2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧
物語の始まりは秀逸なのだ。京浜工業地帯を舞台に、部屋中を血に染める凄惨な首切り殺人と冷凍コンテナから発見される十四体の凍った死体。これだけでがっちり心をつかまれてしまう。だが、話はそこから少しづつ失速していく。仮想空間に遊ぶ正体不明の人物…
先生は言った。「あなたたちも、一生懸命なさい」 ぼくたちは戸惑った。なぜなら、先生が何を強要しているのかがわからなかったからだ。でも、聞きなおすような雰囲気じゃなかった。先生の耳から湯気が出てるってことは、かなりヒート・アップしてる証拠だも…
カズオ・イシグロの短編は以前に集英社ギャラリー「世界の文学 イギリスⅣ」に収録されていた「夕餉」という作品を読んだことがあったのだが、非常に短い作品で日本の家族の食卓の風景を描いているだけなのに厳かで暗い雰囲気の横溢した作品だったと記憶して…
昨日と同じだ。あいつが出てきて、ニヤッと笑うところまで一緒だ。 ぼくは、また最初に戻って同じ道を歩きはじめる。ゆっくりとだが、確実に。しかし、歩みは遅い。不思 議と前に進まない。これが夢のもどかしさ。いくらがんばっても無理なのである。 奇妙な…
なかなか読み応えがあった。なぜだか自分でもよくわからないのだが、もともと江戸川乱歩賞は少し嘗めていて、読むに値する本が少ないように感じてたのだが、これは良かった。 何が良いといって、ここでは犯罪を描くだけではなくてそれに巻き込まれた人々の苦…
北方作品を読むのは、今回が初めてだ。海外のハードボイルドは一通り読んできたが、国内の作品はあまり読めてないのが現状なのだ。だから、結城昌治も大藪春彦も河野典生も読んでないし、志水辰夫も原尞も香納諒一も東直己も読んだことがない。どうも国内の…
いま文藝春秋のHPで、やっと「悪霊の島」の表紙が確認できた。うれしいことに、また藤田新策の絵だった。前回の「リーシーの物語」は松尾たいこだったので、がっかりしてたのだ。いやいや、決して松尾さんのイラストが嫌いなわけではなくて、彼女のポップ…
この本の前に『もうひとつの“文学少女”の物語』といわれる「“文学少女”見習いの、初戀。」があったのだが、すっ飛ばしてこっちを先に読んでしまいました。だって、この挿話集の主人公がななせだと聞いたものだから、いてもたってもいられらくなってしまった…
この本を読むまでの道のりは長かった。復刊リクエストを呼びかけたこともあったなぁ。かといって、ヘレン・マクロイの熱烈なファンなのかと言われれば、すごすごと引き下がらねばならない。だって、彼女の本を読むのは本書が初めてなのだから^^。でも、な…
この人の本をほんと久しぶりに読んだのだが、これがめっぽうおもしろい。もう、最高ってのを突き抜けちゃって、いったいどういう賛辞を送ったらいいのかわからないくらいおもしろかったのだ。 なんせ、この人のSFには少々痛い目にあってますからね。ほら、…
久しぶりの皆川作品。手軽に読める薄さが、いっそ憎らしい。そんな思いをしながら、やはり堪能しきっ て満足の吐息と共に本をおく自分がとてもいじらしい。 たゆたう大河のように壮大で、しかし表面に見えない部分では常になんらかの作用がおきて、変化に富…
毎月11日にクラチカートという魔物がやってきて、誰かが生贄にされてしまうという無慈悲な世界。 ぼくは毎月いつ自分の番がくるのかと、びくびくしながら暮らしている。 クラチカートとは『煉獄の蜘蛛』という物騒な異名がつけられているとんでもない化物…
これ分類が難しいなぁ。一応「国内ホラー」にしといたけど、ホラーかといえば、ちと弱い気もするんだよな。でも、ミステリって感じでもないしね。ま、これでいいか。というわけで、いままで長い間読まずにきた京極作品なのである。ずっとずっと以前に「狂骨…
最近は映画もあんまり観ることがなくなったのだが、一頃は熱狂的な映画ファンだった時期もあった。丁度高校ぐらいから結婚するまでの間は、読書と並行して大方の有名な映画は吸収しつくしたと思ってる。 そんな時期に、やはり若気のいたりといおうか、それと…
今月はどうしたことかスティーヴン・キングの本が文藝春秋から二作品も刊行されるみたいで、なんだか 久しぶりにワクワクしております^^。キングの作品は単行本は「不眠症」から、文庫本は「グリーンマ イル」からとんとご無沙汰でありまして、以後も出て…