まえの「屍者の行進」もなかなか豪華なアンソロジーでかなり堪能した記憶があるのだが、今回また同じゾンビテーマで(異形コレクションとしては、グランドホテルぐらいしか、同テーマってなかったよね)アップデートされたゾンビ物語たちが一堂に会したというわけ。ラインナップは以下のとおり。
「ふっかつのじゅもん」 背筋
「ハネムーン」 織守きょうや
「ゾンビはなぜ笑う」 上田早夕里
「粒の契り」 篠たまき
「アンティークたち」 井上雅彦
「風に吹かれて」 久永実木彦
「コール・カダブル」 最東対地
「猫に卵を抱かせるな」 黒木あるじ
「ES(エス)のフラグメンツ」 空木春宵
「肉霊芝」 斜線堂有紀
「ラザロ、起きないで」 芦花公園
「煉獄の涙滴」 平山夢明
「ゾンビと間違える」 澤村伊智
「屍の誘い」 三津田信三
「骸噺三題 死に至らない病の記録」 牧野 修
まあ、アップデートされたということで、ゾンビも様々な形態となって登場するのだが、ぼくが好きな腐りて崩壊して腐臭を放ちながら迫ってくる根源的な恐怖を感じるものは、さほどなかった。でも、そのバリエーションは素晴らしく、呼び方から、成り立ちから、世界の形までよくこれだけ考えつくなと感動した。これはこれで、おもしろい。澤村伊智の視点は特におもしろい。これは新しい。平山夢明のSFも、世界が確立されていてシド・ミードの描いたブレードランナーの世界観のような感動だった!
あとは、三津田信三の「屍の誘い」がオーソドックスな恐怖譚を描いていて秀逸。山で迷い、たどり着くボロい一軒家。いままで明かりがついていたのに、おとなうと消えてしまう。不気味が強調され恐怖がつのる。しかし、この不気味な一夜の話がラストに…。
逆に世間では久永実木彦「風に吹かれて」が評判いいようだが、これはまるっきりファンタジーで、ゾンビテーマを期待して読むとちょっと違うかな?って感じた。
しかしこの長大なアンソロジーがすぐ読めちゃうんだから、おもしろいのは間違いない。いいアンソロジーです。