読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

莫言「牛 築路」

現在アジア圏で一番ノーベル賞に近い作家といわれている莫言の初期の頃の中篇二篇を収録。(ノーベル賞受賞しましたね) 「白檀の刑」を読んだときも感じたのだが、莫言という作家は一種の極限状態の中での食と暴力をことさら強調して描く作家で、そうするこ…

ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ Ⅲ」

よくやったと自分を褒めてやりたい。そう思ってしまうほどに本巻の最初の章には苦戦した。ま、そのことは追々語ることにして、とりあえず本巻に収録されている章は以下のとおり。 第二部(続) 14 太陽神の牛 15 キルケ そう、本巻に収録されている章は…

ニワトリ解体

家の近所に住む細くて色の黒いおじいさんは、ニワトリを飼っていた。ぼくはよくそこに遊びにいき、おじいさんがニワトリをつぶすところを見ていた。 大きな切り株の上にニワトリを押さえつけ、一刀両断に首を刎ね、すぐさま足をもって逆さに吊るす。そのとき…

山口雅也「狩場最悪の航海記」

あのガリヴァーが有名な旅行記の続編を書いていたというのが本書の設定である。日本にやってきたガリヴァーが徳川綱吉の側用人である狩場蟲斎(かりばちゅうさい)となんとも不思議で奇怪な冒険を繰り広げるというおはなし。 ノッケから偽書としての体裁が完…

木地雅映子「氷の海のガレオン/オルタ」

確かに、人は疎外感と付き合いながら成長していくものである。誰であれ絶対一度くらいは『自分は他人(ひと)とは違う』と暗示にも似た思いにとらわれたことがあるはず。もちろんぼくも例外ではなかった。自分の価値観を他人のそれと重ねあわせて、歯がゆい…

島田荘司「ゴーグル男の怪」

久しぶりの島荘なのである。前回「写楽 閉じた国の幻」を挫折したので、完読としては「ねじ式ザゼツキー」以来だ。もちろん島荘の本はその間、何冊も刊行されている。ただ食指が動かなかっただけだ。 だがこの「ゴーグル男の怪」はその奇怪なタイトルと影山…

森晶麿「奥ノ細道・オブ・ザ・デッド」

またまたゾンビなのである。ほんとゾンビ物には目がないぼくなのである。しかもなんとあの松尾芭蕉が出てくるというではないか。表紙をみれば、ラノベ街道まっしぐらのかなりポップな仕上がりなので、普通じゃないのはわかっていたがまさかこんな事になって…

古本購入記  2011年 10月

いまになってようやく『魔法少女まどか☆マギカ』を観ている。しかし、これは話題になっただけあって(なんと第32回・日本SF大賞の候補作にノミネートだって!)すごい話なのだ。魔法少女という可愛いヒロイン物の定番を素材にし、絵柄もいかにもパステル…