読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

詩をたしなんだりして

やさしい気持ちと素直なこころ

渇いた空気と広い空が気持ちのいい色 ぼくはその中を漂う ちくしょう、いい気持ちじゃないか この感動は誰にも伝えられない なぜなら、これはぼくが感じていることだから ぼくが感じている、この真実と同じ感覚は きっと誰にもわからないはず でも、伝えたい…

夜の底で

夜の底で子どもが叫ぶ ぼくはそれを寝床で遠く聞く あおおぉぉぉん あおおぉぉぉん なんて言ってるんだろう? よく聞こえないが、悲しんでいるみたいだ どこか痛いのかな? 何か悲しいのかな? 暗い中に月明かりで青白く浮かび上がる天井を見ながら ぼくはモ…

セルビアの二人

教会に行ったまま帰らない君 嘘なんかついてないのに いつもぼくの先回りをして 手足を拘束してしまう アリガトウという言葉が出ないのは そう思ってないからじゃない 恥ずかしいんだよ なんだか電車の中でお年寄りに席を譲るときみたいに とても面映くなっ…

殴られて

ぼくを殴ったね。 とってもとっても痛かったよ。 いじめるのが楽しいかい? 痛めつけるのは楽しいかい? 目が怖かったよ。 いつもと違う光が映っていたよ。 ぼくも、小さい頃よく虫を殺していたんだ。 あのときのぼくも、君みたいな目をしていたのかな。 あ…

わらべ唄幻想

おれがお前の お前がおれの 首筋に刃をあてて 千寿祝いは亀の旗幟 やがて祀ろう英霊は 夕の空へ軍靴響かせ おれがお前の お前がおれの 刃を引けば すなどる人の浅ましさ 宇部に風たつ周防灘 ゆかり哀しき姫囲い おれがお前に お前がおれに たぎる血潮をふり…

桜奇変

四月になれば今日子は 床に手を伏す蝶のように 急かれて、焦がれて、試されて 同じ境遇には落ち着かず ああ、なにもかもが煩わしい 目をやる親は、真紅の今宵 月が溶け出し、涙やむ 神社の裏に積もる死は はだけた着物の裾模様 落ち着かず、落ち着かず おま…

荒野の部屋

さみしさの匂いを消してください どうしてもぼくのところまで届いてしまうのです あなたのさみしさは、悲しみの奔流となってぼくを包み込んでしまう 息をするのも苦しいくらいに、ぼくを包み込んでしまう だから、さみしさの匂いは消してください 笑顔の消え…

ロリン・ブロウ

ロリン・ブロウ、やさしい人 君の笑顔に癒される ロリン・ブロウ、芳しき人 優雅な振舞いに心をときめかせる ロリン・ブロウ、たおやかな君 健気で一途な、ぼくの恋人 ロリン・ブロウ、ロリン・ブロウ 何回でも言うよ ぼくは君を愛してる ゆるやかで、美しい…

言霊

つぶやきは誰の耳にもとまらず ひんやりした風に乗って、どこかへとんでいってしまった こうして、言葉は思惑を包んだまま 世界のどこかへ運ばれる やがて、それが萌芽となって 小さな死や 誰かの思いつきや 目に見える奇跡となって 実をむすぶ 言葉は生きて…

こんな世界で

数珠つながりに連想する不埒な幻想 鏡に映るぼくの眼は死んでいて 最近では感動すら宇宙の果てに遠ざかってしまった 頭の中の不安なぼくと 心の中の短気なぼく どちらが勝ってもままならない 世間の風はいつもぼくを攻めるけど 誰も知らない 知ろうともしな…

父から息子へ

自分に素直になりなさい 他人が自分のことを、どう思うかなんて気にしなくていい 自分が信じることを貫きなさい それで、もし打ちすえられるようなことがあったとしても そのときは歯を食いしばって耐えなさい 心に不安があるときも 自分が信じることを貫き…

ドラクロア

きみのその白い腕をぼくの首に絡めて 柔らかくて、すべすべしたきみの肌を感じたいんだ いい匂いのするきみのすべてをぼくのものにしたい ときどき訳がわからなくなるんだ きみをどうにかしてしまいそうになる もどかしい気持ちに自分を抑えられなくなる 許…

かれらの笑顔

足りないものを補って ぼくらはどんどん前に進んでいった 足は強張り、目もかすんでくる でも、かれらはぼくときみを頼りにしている ここで倒れるわけにはいかない 気持ちが先行する 足はついていかない どうにもできない焦燥感が さらに身体に負担をかける …

勇気をください

夏でもないのに光があふれる 鼻をかすめる薫風は ただそれだけで幸せを感じさせ 空洞なぼくの心を満たしてくれる 揺さぶられた拍子に転がりだした どこかに失くしてしまった思いやり 花を見て美しいと思う心 自分を犠牲にできる強さ やさしい笑顔 大きな壁を…

いまの君がいて

白々しい明かり 美しい横顔 何度も聞いたあの曲 いつまでも続いた ぼくらの時間 君は夢を語り ぼくは見つめ続けた わたしのこと好き? 大好きだよ 愛してる? 愛してるよ しあわせ? とっても幸せだよ たわいない会話 でもそれが 静かで熱い毎日の 一番幸せ…

