読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

アンソロジー

頭木弘樹編「うんこ文学 ――漏らす悲しみを知っている人のための17の物語」

うんこ漏らしたことあるかって?そりゃ、ありますよ。オナラするつもりが、下痢っててでちゃったとか、いままでの人生で何回もありますよ。でも、正常の状態で便意をもよおして、トイレに間に合わず漏らしちゃったってのはないなー。でも、そういう危機に陥…

傑作! 文豪たちの『徳川家康』短編小説

勝手に宝島社文庫だからって、なんか軽い感じに思っていて、実際読んでみてなかなかの読み応えに驚いております。収録作は以下のとおり。 南條範夫「願人坊主家康」 山本周五郎「御馬印拝借」 滝口康彦「決死の伊賀越え――忍者頭目服部半蔵」 火坂雅志「馬上…

「非日常の謎 ミステリアンソロジー」

なんとなく講談社タイガって、ラノベのレーベルなんだと認識していたけど、違うんだね。 普段あまり手出さないレーベルなんだけど、作家陣に興味引かれて読んじゃいました。収録作は以下のとおり。 「十四時間の空の旅」辻堂ゆめ 「表面張力」凪良ゆう 「こ…

井上雅彦編「魔術師―異形アンソロジー タロット・ボックス〈2〉」

もう二十年以上前に刊行された本だから、存在自体が消えてしまっているよね。収録作は以下のとおり。 「魔術師」 芥川龍之介 「超自然におけるラヴクラフト」 朝松健 「わな」 H・S・ホワイトヘッド 「奇術師」 土岐到 「忍者明智十兵衛」 山田風太郎 「さ…

伊坂幸太郎編「小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇」

というわけで、伊坂幸太郎編のアンソロジー二冊目なのであります。こちらのラインナップは以下のとおり。 眉村卓「賭けの天才」 井伏鱒二「休憩時間」 谷川俊太郎「コカコーラ・レッスン」 町田康「工夫の減さん」 泡坂妻夫「煙の殺意」 佐藤哲也『Plan B』…

伊坂幸太郎編「小説の惑星 オーシャンラズベリー篇」

こういうアンソロジーが大好きなのです。伊坂氏の作品は最初期の「重力ピエロ」を読んで、まったく合わず、「チルドレン」は、すごく良かったけど、あまり積極的に読まない作家さんなんだけど(でも、映画の「フィッシュストーリー」は、すっごくおもしろかっ…

「シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選」

めずらしいよね、イスラエルSFだって。馴染みがないものだから、やっぱり身構えちゃう。で、最初の「オレンジ畑の香り」を読んで、う~んてなる。なんかとっつきにくいし、視覚に訴えるインパクトもなければ、ストーリーテリングのおもしろさも薄い。でも…

「名探偵登場!」

名探偵登場! (講談社文庫) 作者:筒井 康隆,町田 康,津村 記久子,木内 昇,藤野 可織,片岡 義男,青木 淳悟,海猫沢 めろん,辻 真先,谷崎 由依,稲葉 真弓,長野 まゆみ,松浦 寿輝 発売日: 2016/04/15 メディア: 文庫 このアンソロジーにミステリのおもしろさを求…

中央公論新社「事件の予兆 文芸ミステリ短篇集」

事件の予兆-文芸ミステリ短篇集 (中公文庫 ち 8-8) 発売日: 2020/08/21 メディア: 文庫 文芸ミステリということで、ミステリ畑の作家ではない方々のミステリ寄りの短編アンソロジー。収録作は以下のとおり。 「驟雨」 井上靖 「春の夜の出来事」 大岡昇平 「…

高原英理 編「リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選」

リテラリーってなんだ?と検索したら、主に読み書きの能力とかいうのね。ま、ゴシックという定義にてらして編者が判断して、お眼鏡にかなった作品が集められているというわけ。副題にもあるとおり文学としてのゴシック作品集なのだ。 で、いまさらだけどゴシ…

北村薫 編 「北村薫のミステリー館」

北村薫のミステリー館 (新潮文庫) メディア: 文庫 あまり趣味が合わないのを承知で読んでしまうんだうよね。巻末の宮部みゆきとの各作品についての対談にしても、なんだかピンとこないなぁと思いながら読んでるんだけど、なんなのかな、この違和感は。彼らの…

頭木弘樹 編「絶望書店 夢をあきらめた9人が出会った物語」

絶望書店: 夢をあきらめた9人が出会った物語 作者:山田太一,藤子・F・不二雄,BUMP OF CHICKEN,ベートーヴェン,連城三紀彦,ナサニエル・ホーソン,ダーチャ・マライーニ,ハインリヒ・マン,豊福晋,クォン・ヨソン 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2019/…

「中国怪談集」

中国怪談集 (河出文庫) 作者: 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2019/03/09 メディア: 文庫 河出文庫からこの国名を冠した怪談集が出ていたのは知っていた。日本はもとより、イギリス、アメリカ、ロシア、ラテンアメリカそして中国。以前刊行されてい…

頭木弘樹編「トラウマ文学館」

けっこう耐性は強いほうなので、なんでもこいって感じなのだが、こうみえて子どもの頃はなかなかの怖がりだった。その頃は本を読む習慣はなかったのでもっぱらテレビばっかりみていたのだが、その頃にであったトラウマが今でも記憶に残っている。心底恐ろし…

「背徳についての七篇-黒い炎」

背徳についての七篇-黒い炎 (中公文庫) 作者:円地 文子,永井 荷風,小島 信夫,河野 多恵子,幸田 文,久生 十蘭 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2018/08/21 メディア: 文庫 こんなおもしろいアンソロジーが出てるなんて、まったく知らなくて。本書が第…

