このなんともとらえどころのない展開に翻弄される。すべて幻想譚だ。途中で様相が一変する。何を見せられているんだ?とまごついてしまう。 特に驚いたのが「太陽の側の島」。戦時中の話なんだなと思って読んでいると、目玉飛び出します。どこかの南国の島に…
この表紙の禍々しさ。ゾゾ毛たちまくりだもんね。邪悪で、汚くて、オゾマシイ。それが一発で感じとれちゃう表紙でしょ? みなさん、ご存じジョーカーなのであります。バットマンに登場する最大の宿敵。犯罪界の道化王子との異名もあるこのサイコパスのヴィラ…
うんこ漏らしたことあるかって?そりゃ、ありますよ。オナラするつもりが、下痢っててでちゃったとか、いままでの人生で何回もありますよ。でも、正常の状態で便意をもよおして、トイレに間に合わず漏らしちゃったってのはないなー。でも、そういう危機に陥…
ナンセンスなのにちゃんと完結している。帰結がしっかりしているから、変なの、で終わらない。収録作は以下のとおり。 「地球はまるい」 「テーブルはテーブル」 「アメリカは存在しない」 「発明家」 「記憶マニアの男」 「ヨードクからよろしく」 「もう何…
勝手に宝島社文庫だからって、なんか軽い感じに思っていて、実際読んでみてなかなかの読み応えに驚いております。収録作は以下のとおり。 南條範夫「願人坊主家康」 山本周五郎「御馬印拝借」 滝口康彦「決死の伊賀越え――忍者頭目服部半蔵」 火坂雅志「馬上…
これまで刊行された平山夢明の本の中で一番分厚い。しかも連作ときた。いままでにないパターンだ。全部で20話。なげーよ。サイテーだよ。何読ませんだよ。特別だよ。いたしかたないんだよ。雨も降ってんだよ。なのに読んじゃうんだよ。でも、続けて読めねー…
久しぶりに西村作品を読んだ。ここに収められているのは 「瓦礫の死角」 「病院裏に埋める」 「四冊目の『根津権現裏』」 「崩折れるにはまだ早い」 の四編。最初の二編は若かりし頃の貫太の怠惰で醜悪な日常が描かれる。といっても、これが西村作品の持ち味…
特別「屋根裏の散歩者」に思い入れがあるわけではない。ていうか乱歩自体あんまり好きじゃないんだけどね。一応、その短編は読んでいるんだけど心にも残っていない。だから、屋根裏を徘徊するだとか、そうして他人の私生活を窃視するとか、そういった行為に…
なんとなく講談社タイガって、ラノベのレーベルなんだと認識していたけど、違うんだね。 普段あまり手出さないレーベルなんだけど、作家陣に興味引かれて読んじゃいました。収録作は以下のとおり。 「十四時間の空の旅」辻堂ゆめ 「表面張力」凪良ゆう 「こ…
久しぶりの風太郎なのであります。知らない短篇がほとんどだから、読まなくっちゃね。ラインナップは以下のとおり。 「万人坑」 「蓮華盗賊」 「降倭変」 「幻妖桐の葉おとし」 「黒百合抄」 「家康の幕の中」 「叛心十六歳」 「元禄おさめの方」 相変わらず…
確か、これの旧版持ってたと思うんだけど、見つかんないから新装版買っちゃった。で、読んでみたんだけど、これ上下巻に分けちゃだめだよね。一冊にしたら千円までで買えたんじゃないだろうか。こんな薄いのに二巻に分けるって、あざといなー、まったく。 ま…
悲しい気分がなくならないので、今よりハッピーになるようにお参りしようと出かけたはいいが、どこへ行けばいいのかまったく思い浮かばず、あてどなく歩いていたら、北へ二十里進んだところに大きな石の上にのった給油機があった。 給油機なのである。しかし…
話題作だもんね。しかも、ちょっと前に「雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール」を読んで、こりゃあ凄い書き手だと認識したところだったから、期待するよね。 無差別爆破テロ。こんなのが本当にあったら、手も足も出ないよね。偶然誰かが爆発物を見…
語りは主人公ケマルのものなのだが、物語半ばでオルハン・パムクが登場し、この本は彼が書いていることがわかる。また、ケマルが私設博物館を創設して、そこに愛するフュスンゆかりの品を展示していることもわかってくる。しかも、読者はそこを訪れてケマル…
続けて読んじゃった。今回は中編が二つ収録されている。まず「生者の言伝」だが、嵐の夜に山中で車が故障して助けを求めた館で翡翠たちが遭遇する事件が描かれている。奇妙なことに、その館には中学生の男の子が一人しかおらず、しかもきれいなお姉さん二人…
