読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「夕陽が沈む」によせて

※今回は先日読了した皆川博子「影を買う店」に収録されていた「夕陽が沈む」の出だしを使って、その後をつないでいきたいと思います。 新聞を読もうと広げたら、またも活字が滑り落ちて紙面が白くなった。活字たちは列をなして床を進み、出窓に置いた水槽を…

皆川博子「影を買う店」

幻想小説を書く皆川博子には狂気が宿っている。そう思うしかないほどの奇想にときたまめんくらってしまう。たとえば、「陽はまた昇る」の出だしの二行。 ≪『ホテル』が、今、沈みつつある。 そうわたしに教えたのは〈風〉だった。≫ また、たとえば「柘榴」の…

エリック・フランク・ラッセル「わたしは“無”」

中村融、山岸真編「20世紀SF② 1950年代 初めの終り」に収録されていたこのラッセルの「証言」という作品を読んで感心したのだが、昨年の創元の復刊フェアで本書が再刊されたので読んでみた。 期待にたがわず、これがおもしろい。収録作は以下のとお…

火葬場

おじいちゃんの葬式だった。わけもわからず火葬場につれてこられて、気がつけばみんなとはぐれていた。するとまだ若いお母さんと幼い子の目の前に焼けた遺体が運ばれてきた。ほとんど骨になっていたが、まだ下の鉄板が脂で光っていてところどころ骨に黄色い…

メイ・シンクレア「胸の火は消えず」

人のもつ業や尽きることのない欲望、単純に怨みがあるから現世に未練があるというストレートな幽霊譚ではなくそういったドロドロした情欲や因果を秘め、なお且つそれを曝けだすことなくよくいえば繊細に悪くいえば曖昧に描いている。だから心底震え上がると…

柴田元幸 編訳「燃える天使」

ジョン・マクガハン、パトリック・マグラア、マーク・ヘルプリン、スチュアート・ダイペック、ピーター・ケアリーなどなど翻訳好きにはよく知っている作家も収録されていて、なかなか楽しめる。 内容的には、それぞれまったく独立したテーマの作品が収録され…