2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧
本屋をブラブラしていたら、普段あまり見向きもしない双葉文庫の棚の前に平積みになっていたのが本書だった。その節操のないオビの文句に目を惹きつけられてしまった。手にとって裏返してみたら、裏の文句はさらに扇情的。『怖い!イタい!後味最悪!・・・…
昨年の暮れの刊行から、ずっと話題になっている河出書房新社の池澤夏樹個人編集の世界文学全集なのだが、ようやくフォークナーの「アブサロム、アブサロム!」が刊行されることとなった。この難解といわれて久しいフォークナーの『ヨクナパトウファ・サーガ…
この人は「悪人」で大いに化けた人だ。最近出た「さよなら渓谷」もまたリーダビリティに優れた本のよ うで、すごくソソられる。そんな著者の幼き日が反映されていると思わしき本書もまたリーダビリティに 優れた本で、一旦読み出したらグイグイ引っぱられて…
本書もキャスリン・ハリソンの「キス」と同様に事実に則した話であり、家族の間に横たわる暗い秘密を暴露するという非常に切実で胸の痛い内容となっている。まず驚いたのが第二次大戦当時、フランスでもユダヤ人狩りが行われていたという事実だ。不勉強にも…
皆川博子の本を読むのはこれが初めてなのだが、いっぺんでファンになってしまった。本書には五編の短篇が収録されているのだが、どれもが素晴らしかった。 巻頭の「水葬楽」はSF仕立ての作品。多くのキーワードが散りばめられ、それが効果的に配されたボー…
「おひょんなことになりましたな」 見知らぬおっさんは、何気なく声をかけてきた。 おひょん?聞き間違いか?いや、このおっさんは確かに『おひょん』と言ったぞ。 「えと、すいません。なんておっしゃいました?かき氷の音がうるさくて、聞き取れなかったん…
もうこのシリーズの新刊は読むことはないだろうと半ばあきらめかけていたキッド・ピストルズが最低の帰還を果たした。といっても、こちらは江神シリーズより少し短い13年というブランクだったのだが。 山口雅也=キッド・ピストルズという図式が刷り込まれ…
これはなんとも形容しがたい物語だ。いってみれば、大いなる空想のもと自由闊達に描かれたお遍路の話とでもいおうか。解説では筒井康隆が『巡礼』と形容しているが、まさにそのとおり。でも、ぼく的には西国八十八箇所巡りしているお遍路さんの姿が妙にだぶ…
巷で話題になった、この光文社古典新訳文庫の初読み作品は本書「神を見た犬」となった。 ブッツァーティといえば、以前「待っていたのは」という短編集を読んで大変感心したのだが、本書はイマイチ乗れなかった。 本書に収められている作品の多くに、奇想作…
ディッキンソンの描くファンタジーには、いつも驚かされてきた。 二十万年前のアフリカを舞台に人類の祖である原始の人々を主人公に血湧き肉躍る冒険を描いた「血族の物語」や、旧約聖書の世界を口承として伝えられる場面を描いた野心作「聖書伝説物語―楽園…
今月は、また結構買ってしまった。29冊だって。また調子に乗ったものだ。でも、今月はなかなかいい のが手に入ったので、正直いつもより満足している。では、いつものごとく書き出してみよう。 1 「タフの方舟1」 J・R・R・マーティン 2 「天使の鬱…