海外文学(その他)
ようやく読む気になった。文庫化されるとは思いませんでした。これで未文庫化のビックネームは「薔薇の名前」だけになったかな。リチャード・パワーズとトマス・ピンチョンもあまり文庫化されていないけどね。 やはりこの作品は特別みたい。だって文庫のスピ…
ゴールデンウィーク、岡崎公園にあるみやこめっせでは恒例の古本市がひらかれる。タイミングがあえば行くようにしている。市内の古本屋さんがワンフロアにそれぞれブースを設け出店していて、見てまわるだけでもニ、三時間かかる。今年は掘り出し物があって…
とーっても可愛い本なのであります。造りが素敵で、オシャレなのです。10編の小話が収録されていて、作者の手になるイラストと共に楽しくあっけなく読めてしまうのであります。たとえば、三本の足がある王様の話、いつも横を向いたままの王様の話、噂が空飛…
爪を研いだ危険な誘惑に簡単に陥落してしまうボヴァリー夫人。それは必然であって上巻で積み上げられた現状への不満がここへきて一気に開放される。一度決壊した常識という防波堤は修復されることなく甘く危険な逢引は彼女を狂わせてゆく。 惑いをいとわず彼…
若い頃なら古典の中でも、こんな不倫や恋愛を主眼においた本は見向きもしなかったのだが、五十も後半になって、なぜかこの本が気になって仕方なくなった。心境の変化というものは驚くべき化学反応をみせるものだ。 当時の世相はいざ知らず、いったいこの物語…
ああなんともはや心がけの悪い小説である。聖職者であろうとも人間。聖人君子とまではいかないのです。宗教という特異な世界を大上段に構える場では、第一に神があり、われわれ人間はその子であり、各々の宗教によって戒律やしきたりは違えど、信じるものは…
気持ちのうつろいを文章にするのは難しい。人はそれぞれ日々を生きていて、その中で様々なものを見、感じ、思いをはせる。とりとめのない思考は連想を生み、それは思いもしない過程をへてようやくなんらかの結論に達したりする。でも、ゴールした時にはその…
スパニッシュっていわれても、ピンとこないけどね。だから、なんの期待もせず読み出したのだが、これがなかなか良かった。ここに描かれる物語たちは今の時代のどこかの話であって、ラテンアメリカ的なマジックリアリズムめいたファンタジックな要素もないし…
生き辛さは、人生の伴侶だ。人は多かれ少なかれ問題を抱え、なんとかそれを乗りこえ生きている。そんな中で、ささやかな幸せを見つけたり、人の優しさに触れたりして人生捨てたもんじゃないと前向きになれたりするのである。 本書では、そういった日常の出来…
はいそうですよ。ぼくは男です。でも、本書を読んで大いに共感するんです。女性に対して物の言い方、接し方、目線すべてにおいて気をつけなければいけないと改めて思うのです。 自分のことを聖人君子とは思わないが、常に相手に与える印象や影響に気を配らな…
とっても短いので、鶴橋に食べ歩きに行く電車の中で全部読んじゃった。でもね、短いといって侮ってはいけないのです。なぜなら、これ書いてんのボルヘスだもんね。ちなみに鶴橋でいっとう旨かったのは、ブタのホルモンの鉄板焼きね。これ、最高!! というわ…
ドンキ・ホーテ・デ・ラ・マンチャについては、いつかは読んでみたいと思っているのだが、なかなか手が出ない。とりあえず、敬愛する皆川博子が言及していた本書を読んでみた。 といって、これは幻想小説に目がない皆川先生がパウル・シェーアバルトの紡ぐ奇…
ナンセンスなのにちゃんと完結している。帰結がしっかりしているから、変なの、で終わらない。収録作は以下のとおり。 「地球はまるい」 「テーブルはテーブル」 「アメリカは存在しない」 「発明家」 「記憶マニアの男」 「ヨードクからよろしく」 「もう何…
語りは主人公ケマルのものなのだが、物語半ばでオルハン・パムクが登場し、この本は彼が書いていることがわかる。また、ケマルが私設博物館を創設して、そこに愛するフュスンゆかりの品を展示していることもわかってくる。しかも、読者はそこを訪れてケマル…
無論オルハン・パムクも初めてだし、トルコの作家の手になる小説も初めてだ。しかも、本書の物語が描かれている年代が70年代なのである。当時のトルコにおいて男女の恋愛は、大前提に結婚があり、婚前交渉などはもってのほかという風潮だ。ま、ここらへんは…
ありえない設定なんだけど、その設定を組み込んだ上で構築されるストーリーの道行には、作者の人柄、思考が色濃く反映される。当たり前だよね。例えば、森で突然クマにであったら?というテーマで様々な人に物語を考えてもらったとしたら、ある人はリアルな…
