読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

宮内悠介「盤上の夜」

本書にはゲームを主題に据えた短編が六編収録されている。収録作は以下のとおり。 1 「盤上の夜」 2 「人間の王」 3 「清められた卓」 4 「象を飛ばした王子」 5 「千年の虚空」 6 「原爆の局」 それぞれ扱われているゲームは以下のとおり。 1 囲碁 …

アーナルデュル・インドリダソン「湿地」

アイスランド発の警察小説なのである。無論、ぼくもこの地で生まれた小説を読むのは初めてだ。ま、大抵の人がそうなんじゃないの?アイスランドに一番近い国で読んだことのある小説はスウェーデン発のミカエル・ニエミ「世界の果てのビートルズ」。これは最…

樋口毅宏「二十五の瞳」

誰もがタイトルから連想するように本書は壺井栄「二十四の瞳」をモチーフにしている。もちろん舞台は小豆島。あの小さい島を舞台に平成、昭和、大正、明治の四つの時代の物語が描かれる。それが一筋縄でいかないのである。それぞれの時代においてさまざまな…

木更津ヴァイス

異様に甘ったるいソーダをストローで吸い上げると、顔の半分ほどあるサングラスを上げてぼくは窓の外を見た。BGMはフィフス・ディメンションの「輝く星座」。オレンジ色の笠のついたライトが照らす店内はタバコの煙りとナポリタンの酸味のある香りに包ま…

皆川博子「双頭のバビロン」

頽廃の都市バビロン。本書ではそれはハリウッドと上海に象徴される。そしてゲオルグとユリアンの融合双生児がそこに配され、先行きのまったく読めない濃密な物語が語られる。 世紀末のウィーンで産声をあげた二人は手術によって引きはなされそれぞれ別の道を…