読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

セオドア・ローザック「フリッカー、あるいは映画の魔」

この本も以前に一度紹介した。二年前のことだ。 しかし、いま一度この本の凄さをここで力説したいと思う。本書が刊行されたのは1998年。憶えておられる方も多いかと思うが、本書はその年の『このミス』海外部門の1位に輝いた。別に『このミス』の評価を…

嘘をあやつる少女

嘘をあやつる少女が男を殺した。男は天に目を向け、法悦の表情でこの世を去った。 その後少女は南に向かい、道端にいた野良犬を蹴り殺し絶頂に達した。 少女の行方は知れない。あとには男と犬の骸のみ。 ぼくはその光景を目の当たりにし戦慄と恐怖を味わった…

クリスチアナ・ブランド「ぶち猫 コックリル警部の事件簿」

今年はブランドの生誕100周年なのだそうだ。 本書はそれを記念しての出版ということで、コックリル警部が登場する戯曲、短編、エッセイなどが収録されているファン待望の作品集ということになっている。だから、本書はブランドのファンが読んでこそ感慨深…

マーク・Z・ダニエレブスキー「紙葉の家」

以前にも一度紹介したのだが、いま一度この奇跡の書といえる本をここに紹介したいと思う。 まさに、この本の出版は一つの事件だった。 本書はいままでにないタイプの作品だ。小説の概念が覆されるといえば大袈裟だろうか?やられてみれば何でもないことなの…

シオドア・スタージョン、アヴラム・デイヴィッドスン他 中村融編「千の脚を持つ男」

こういうアンソロジーは、やはり楽しい。なによりいろんな作家の作品が楽しめるところがお得である。 でも、それが自分の好みに合ったいい作品ばかりだという保証はないから、当たり外れも大きいのがアンソロジーの両刃の剣的な部分でもあるのだ。 本書はど…

ロリン・ブロウ

ロリン・ブロウ、やさしい人 君の笑顔に癒される ロリン・ブロウ、芳しき人 優雅な振舞いに心をときめかせる ロリン・ブロウ、たおやかな君 健気で一途な、ぼくの恋人 ロリン・ブロウ、ロリン・ブロウ 何回でも言うよ ぼくは君を愛してる ゆるやかで、美しい…

ガダルカナル・タカとの一夜

はやく行かなきゃ、授業に遅れる。ぼくは急いでいるので普段はつかわないエスカレーターに乗る。 エスカレーターは建物の真ん中に位置し、ちょうど吹き抜けの中を昇る形で配置されている。 いつもは階段で昇り降りしているので、エスカレーターにのると景色…

アンリ・トロワイヤ「ユーリーとソーニャ  ロシア革命の嵐の中で」

以前トロワイヤの「サトラップの息子」を読んだのだが、そこではロシア革命の戦渦を逃れてフランスに亡命してきたトロワイヤ親子が描かれていた。この作品は、小説家トロワイヤの真価が遺憾なく発揮された傑作で、小説好きの方なら誰にでも胸をはってオスス…

読書の愉楽〈続・続・続・続・続〉

山田風太郎に始まったぼくの読書癖は、ミステリに傾き当初はやはりライトな作品中心になっていったの だが、そのうち海外作品にも手を出すようになっていった。この辺の事情はすでに書いた。 しかし、そのうちミステリというジャンルの垣根を飛び越えて、本…

山口芳宏「雲上都市の大冒険」

これは、なかなか楽しめた。なんといっても鉱山都市を舞台にしているところからして、いろいろと胡散臭い。まして、時代は昭和二十年代である。いってみれば、なんでもありなのだ。そういう観点でみると本書はファンタジーとしてのおもしろさも兼ね備えてい…

麒麟児

「私の父は、昭和十年に奈良の西大寺に生まれました。父が生まれたとき、空の一角に垂直に昇る巨大な雲が見えたので、名前を龍雲と名づけられたそうです。この名前は、父を一生苦しめることになるのですが、その当時は麒麟児じゃ麒麟児じゃといって、みんな…

古本購入記 2007年10月度

もう十月も終わってしまった。今年は時間が過ぎるのがはやかったなぁ。そういえば、十月はぼくがこの ブログを始めた月でもあるんだなぁ。知らない間に二年が過ぎ、もう三年目に突入だ。このブログを始め た頃は右も左もわからない状態で、一歩を踏み出すの…