読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

時代もの、大好き

ルイス・フロイス「回想の織田信長-フロイス「日本史」より」

資料としても一級品だろうし、なにより実際に織田信長に接した人物の生の声が聞けると思い読んでみた。確かに、この中には信長がいた。史実と変わらぬあの信長だった。唯一無二で決断がはやく、性急で激昂もよくするが、平素は穏やかで人情味と慈愛を示した…

鈴木輝一郎「三人吉三 明日も同じたぁつまるめぇ」

古本屋で背表紙を見かけて、おっ!『三人吉三』じゃないかと驚いた。表紙を見てみると藤田新策ではないか。この作者はまったく知らなかったのだが、俄然興味が湧いてきた。それによくよく見ると、この表紙なんだかおかしい。娘さんが空飛びながら火吹いてる…

小林恭二「悪への招待状 幕末・黙阿弥歌舞伎の愉しみ」

歌舞伎を通して江戸の風俗を味わう好読物である。 それも爛熟期の江戸ではなく、大きく変わろうとしている頽廃の香り高まる幕末の江戸である。 世は風雲急をつげ、世相は乱れ、庶民は日夜遊興に耽ることばかりを考えている。 今の日本では考えられない世界だ…

菊地秀行「幽剣抄」

菊地秀行の新刊はもはや読書の対象外になって久しい。前にも書いたが、昔は彼の作品を好んで読んでいた時期もあった。「吸血鬼ハンターD」や「エイリアンシリーズ」は大好きだったし、あまた量産されたバイオレンス小説も読んできた。でも、いまでは菊地秀…

スーザン・ヴリーランド「ヒヤシンスブルーの少女」

『時代もの大好き』企画もいよいよ大詰めである。今週末で終了だそうな。今回の企画では『時代もの』 といってもその範疇が結構幅をもたせてあるので、こうして海外作品も参加させて頂くことができた。 うれしい限りである。というわけで今回は、フェルメー…

岩井三四ニ「難儀でござる」

この人の本は今回初めて読んだのだが、至極読みやすくて好感をもった。 本書には八編の短編がおさめられている。扱われている時代は戦国時代だ。この混乱を極めた時代にあ って難問に直面する人々が描かれる。 巻頭の「二千人返せ」は緊張する駿河と甲斐の攻…

藤沢周平「蝉しぐれ」

藤沢作品の中でも、もっとも多くの読者に愛されているのが本書ではないだろうか。 ドラマ化もされたし映画化もされた。ぼくはどちらも観てないが、観た人も多いのではないだろうか。 この本から受ける印象は人さまざまなのかもしれない。主人公、文四郎に等…

デボラ・モガー「チューリップ熱」

みなさん、ご存知だろうか? 十七世紀初頭のオランダで、愛好家や栽培業者のあいだで取引されていたチューリップが異常な社会現象 を引き起こし市民をも巻き込んで、投機の対象となった事実を。珍しい球根一個が邸宅一件分にも相当す ることがあったなんて信…

谷崎潤一郎「武州公秘話・聞書抄

ここで語られるのは、一人の男の狂おしい願望だ。 武州公こと武蔵守輝勝は、幼少の頃人質としてとある城で育てられることになる。彼はそこで首実検の ため敵の首を洗い清め化粧を施す女たちに出会う。あまりにも凄惨で妖艶な世界に彼は陶然となる。 なかでも…

ジョン・スタインベック「エデンの東」

世界文学の古典として名声を確立している本書は、スタインベックの代表作でもあり、彼をして「この本 を書くために私は小説家になった」といわしめた傑作である。 こういう古典作品に馴染みのない方もどうか辛抱して、もう少しお付き合い頂きたい。なぜなら…

氏家幹人「大江戸死体考―人斬り浅右衛門の時代」

わずかニ、三百年前には、こんなに巷に死体があふれていたのかと驚くばかりだった。 江戸の人たちはぼくたちよりずっと死体と身近に暮らしていたというわけなのだ。 ましてや、その死体や罪人で刀のためし斬りするというのだからまったく考えられない。 しか…

鳥越碧「一葉」

樋口一葉といえば「にごりえ・たけくらべ」を書いた人というくらいしか認識なかったし、その作品に接 したこともなかったのだが、そうか、この人はこんな思いをして小説と向き合っていたんだと新鮮な気持 ちで読みすすんだ。 彼女は天才だった。 でも天は、…

ピーター・ディッキンソン「血族の物語」

本書は、いわゆる児童書である。しかし、児童書にあるまじき長大な作品なのだ。なんせ、上下巻合わせて1000ページ近くあるのだから。 そして今回、この本は「時代もの、大好き」の記事として紹介させていただく。一応体裁はファンタジーの部類になるのだ…

ロバート・R・マキャモン「魔女は夜ささやく」

17世紀末のアメリカ南部。とある村で捕まえられた魔女といわれる女。 魔女裁判を執り行うべく、この地にやってきた判事と若き書記のマシュー。しかし、マシューにはこの獄 中にいる女が魔女だとは、どうしても信じられなかった。 やがて、彼女を信じ愛しは…

ベヴァリー・スワーリング「ニューヨーク」

アメリカ建国以前の1661年開港まもないニューアムステルダムに、理髪師にして天才外科医の兄と、調薬 師の妹が降り立つところから物語は始まる。そこは、のちにニューヨークとして世界でも有数の大都市と なる場所。そんな黎明期のアメリカの混乱した時代を…

上位五作発表!山田風太郎、忍法帖ベスト10

それでは、風太郎忍法帖上位五作品の発表いってみましょうか。再投稿ということで、ほんとうは画像も載せたかったのですが、いまではこれらの本は実家に置いてあるんで写真撮る時間がありませんでした^^。■第五位■ 「銀河忍法帖」前回紹介した「忍法封印い…

山田風太郎、忍法帖ベスト10!

大好きな山田風太郎のことをもっと語りたいので、独断と偏見でぼくの忍法帖ベスト10を選出してみました。長くなりそうなんで、二回に分けたいと思います。今回は、10位から6位を発表!では、早速いってみましょうか。■第十位■ 「忍法八犬伝」言わずとし…

宇月原清明「聚楽 太閤の錬金窟」

本書は「信長 ― あるいは戴冠せるアンドロギュヌス」で、第十一回日本ファンタジー大賞を受賞した著 者の受賞第一作である。 デビュー作を飛び越えて本作を先に読んだのだが、いやあ驚いた。大傑作ではないか。 本書で描かれるのは、信長、秀吉、家康の三人…

「時代もの、大好き」企画に参加いたします。

月のホネ/ブックリポートの月野さんからお誘いを 受けまして、この度「時代もの、大好き」という企画に参加することになりました。 時代ものといえば、いまの本好きとしてのぼくがあるのも中三の時、あの山田風太郎大先生の「伊賀忍法 帖」をスケベ心出して…