読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

皆川博子「夜のリフレーン」

 

夜のリフレーン

夜のリフレーン

 

 

 

明日を夢みて、昨日を分かつ。十全に張りめぐらせた記憶の糸は、紡いで紡がれて自ずと現実を侵食し、無限の地獄に突きおとす。甘い砂糖菓子を口に含み、最後の一欠片をかみ砕く。しかし、それは苦い痛みをともなうのである。

 一口に幻想といってもそこには様々な手法があるわけで、やはり皆川博子のそれは唯一無二であってその着想から展開から着地まで他の追随を許さないのである。残酷なのに美しく、清冽なのに穢れている。そんな相反する要素が混然となって、こちらの胸にストンと落ちつく。

 しかし、ここに選ばれし24編の幻想はやはり神の御業のごとき過去の精鋭短編と比べると少し見劣りする。ま、ぼく個人の見解ではあるのだけれど。決して片手間に書かれた類の作品などとは思わないが、「アイデースの館」、「獣舎のスキャット」、「疫病船」、「鎖と罠」、「竜騎兵は近づけリ」、「滝姫」、「夏の飾り」、「十五歳の掟」、「人それぞれに噴火獣」、「文月の使者」、「生き過ぎたりや」、「桔梗合戦」などなどの今まで読んできた綺羅星のごとき作品群と比べるとやはりね。

 それでも、皆川作品は一読に値するのである。読まずにはおれない。見過ごすことはけっし決して出来ないのだ。

 というわけで、結局楽しんで読み終えてるんだけどね。