下巻に入って、物語は本当の冒険譚に突入する。神聖ローマ皇帝のフリードリヒが亡くなり(これも史実に基づいて描かれるが、結果のみが史実に残っている部分で、そこに至る過程はエーコが自由に想像の羽を広げて描いており、おもしろい)それによって第三回…
上巻を読了して、まずは中間地点での感想。エーコの本は「薔薇の名前」の上巻終了時に断念して以来一冊も読んだことがなくて、気になる本はあっても手をつけなかったんだけど、本書はなぜか読んでみたくなったんだよね。 史実に基づいて展開する物語は描かれ…
サマルカンド年代記―『ルバイヤート』秘本を求めて (ちくま学芸文庫) 作者:アミン マアルーフ メディア: 文庫 まったくまったくまったくもって、ぼくには縁のない本なのだ。だって、11世紀のペルシャとかサマルカンドとかオスマンとかいわれてもなんのこと…
まず、訳が悪い。こんな回りくどい言い回しする?かまいたちの漫才じゃないんだから、理解に苦しむ言い回しは、やめていただきたい!よくよく調べてみれば、光文社古典文庫でも出てるじゃないの!そっちで読めばよかった。 しかし、ここに登場するアドルフは…
サドのね、適正なほうの小説集なんですよ。あの「悪徳の栄え」とか「ソドム百二十日」とかの怪物級のじゃなくて、もっと普通の展開の小説というわけ。でもね、これが普通じゃないんだな。現代の基準からいえば(基準て、もっぱらぼくの感覚なんだけどね)か…
どこに転がっていくの、林檎ちゃん (ちくま文庫) 作者:レオ ペルッツ 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/12/11 メディア: 文庫 ペルッツは手堅い。本書で四冊目だが、毎回ほんとうに読書の愉楽を味わわせてくれる。それぞれまるで馴染みのない舞台設定…
惨憺たる光 (韓国女性文学シリーズ6) 作者:ペク・スリン 出版社/メーカー: 書肆侃侃房 発売日: 2019/06/27 メディア: 単行本(ソフトカバー) グローバルな雰囲気の味わえる韓国文学。しかし、そこで語られる本質はいたって普遍的。それは儚さだ。消えてなく…
ペルーの異端審問 作者:フェルナンド イワサキ 出版社/メーカー: 新評論 発売日: 2016/07/29 メディア: 単行本 本書で取り上げられているのは、すべて史実なのであります。十七の短編(掌編?)として描かれるのは、すべて性にまつわる事件。異端審問って暗…
ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫) 作者: 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/04/06 メディア: 文庫 本好きのみなさんならご存知のとおり、ボルヘスといえばアルゼンチンの博覧強記の書痴なのであります。ぼくは常々、ボルヘスとナボコフがノーベル文学…
母と娘。答えはでないままだ。結局、『普通』という曖昧で肯定とも否定ともとれるなんとも形容しがたい概念にとらわれて、母は娘を受け入れることができないままなのだ。 母は多くを求めているわけではない。ただ『普通』に娘に結婚して、子どもをもうけて、…
ぼくは、これだけ色々な媒体でユダヤ迫害について見聞きしてきたにも関わらず、まだその本質を理解していない。その世界が内包する様々な条件、色彩、苦悩、歴史、希望、地理、喜び、痛み、何もわかっていない。大きな出来事の表面だけをなぞって、そこにあ…
本書は、いたって普通の小説だった。以前読んだ「アオイガーデン」はなんとも変な作品ばかりで、韓国文学の奥行きを実感したのだが、これはオーソドックスな展開で、肩透かしでもあった。おそらく、ぼくは素直ゆえこんな感じで読了してしまったのだろう。 本…
ナボコフ・コレクションの二冊目なのであります。これよりまえに『処刑への誘い 戯曲 事件 ワルツの発明』という巻が出ていたが、発表年代順に読むならば、本書が二番目なのである。 で、「ルージン・ディフェンス」なのだが、これは以前、若島正氏の英訳で…
ベトナム戦争が遺した負の遺産。戦争は、理不尽な運命をもたらす。抗えないその大きな力によって生が絶たれることもあるし、不自由ない暮らしから追いたてられ、流浪することになることもある。 著者であるキム・チュイ女史はベトナム戦争の最中ボートピープ…