屋戦争」一冊を残すのみとなってしまった。まことに悲しい限り。ぼくはほとんど再読というものをしないのだけど、風太郎の「伊賀忍法帖」「魔界転生」「忍法剣士伝」の三冊だけはしっかりくっきりと…

スティーヴン・キング「アウトサイダー(下)」

下巻にはいって、あのホリー・ギブニーが登場して事件解決への方向を一気に修正する。これは、ネタバレじゃないよね?下巻開くと最初の章題が「ホリー」だし、登場人物リストの筆頭に名前出てるしね。過去の事件で人智の及ばない事があることを身をもって体…

皆川博子「光の廃墟」

イスラエルのマサダ砦は、紀元六六年にパレスチナのユダヤ人がローマ軍の進攻から立て籠り四年にわたって抵抗した砦で、かつてヘロデ王が自身の離宮として整備して改修した場所だった。ユダヤ戦記でも有名なこの籠城戦は結果、数多くのユダヤ人の死者を出し…

ピーター・ストラウブ「ジュリアの館」

ストラウブはマイナーな作家で、日本ではキングほど認知されていないのだろうけど、ぼく的には「ゴースト・ストーリー」一作だけで、永遠に記憶に残る作家となった。 そんな彼の日本でのホラー初紹介作?だと認識しているのだが、合っているかな。 ま、そん…

朝宮運河 編 「家が呼ぶ --物件ホラー傑作選」

朝宮運河氏が編んだちくま文庫のホラー・アンソロジーで、こちらはタイトルのごとく『家』を題材にした物件ホラー傑作選なのであります。前回読んだ「宿で死ぬ」より身近な題材だから、よりゾゾれる作品が多いのでは?と期待して読んでみた。収録作は以下の…

永嶋恵美「檜垣澤家の炎上」

明治から大正にかけて、横濱で蚕糸で財を成した檜垣澤家に引き取られた妾の子、かな子。亡くなった母は、彼女に女が生きていく上でのノウハウを叩き込んでいた。ゆえにかな子は幼少より人をよく観察し、話を聞きそれをすべて生き残るために利用する術を身に…

スティーヴン・キング「アウトサイダー(上)」

ヘレン・マクロイの「暗い鏡の中に」でも本書と同じ謎が描かれる。同時に離れた場所に現れる同一人物。ドッペルゲンガー?双子?前者だとオカルト、後者だとトリックという解釈になるのだが、キングが描くとなると、そりゃ前者でしょ。 読み始めるまで、これ…

磯﨑憲一郎「日本蒙昧前史」

なにこれ?凄いよ昭和が煮詰まってるよ。昭和に起きたさまざまな事件、出来事がほとんど途切れることなく描かれてゆく。ストーリーはあって、ないのごとし。それぞれの事柄が連想のように続いてゆく。同時代を生きた身としては、それらはしっかりと記憶に残…

M・W・クレイヴン「ボタニストの殺人(上下)」

このシリーズ、おもしろい。おもしろいんだけど、今回はやはりとてもライトだった。いつもにも増してね。それがちょっと引っかかったけど、おもしろかった。正直エステルのあんな姿は見たくなかったけど、最終的にこの展開はほんと予測不能だった。 あらため…

王谷晶「ババヤガの夜」

この人の本、本質ついてて好きなんだけど、これはイマイチだった。長編(実質中編くらいの長さだけど)を読むのが初めてだったが、期待してたほどではなかった。「完璧じゃない、あたしたち」や「どうせカラダが目当てでしょ」を読んで、おおいに共感し、な…

伴名練「 なめらかな世界と、その敵」

よかったー。すべてがよかったー。久しぶりに余韻にひたったー。熱心なSF読者でもないから、目についたものをピックアップするだけなんだけど、この短編集はすべてが驚きとワクワクに満ちていて、かき乱されちゃいました。収録作は以下のとおり。 「なめら…

チョン・イヒョン「優しい暴力の時代」

生き辛さは、人生の伴侶だ。人は多かれ少なかれ問題を抱え、なんとかそれを乗りこえ生きている。そんな中で、ささやかな幸せを見つけたり、人の優しさに触れたりして人生捨てたもんじゃないと前向きになれたりするのである。 本書では、そういった日常の出来…

杉浦日向子「YASUJI東京」

杉浦日向子は大好きで、彼女の作品は大抵読んできた。出会いは「百日紅」だ。葛飾北斎と娘のお栄、居候の池田善次郎(のちの英泉)が織りなす江戸の風物や怪異。この作品で『走屍』なるものを知った。 それはさておき、それから彼女の作品を手当たり次第読ん…

