生き辛さは、人生の伴侶だ。人は多かれ少なかれ問題を抱え、なんとかそれを乗りこえ生きている。そんな中で、ささやかな幸せを見つけたり、人の優しさに触れたりして人生捨てたもんじゃないと前向きになれたりするのである。 本書では、そういった日常の出来…
杉浦日向子は大好きで、彼女の作品は大抵読んできた。出会いは「百日紅」だ。葛飾北斎と娘のお栄、居候の池田善次郎(のちの英泉)が織りなす江戸の風物や怪異。この作品で『走屍』なるものを知った。 それはさておき、それから彼女の作品を手当たり次第読ん…
小松左京の本を読むのは初めてなのです。タイムリーでもあるよね、ここまで酷くないけどコロナを体験した身にとってはね。 有名な作品なのであらためて紹介するまでもないだろうけど、本書は未知のウィルス(ということにしておこう)で世界が破滅してしまう…
右園死児は人にあらず、物にあらず、でも存在するものなのである。本書を開けば、それに関する報告事例がどどーっと羅列される。それは不気味な現象だ。物の名前、人の名前、例えば右園死児という文字を書くだけでも災厄は起こる。いってみればそれはウィル…
謎や繋がりが明確になるところがミステリの中心線だとすれば、それらを解明する人たちは傍線だ。でも、この傍線はとても大事でクレイヴン描くところの本シリーズは、この主要キャラクターたちの魅力が素晴らしいから、一度その世界にハマってしまったらもう…
てのひらに収まりそうなくらい小さくて薄い本。60頁くらいだから、すぐ読める。何人かの大学生のインタビューが続く。どこかの山奥にある墓地。地元では有名な心霊スポット。その墓地の真ん中にある大きな木がヤバいって。肝試しってありがちだし、誰でも経…
続けて三作目です。前回も書いたけど、犯人が捕まってからもやっぱりおもしろいんだなこれが。 今回は、各所で指が見つかるところから話が始まる。指は三人の人間のもので、中には生体反応が出たものもあった。しかも、それらが発見された経緯を考えると、犯…
続けて読ませる魅力あるシリーズなのでございます。いまのところ、毎回主人公であるワシントン・ポーがなかなかの窮地に立たされる導入から物語が始まるのだが、今回は、かつて実の娘を殺害した罪でポーが逮捕した男がいたのだが、その殺されたはずの娘が六…
おそまきですよ。ようやく読みました。世評高いこのシリーズ、といってもシリーズ物を抱えるのがあまり好きじゃないからなかなか読まなかったんだけど、これだけ出す本が鰻上りに人気出てくると、やはり読みたくなるよねー。 で、読んじゃうとやっぱり追いか…
はいそうですよ。ぼくは男です。でも、本書を読んで大いに共感するんです。女性に対して物の言い方、接し方、目線すべてにおいて気をつけなければいけないと改めて思うのです。 自分のことを聖人君子とは思わないが、常に相手に与える印象や影響に気を配らな…
ロボサッカーという競技があるのを初めて知った。ロボコンていうのは聞いたことあったんだけどね。タイトルからもわかるように、本書に登場する中学生たちの名前が戦国武将と同じなのはご愛嬌。一応、キャラが被っているっていう部分はあるんだけどね。内容…
まあ、歴史を知っている人なら秀吉による三条河原の大虐殺は、本能寺の変と同じくらい有名な事件であり、史実としてどうなったのか?は一目瞭然なのだけれど、それを題材にこれだけのストーリーが描かれるんだから、歴史小説はおもしろいよね。 しかし、知っ…
新潮文庫で最長だということだが、リョサの「緑の家」も結構分厚かったと思うんだけど、オブライエンの「カチアートを追跡して」も結構厚かったと思うんだけど、1000ページはなかったか、そういえばついこの間刊行されたジョゼフ・ノックスの「トゥルー・ク…
実際、記憶の彼方にある幼い頃の光景は美化され、かけがえのない宝物になっている。ぼくは、三歳でどこかの浜辺に家族と旅行に来ていて、記念撮影のために浜辺の端にある大きな石の上に座らされた。大人にとってはたいした大きさではなかったはずだが、三歳…
まえの「屍者の行進」もなかなか豪華なアンソロジーでかなり堪能した記憶があるのだが、今回また同じゾンビテーマで(異形コレクションとしては、グランドホテルぐらいしか、同テーマってなかったよね)アップデートされたゾンビ物語たちが一堂に会したという…
