読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

金仁淑「アンニョン、エレナ」

韓国文学を読むのは初めてだ。短編が七編収録されているが、どれも時代の趨勢に影響され、運命を受け入れざるを得ない人々が描かれている。そのほとんどが女性だというのも作者自身が投影されているのかもしれない。 遠洋漁業で各国に出向いていた父が過去に…

阿部智里「烏は主を選ばない」

さっそくニ作目を読了。遅れて食いつくと、こうやってまとめて読めるという利点があるからいいよね。でも、まあ、すぐ追いついちゃうんだけどね。 というわけで、「八咫烏」シリーズの第二弾なのであります。いまさらながらかもしれないが、一応知らない方も…

澤村伊智「ぼぎわんが来る」

最近の角川ホラー大賞作の中では断トツだった。ま、いままでの大賞作全部読んだわけじゃないけどね。でも、第17回と第19回の大賞作は、とんでもない作品だったのでその中では本作は作品として完成されていたと思うのである。 本書は三部構成になっていて…

川上未映子「乳と卵」

そこに向かうことのできない小説ってものがある。決して真似のできない独特の雰囲気や間。ひと昔前、清水義範氏が得意としていたパスティーシュなんてものを一切受けつけないような小説。唯一無二ってやつ?そういうのでパッと思いつくのは、まるでウィリア…

阿部智里「烏に単は似合わない」

もともと時代小説や歴史物は好きだけど、王朝絵巻みたいな話は苦手でいままで読んでこなかった。だって、王朝っていえば平安時代でしょ?平安っていったらもう異世界みたいなもんで、習慣から、食べ物から、物の考え方から、甲乙のつけ方まで、まったく別物…