読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

連城三紀彦「戻り川心中」

もともとこういう雰囲気の作品は好みではない。情感あふれ、しっとり落ちついた耽美な世界。まして本書は『花葬』シリーズとして花を題材とした散る宿命の儚さを描いた連作短編ミステリーなんだそうで実をいうと読む前からいささかうんざりしていたのだ。 収…

もねさんから頂きました。

もうみなさんご存知だとおもうが、いつもお世話になっている三頌亭日乗のもねさんがこの度三周年をむ かえられ、その記念として『三頌亭三周年・謝恩企画』なる記事を書かれたときはほんと武者震いした。 なぜならばもねさんが三周年の記念に、あろうことか…

藤井建司「ある意味、ホームレスみたいなものですが、なにか?」

第9回小学館文庫小説賞の優秀賞受賞作なのだそうである。だけど本書はハードカバーなのだ。変なの。 ま、それはおいといて。なかなか楽しめた。本書の舞台となるのは、もうすでに崩壊してしまっている家 族の家。主人公はエリート街道まっしぐらで大学に入…

殴られて

ぼくを殴ったね。 とってもとっても痛かったよ。 いじめるのが楽しいかい? 痛めつけるのは楽しいかい? 目が怖かったよ。 いつもと違う光が映っていたよ。 ぼくも、小さい頃よく虫を殺していたんだ。 あのときのぼくも、君みたいな目をしていたのかな。 あ…

ジョン・ブラックバーン「小人たちがこわいので」

モダンホラーの原点といわれるブラックバーンの代表作である。まったくの白紙状態で読み始めたのだが当初はこの秀逸でゾクゾクするタイトルと、モダンホラーの原点という謳い文句に、真っ向勝負の恐怖譚なんだろうと勝手に予想していた。 だが、蓋をあけてみ…

岩井志麻子「悦びの流刑地」

「ぼっけえ、きょうてえ」以来だからもう十年くらいになるのか。久しぶりに岩井志麻子の本を読んだ。 しかし、まあなんとも爛れた世界だ。全編にわたって饐えた男女の体液の匂いが漂ってる感じで、とても 息苦しい。テイストとしては皆川博子の幻想物に近い…

箱の中

窮屈な、と思ったら、どうやらぼくは裁縫箱に入っているらしい。 手足も動かせず、やたらと身体中のあちこちがどこかに触れている。しかも、自分の手足がいったいどういう状態なのか皆目見当がつかない。伸ばしているのか、縮めた状態なのか、真っ暗で目も見…

ジュンパ・ラヒリ「見知らぬ場所」

待望のラヒリ第二短編集である。彼女の描く世界は、あまりにも普通のどこにでもあるような世界、家族や恋人たちと過ごす普段の生活であり、そこには突飛な発想も突出した奇妙な登場人物も出てこない。なのに、どこにでもあって我々も体験しているこの代わり…

東京創元社文庫創刊50周年記念復刊リクエスト企画について

一言メッセージにも書いてあるが、2009年に東京創元社の文庫創刊50周年記念としてリクエストを 募っての文庫復刊企画がたちあがっている。 ちなみにリクエストページはこちら→http://www.tsogen.co.jp/fukkan50th/ なので、ここでみなさんにも声を大に…

「密室本」について。

先日、我らがiizuka師匠の『中村雅楽探偵小説全集』記念本記事のコメントにて講談社ノベルズの『密室 本』の話をしたら、師匠より「密室本とは、どんな本でした?」との問い合わせがあったので、ご紹介さ せていただきます。ちなみにiizuka師匠の記事はこれ…

古本購入記 2008年10月度

またやってしまった。そうなのだ、10月はぼくがブログを始めた月なのだ。なんていってる今はもう1 1月なのだが、恒例のこの古本購入記を書こうと思い、前年はどんなこと書いてたのかなと思って見てみ たら、昨年もブログ開設日を忘れてたと書いてあった…

皆川博子「雪女郎」

時代物の短編集となっているが、六編中ラスト一編だけは現代物だった。ちょっと変わった構成だね。 でも、このラストの一編である「夏の飾り」はなかなか凄いミステリになっていたので驚いた。以前アンソロジーで紹介した筒井康隆編「異形の白昼」に収録され…

栗田有起「オテル モル」

地下十三階、完全会員制で日没時にチェックインし日の出とともにチェックアウトする眠るためだけのホ テルが「オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン」である。この仰々しい名前のホテルは、『悪夢は悪魔』 という標語のもと、お泊りいただく会員様がぐっすり…