パッション

泣けるくやしく朽ちる恋 ほどなくためらう指と指 待つことに慣れた気弱なぼくは 責める言葉少なく、ため息混じりに微笑む いつからか君はぼくを殴るようになり 心は寂れて飛びのるスターライト 君が哀しい 大人はいつも泣いている 心震わせ泣いている ハニー…

水鳥

水管橋の上に大きな水鳥がとまって いつになくその姿に惹きつけられたぼくは 飽くことない欲求の眼差しで 穴のあくほど、その水鳥を見つめ続けていた その鳥は長い嘴と大きな羽をもった小憎らしいくらい優美な姿で じっとぼくを見返している ぼくたちの周り…

愛してる

風の冷たさに空を見上げる まるで冷蔵庫の中にいるみたいだ 空は赤い紫に染まって、ぼくを見下ろしている 空にむかって中指を突き立ててやろうかと思うが ぼくの手はポケットから出たがらない あったかいコーヒーが飲みたいな 彼女が淹れてくれたコーヒーが…

虚しい世界

音のない世界で きみの声を聞いた やさしく心地いい きみの声 星の降る夜に 遠くまで出かけたきみは 二度と戻ってこなかった きみと最後に食べた アイスクリームは 大嫌いになったよ ぼくは また音のない世界に戻り 目を閉ざした なにも聞こえない なにも見…

きみがいるだけで

ぼくが抱きしめると きみは、ノドを鳴らす やわらかい匂いに包まれて ぼくは、とても幸せな気持ちになる きみのためにぼくは死ねる 本気でそう思う これは自己欺瞞だろうか? 本心からそう思ってるんだろうか? よくわからない でも、とても幸せだ きみと同…

思考の過程は

いまさらながら気づくことがある たとえば 人は心の中にもう一人の自分が居るってこととか 思いもよらない言葉が人を傷つけてしまうことがあるとか 表情は言葉以上にその人の気持ちを表していることとか ほんとうは心の中でわかっていたことだけど そういう…

季節はめぐり・・・

かなしい春 緑の木 ふたりしずか 流れさる くやしい夏 青い水 ふたりいつも 泣き叫ぶ うつろう秋 赤い土 ふたりいつか 忘れさる あたたかい冬 白い肌 ふたり戻り 永久に幸せを・・・

リデムプション

あなたはゆっくり歩いている 静かな日曜の午後 木漏れ日がやさしい森の中 思わず笑みがもれてしまう すべてがうまくいってるという確信 こういう昂揚感はきらいじゃない やがてあなたは こんもり盛り上がった拓けた場所にたどりつく 森の中にぽっかり空いた…

スザンナ

あらくれ男に連れ去られたわたし 悲劇のヒロインみたいで そんな自分がちょっと誇らしい 誰もがみんな わたしを狙ってたけど 結局最後はこういう結末なのね 素敵な花に囲まれて 毎日、毎日、毎日、まいにち 愛をささやかれて やっぱりわたしは幸せなのかな …

太陽を月に染めて

いわれない中傷や 孤独との闘いに疲れたとき きみの眼には、雨が降る 時に雨は激しく 神の御心のごとく無慈悲に降り続くが 永遠にではない 太陽を月に染めるが如く それは 不思議にも静謐な感動をもって きみの心をあたたかくする けだし、人の世は住みにくく…

最後の願い

あの頭上に輝いている 赤い星は 火星だろうか ぼくは犬と一緒に 暗い夜道を散歩している 突然に ぼくは死を予感する 犬は無邪気に尾をふっている 今年の初雪は、たぶん十二月二十三日に降るだろうが おまえもぼくも それを見ることはないだろう 眼下を流れる…

赤い月の夜に

大きな月が不気味な赤い色をしている 丘にのぼって月を両手でつかもうとしたら あたり一面に星が降ってきた 光り輝く星たちは てんでばらばらに飛び散って 跳ねて、飛んで、消えてしまった 遠くから聞こえる車のクラクションに ぼくの思考がさえぎられる 君…

夏の午後に

通り雨が細く音をひそめて 山の木々からため息がもれた 少し離れたところにいたぼくは ゆっくり煙草を楽しんでいた 立ち上る煙を目で追っていると 視線の先に青空が広がった まるでカーテンが開くみたいに 青空が広がった そんなことに心がさわぐ なんでもな…

フラハティ・メア

冬の吹く夜に フラハティ・メアは、やってきた ツバの大きな帽子に 首から下げた幾つもの石 大きな目には白眼がなかった 悪夢の総称として跋扈する彼女は 読み取れない表情のまま かすれた声で、こう告げた 「本を読むなかれ。庭の木を切るなかれ。湯を飲む…

幸せな空、悲しい空

昨日の空がとても悲しい あふれた感情がいまいましい なんて奴だ、と思われてもかまわない 嘘をつくくらいなら、死んだほうがマシだ 足元を流れる汚い川に 幸せの残骸が浮かんでる ぼくたちは、いまもこうして生きている 打ち捨てられた、ゴミの上で一生懸命…