前回の「medium 霊媒探偵城塚翡翠」は、ほんと久々に驚かされたミステリだったが、あれの続編ていったいどうなるの?と思っていたら、倒叙集となってかえってまいりました。ミステリ好きならおなじみの倒叙。犯人と犯行は最初からわかっていて、どうや…
無論オルハン・パムクも初めてだし、トルコの作家の手になる小説も初めてだ。しかも、本書の物語が描かれている年代が70年代なのである。当時のトルコにおいて男女の恋愛は、大前提に結婚があり、婚前交渉などはもってのほかという風潮だ。ま、ここらへんは…
変わった話なのである。かなりね。開巻早々、猟銃乱射事件の記事が目に飛び込んでくる。死人が出てるし、無差別殺人かなんかなの?と思いながら、この事件を頂点に物語が語られるんだろうなと予測する。 しかし、しかしだ。話はいきなりシフトするのである。…
原稿用紙にして20枚。とても短い。その中でミステリとしてのサプライズを眼目とした作品を成立させる。そういう短篇が18収録されている。タイトルにもあるとおり、その中ではある種の道具がからむ仕様となっている。しかし、世間の評判はいいようだが、ぼく…
もう二十年以上前に刊行された本だから、存在自体が消えてしまっているよね。収録作は以下のとおり。 「魔術師」 芥川龍之介 「超自然におけるラヴクラフト」 朝松健 「わな」 H・S・ホワイトヘッド 「奇術師」 土岐到 「忍者明智十兵衛」 山田風太郎 「さ…
ありえない設定なんだけど、その設定を組み込んだ上で構築されるストーリーの道行には、作者の人柄、思考が色濃く反映される。当たり前だよね。例えば、森で突然クマにであったら?というテーマで様々な人に物語を考えてもらったとしたら、ある人はリアルな…
この本は、一般に流通していない。いしいひさいちの自費出版本である。それはさておき、本書はいしいひさいちの漫画なのである。これがああたすんばらしいのですよ。作者によれば『これは、ポルトガルの国民歌謡『ファド』の歌手をめざす女の子がどうでもよ…
特別ファンというわけでもない。著作も「ハサミ男」しか読んでない。でも、この人の伝説は知っていたので、読んでみた。 短編が三つとデビュー作の「ハサミ男」がメフィスト獲って出版されるまでのあの伝説の真相が描かれている日記風の「ハサミ男の秘密の日…
人類初のファーストコンタクトは、異星人がUFOにのってやってくるのでもなく、人類が宇宙に進出して遭遇するのでもなく、われわれのこの静かな日常になんの前触れもなく浸食してくるものだった。 この未曾有の地球的規模の危機をいったい人類はどうやって…
今回というか先の「短篇五芒星」もそうだったのだが、読了した印象は少し物足りないものだった。さらに今回は七つの短編が収録されているので五芒星の時より小粒ちゃんな印象なのだ。まずは収録作をば。 「奏雨」 「狙撃」 「落下」 「雷撃」 「代替」 「春…
タロットカードの吊るされた男の絵柄に因んで首吊りを題材にした短編アンソロジー。ラインナップは以下のとおり。 「アウル・クリーク鉄橋での出来事」アンブロース・ビアス 「首吊り三味線」式貴士 「百物語」岡本綺堂 「首つり御門」都筑道夫 「蜘蛛」H・H…
昨年刊行されていた二分冊短篇集のⅡのほうであります。二冊一緒に購入したはずなのに、Ⅰの「マイル81」がまったく見当たらないので、本書から読んだんだけど、これはどっちから読んでもまったくモーマンタイ。 各編にキング自身のコメントがついていて、作…
「恋するたなだ君」と「誰にも見えない」を読んで、なんと自由度の高い作家さんなんだと感心し、また楽しく読んだのだが、しばらくご無沙汰でした。本屋さんの新刊コーナーでたまたま手にとってみたら、なんとも予想のつかない本でもあり、部厚さもそこそこ…
作者のことはよく知らなかったのだが、本屋で見かけて面白そうと手にとった。 ドキュメント的な「残穢」みたいな展開と怖さを求めていたのだが、ちょっと違った。でも、つくりはそういう感じなのだ。怪談を集めるのが趣味という医師が主人公で、その彼の元に…
とても手堅い印象だ。ここには、江戸の最期の姿が活写されている。描かれる時代が時代だけに、そこには大きく変わる歴史の波に翻弄される人々が描かれる。正義や忠義や道義が悔恨や裏切りや翻心と並列に行われる理不尽な世を大志の元に生き抜いた人々。ゆえ…