頭木弘樹 編「絶望図書館」

アンソロジーにはテーマがある。編者のこだわりによって一冊にまとめられる。たいていそれはジャンルに特定されていてミステリ、SF、ホラーといった具合に編者がそのジャンルの中でこれは!と思い入れのある作品を編んでゆくのである。そのジャンルの中で…

西崎憲 編訳「怪奇小説日和  黄金時代傑作選」

これね、結構長い時間かけて読んだんですよ。おそらく5年くらいかかってるんじゃないかな。短編集だから、たまに電車に乗って出かけたりするときにお供にしながら読んだんだけど、これがなかなかいい効果だしていて、5年も経ったら先に読んだ作品のことな…

野崎まど・大森望編「誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選」

この手のアンソロジーは大好物で、たいがいあれこれ読んできてるのだが、本書は最初期待していたものとは違った感触だったので、すこし残念だった。ま、こまかい説明は省くとして、本書は洋邦のファーストコンタクト物を集めたアンソロジーでありまして、割…

中村融編スタージョン、チェスタトン他「夜の夢見の川」

〈奇妙な味〉がいったいどういうものなのかと誰かにきかれたら、ぼくはそれを明確に答える術を知らない。でも、自分の中では漠然と〈奇妙な味〉というテイストがもたらす感覚を認識していて、たとえて言うなら、匂いで嗅ぎ分けているようなものなのだ。でも…

高橋良平編 「伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ」

ここに収録されている作品は60~70年代のものばかり。かなり古いよね。でも、これが読んでみるとまったく古さを感じさせず、むしろ刺激さえ受けちゃうような作品ばかり。収録作は以下のとおり。 「ボロゴーヴはミムジイ」ルイス・バジェット 「子どもの…

文藝春秋編 「こんな人たち アンソロジー人間の情景4」

この文春文庫の『アンソロジー人間の情景』シリーズは、お買い得なのですよ。けっして傑作短編ばかりということはないが、こういう本でしか出会うことのない作品を読めるってところが非常にお得なのだ。 本書に収録されている作品は以下のとおり。 Ⅰ・ちょっ…

中村融編 R・F・ヤング、フリッツ・ライバー他「時を生きる種族」

おそまきながら読んでみたが、これは前回のロマンティック時間SF傑作選の「時の娘」と比べると全体の印象としては見劣りする。しかしここに収録されている作品群も非常に貴重な作品ばかり。 だけど、今回は『ファンタスティック時間SF傑作選』と副題にも…

北村薫 編「謎のギャラリー―謎の部屋」

こういうアンソロジーはほんと楽しいね。しかし、ぼくは北村氏と感性が少しズレてるらしい。だからワクワクしながら読んでも、大抵多くの作品の中で気に入るのはほんの一握りってことになってしまう。 本書のラインナップは以下の通り。 宇野千代「大人の絵…

大森望 責任編集「NOVA+屍者たちの帝国」

伊藤計劃が逝去して、彼の残した数少ない作品群は、ほぼ伝説の域にまで達した感がある。後続の作家のみならず、ベテランの作家も含めて彼が与えた影響は計り知れない。また、彼の絶筆を円城塔が書き継いで完成させた「屍者の帝国」は、SFというジャンルを…

朝松健 えとう乱星編「伝奇城」

『伝奇』という言葉には、ロマンがある。今の時代にあって、『伝奇』が脚光を浴びることはまずないだろうが、それでも『伝奇』には物語の真髄を世に流布してきたという確かな実績があり、それが積み重ねてきた連綿と続く歴史は、それ自体がすでに『伝奇』と…

荒俣宏 編纂 「怪奇文学大山脈 Ⅰ」西洋近代名作選【19世紀再興篇】

本アンソロジーは、あの碩学、荒俣宏氏が蒐集した海外の怪奇文学をそれぞれテーマ別に三巻に分けて紹介する西洋近代怪奇小説の集大成である。『19世紀再興篇』と名付けられた本書には14篇が収録されている。 まず驚くのは、いまさらなのだがやはり荒俣氏…

米澤穂信 編「世界堂書店」

あの米澤穂信がこんなにいろんな国の小説を読んでいる人だったということに驚いた。だいたいミステリ作家といえば、英米のミステリ作品に傾倒しているのが相場というものだろう。しかし本書に収録されている15編のうち、純粋にミステリとよべる作品は2作…

柴田元幸 編訳「燃える天使」

ジョン・マクガハン、パトリック・マグラア、マーク・ヘルプリン、スチュアート・ダイペック、ピーター・ケアリーなどなど翻訳好きにはよく知っている作家も収録されていて、なかなか楽しめる。 内容的には、それぞれまったく独立したテーマの作品が収録され…

夏目漱石他「もっと厭な物語」

やはり出ました「厭な物語」の第二弾。前回のアンソロジーがかなり好評だったってことだねこれは。 ちょうど一年ぶり?今回は国内の作家も混じっての厭な物語。ラインナップは以下のとおり。 『夢十夜』より 第三夜 夏目漱石 私の仕事の邪魔をする隣人たちに…

デイヴィッド・J・スカウ編「シルヴァー・スクリーム(上下)」

これ本国で刊行されたのが1988年だって。いくらなんでも翻訳出るの遅すぎでしょ。ま、それはともかくそんな昔に編まれたアンソロジーにも関わらず、本書はかなり読み応えのある刺激的な作品揃いだからうれしくなってしまう。多くの作品の中から幾つかピ…