読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

2015年 年間ベスト発表!

今年も昨年に続いて格段と読書する時間のない年だった。31作品、36冊と昨年とほとんど平行線だ った。意欲は充分あるのだが、どうも時間をとることができずに二年連続こんな結果になってしまった。 もうすぐ新年なのに、こんな言い訳で終えることになる…

フェルディナンド・フォン・シーラッハ「カールの降誕祭」

非常に薄い本だ。解説を含めても百ページに満たない。その中に短編が三つ収録されている。それぞれいつものとおりシーラッハ独特の短いセンテンスの文章で綴られる不条理な話ばかり。 巻頭を飾るのは「パン屋の主人」。ここに登場するパン屋は、「コリーニ事…

朝松健 えとう乱星編「伝奇城」

『伝奇』という言葉には、ロマンがある。今の時代にあって、『伝奇』が脚光を浴びることはまずないだろうが、それでも『伝奇』には物語の真髄を世に流布してきたという確かな実績があり、それが積み重ねてきた連綿と続く歴史は、それ自体がすでに『伝奇』と…

古野まほろ「ヒクイドリ」

まったくといっていいほど、浸透しなかった。まず、連発される隠語に引っかかって話が素直に入ってこないし、前提を特定できない話の進め方に納得できず何度も文章を往復した。ひとえにぼく自身の理解力のなさが問題なのだろうが、よってぼくは本書を心底た…

島田荘司「新しい十五匹のネズミのフライ  ジョン・H・ワトソンの冒険」

ワトソンは『四つの署名』の中で結婚しているのである。これはあまり注目されていない事実であり、実際ぼくもホームズの聖典はすべて読んでいるにも関わらず、このことはすっかり忘れていた。でも、三十年ほど前に書いた感想を読み返してみると、ちゃんとそ…