もう一冊の「夏の雷鳴」を読んだ時、本書が見つからないと書いていたが、ありました。そりゃあるよね、買ってるんだもん。というわけで『わるい夢たちのバザールⅠ」なのでございます。世間ではキングの新刊「ビリー・サマーズ」や「死者は嘘をつかない」が話…
大好きなドーア。この作家には信頼と尊敬しかない。風貌は連続殺人鬼のチカチーロみたいだけども。 それはさておき。本書は、邦訳された初の長編なのである。彼の長編では二作目なので、ぜひ一作目の長編も読んでみたいものだ。本書を手に取られた方はご存知…
スタージョンのデビュー作なのだそうだ。表題の「天空精気体 エーテルブリーザー」とその続編の「ブチル基と精気体」が収められている。二つ合わせて80ページほどの薄い本だ。短編ふたつだね。CAVA Booksで手に入るのだが、大好きなスタージョンゆえ、コス…
この人、気になっているんだけどなかなか読めていないのだ。特殊で異常な設定の中で華麗なロジックを展開するゲテモノ美食ミステリとでもいうべきスタイルはぼくの好みなのだが。でもこの人の本で読んでいるのってデビュー作の 「人間の顔は食べづらい」 だ…
本書の巻末に作者のおすすめ本が載っている。本書を気に入った人は、これも読めばきっと気にいりますよとの作者からのメッセージだ。未翻訳のものもあってちょっともどかしいが、この巻末に載っている本のタイトルを見て、それを読んだことがある読者なら『…
とっても短いので、鶴橋に食べ歩きに行く電車の中で全部読んじゃった。でもね、短いといって侮ってはいけないのです。なぜなら、これ書いてんのボルヘスだもんね。ちなみに鶴橋でいっとう旨かったのは、ブタのホルモンの鉄板焼きね。これ、最高!! というわ…
モリミー久しぶり。いつ以来?ていうか、万城目学は、色々読んでいるんだけど、モリミーは一冊しか読んでないんだった!!というわけで、本当にお久しぶりのモリミーなのだが、これがなんだかイマイチだったのだ。 ホームズ譚は一応全部読んでいる。もう30年…
ローマ史?高校生の頃世界史で習ったっけ。カエサル、カリギュラ、ネロ、マルクス・アウレリウス・アントニヌスくらいは、名詞として知っているけど、それ以上でもそれ以下でもない。まったくローマ史については無知蒙昧なのであります。 でもね、そんなぼく…
取っ掛かりの謎は魅力的だ。奇妙な間取り、余計な空間、導線を無視した部屋の配置。よくよく見ればおかしな所ばかりなのである。その奇妙な間取りの家を購入しようか迷っている知人の依頼でこの物件を調べることになった筆者は、これまた知り合いのミステリ…
とうとう大団円まで読み切ってしまった。久しぶりに漫画にのめり込みました。読み切りはたまに読むけど、この巻数(31巻)を読み切ったのはいままで生きてきて初めてのことだ。 ま、そんなたいそうな話じゃないんだけどね(笑)。当初は、たまたま映画観る…
本書に興味をもったのは、まずその異様なイラストだ。キギノビルというイラストレーターの手になるこの独特なタッチの絵は、不気味で生々しいのに、目が離せない。実際こんなのに遭遇したら卒倒もんだけど、なぜか惹きつけられる。だから思わず買っちゃった…
禍々しい表紙と涜神という文字に魅せられてWindo is blowing from the Aegean 女は海〜(知っている人だけわかればいいです笑)。ま、とにかくそういうわけで読んでみたのであります。この作者、つい先日感想を書いた「王子降臨」の作者なのだが、本書はあの…
短いから遅読のぼくでもすぐ読めてしまった。本屋でも、先の三部作の印象があるので五、六百ページくらいの本を探していたから、本書の目の前をスルーしちゃって見つけられなかったしね。 ま、とにかく本書を読めたことをうれしく思う。なんせこのミステリ、…
案外こういった名作読んでいないんだよね。プーシキンの「スペードの女王」とかディケンズの「信号手」とか、他のアンソロジーでも取り上げられているから、いくらでも読む機会あったけど読んでないんだよねー。で、ここに収録されているのが 貸家 リットン …
フォークナーって、アメリカ南部を描いた作家で、世界文学全集には必ず入っている文豪ていう大雑把な認識しかなかったんだけど、彼って当初は世間からあまり評価されていなかったそうで、本書はそんな彼の不当な評価を払拭しようと批評家、編集者として有名…