読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

北村薫・宮部みゆき編「名短篇ほりだしもの」

このアンソロジーシリーズは一応本書で終わりなのだが、四冊目ともなるとやはり弾切れになってしまうのか、本書に収録してある作品は印象に残らないものが多かった。収録作は以下のとおり。 【第一部】 「だめに向かって」 宮沢章夫 「探さないでください」 …

ジョン・アーヴィング「サイダーハウス・ルール(上下)」

本書の舞台はメイン州の片田舎セントクラウズにある孤児院。まだ第一次大戦が終結して間もない頃、一人のみなし子が生まれるところから物語は始まる。その子の名は、ホーマー・ウェルズ。彼は孤児院でみなの愛情のもと立派な青年に成長する。そして彼は院長…

エイモス・チュツオーラ「やし酒飲み」

けっこういろんな国の小説読んでいると自分で思ってたけど、アフリカの作家はこれが初めてだ。とても短い物語で、長さ的には中編程度なのだがその内容はとても濃い。なんせ、ここで語られる冒険行は十年以上の時を経ているのだから。 タイトルそのままのやし…

梶よう子「ふくろう」

はじまりはとてもミステリアスだ。主人公 伴鍋次郎が妻の八千代を連れて安産のご利益のある赤羽の水天宮に詣でようとしている。鍋次郎は近々西丸書院番士として出仕することが決まっていた。西丸とは将軍世嗣の住まいで書院番とはいわゆる警備員だ。まもなく…

千野帽子「読まず嫌い」

本書の著者は十三歳の夏に小説のおもしろさに目覚めたのだそうだ。それがどんな作品だったのかは本書で明かされるので、ここでは言及しない。著者はそれまで小説はまったく読んでおらず、漫画一辺倒だったというのだが、ここでぼくは大いに興味をそそられた…

伊藤計劃×円城塔「屍者の帝国」

これはみなさんもご存知のように刊行される前からかなり話題になっていた本だ。伊藤計劃の絶筆をプロローグにし、その続きを円城塔が書き継いだ。物語の舞台は19世紀末のロンドン。屍者に擬似零素をインストールし状況に応じたプラグイン(例えば御者プラ…

ウツボカズラにはじまる命の対価

こんな夢をみた。 ウツボカズラの中に落ちて、必死に外に出ようとするが当然のごとく内側に反り返った壁をのぼることなど無理な上に常に湿潤状態に保たれているのでつるつる滑って、まず壁にとりつくことさえできない。足元は膝下くらいまで不透明な液体に満…

8月の読書メーター

2012年8月の読書メーター 読んだ本の数:10冊 読んだページ数:3109ページ ナイス数:71ナイス ■空飛ぶタイヤ 素晴らしいリーダビリティ。単純な話のようでいてかなり複雑な群像劇をこれだけスムーズに最高の筋立てでまとめあげた手腕に脱帽。面白かった! …