小松左京「復活の日」

小松左京の本を読むのは初めてなのです。タイムリーでもあるよね、ここまで酷くないけどコロナを体験した身にとってはね。 有名な作品なのであらためて紹介するまでもないだろうけど、本書は未知のウィルス(ということにしておこう)で世界が破滅してしまう…

真島文吉「右園死児報告」

右園死児は人にあらず、物にあらず、でも存在するものなのである。本書を開けば、それに関する報告事例がどどーっと羅列される。それは不気味な現象だ。物の名前、人の名前、例えば右園死児という文字を書くだけでも災厄は起こる。いってみればそれはウィル…

M・W・クレイヴン「グレイラットの殺人」

謎や繋がりが明確になるところがミステリの中心線だとすれば、それらを解明する人たちは傍線だ。でも、この傍線はとても大事でクレイヴン描くところの本シリーズは、この主要キャラクターたちの魅力が素晴らしいから、一度その世界にハマってしまったらもう…

背筋「口に関するアンケート」

てのひらに収まりそうなくらい小さくて薄い本。60頁くらいだから、すぐ読める。何人かの大学生のインタビューが続く。どこかの山奥にある墓地。地元では有名な心霊スポット。その墓地の真ん中にある大きな木がヤバいって。肝試しってありがちだし、誰でも経…

M・W・クレイヴン「キュレーターの殺人」

続けて三作目です。前回も書いたけど、犯人が捕まってからもやっぱりおもしろいんだなこれが。 今回は、各所で指が見つかるところから話が始まる。指は三人の人間のもので、中には生体反応が出たものもあった。しかも、それらが発見された経緯を考えると、犯…

M・W・クレイヴン「ブラックサマーの殺人」

続けて読ませる魅力あるシリーズなのでございます。いまのところ、毎回主人公であるワシントン・ポーがなかなかの窮地に立たされる導入から物語が始まるのだが、今回は、かつて実の娘を殺害した罪でポーが逮捕した男がいたのだが、その殺されたはずの娘が六…

M・W・クレイヴン「ストーンサークルの殺人」

おそまきですよ。ようやく読みました。世評高いこのシリーズ、といってもシリーズ物を抱えるのがあまり好きじゃないからなかなか読まなかったんだけど、これだけ出す本が鰻上りに人気出てくると、やはり読みたくなるよねー。 で、読んじゃうとやっぱり追いか…

チョ・ナムジュ「82年生まれ、キム・ジヨン」

はいそうですよ。ぼくは男です。でも、本書を読んで大いに共感するんです。女性に対して物の言い方、接し方、目線すべてにおいて気をつけなければいけないと改めて思うのです。 自分のことを聖人君子とは思わないが、常に相手に与える印象や影響に気を配らな…

奈雅月ありす「おれたち戦国ロボサッカー部!」

ロボサッカーという競技があるのを初めて知った。ロボコンていうのは聞いたことあったんだけどね。タイトルからもわかるように、本書に登場する中学生たちの名前が戦国武将と同じなのはご愛嬌。一応、キャラが被っているっていう部分はあるんだけどね。内容…

武内涼「駒姫 三条河原異聞」

まあ、歴史を知っている人なら秀吉による三条河原の大虐殺は、本能寺の変と同じくらい有名な事件であり、史実としてどうなったのか?は一目瞭然なのだけれど、それを題材にこれだけのストーリーが描かれるんだから、歴史小説はおもしろいよね。 しかし、知っ…

マット・ラフ「魂に秩序を」

新潮文庫で最長だということだが、リョサの「緑の家」も結構分厚かったと思うんだけど、オブライエンの「カチアートを追跡して」も結構厚かったと思うんだけど、1000ページはなかったか、そういえばついこの間刊行されたジョゼフ・ノックスの「トゥルー・ク…

記憶は宝物

実際、記憶の彼方にある幼い頃の光景は美化され、かけがえのない宝物になっている。ぼくは、三歳でどこかの浜辺に家族と旅行に来ていて、記念撮影のために浜辺の端にある大きな石の上に座らされた。大人にとってはたいした大きさではなかったはずだが、三歳…

井上雅彦監修・著 「屍者の凱旋 異形コレクションLVII」

まえの「屍者の行進」もなかなか豪華なアンソロジーでかなり堪能した記憶があるのだが、今回また同じゾンビテーマで(異形コレクションとしては、グランドホテルぐらいしか、同テーマってなかったよね)アップデートされたゾンビ物語たちが一堂に会したという…