読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

文藝春秋 編「東西ミステリーベスト100」

文藝春秋が四半世紀ぶりに、あの「東西ミステリーベスト100」を刊行した。前回は文庫本だったが今回は雑誌としての刊行だ。ぼくにとって1986年に刊行された前回版は、まさしくバイブルとでもいうべき扱いでいまも手元においてあるが、もう表紙は折り…

西村賢太「人もいない春」

久しぶりの賢太くんなのである。収録作は以下のとおり。 『人もいない春』 『二十三夜』 『悪夢―――或いは「閉鎖されたレストランの話」』 『乞食の糧途』 『赤い脳漿』 『昼寝る』 六編収録されているにもかかわらず、二百ページ足らずという短さ。かてて加…

皆川博子「ペガサスの挽歌」

烏有書林という出版社は、まったく知らなかった。本書はそこが出しているシリーズ日本語の醍醐味の第四巻なのである。本書以前には坂口安吾「アンゴウ」、石川桂郎「剃刀日記」、藤枝静男「田紳有楽」の三巻が刊行されているそうな。知らなかった。本書もた…

夢二編

けっこう急な坂道で、上から見下ろすと45度以上あるように見えるのだが、実際は30度ぐらいなのだろう。どうも人間は、物事を大袈裟にとらえる傾向にあるようだ。 サンフランシスコに行ったとき、その連なるような急な坂道に驚いたおぼえがあるが、いま見…

中脇初枝「きみはいい子」

本書には五編の短編が収録されている。タイトルは以下のとおり。 「サンタさんの来ない家」 「べっぴんさん」 「うそつき」 「こんにちは、さようなら」 「うばすて山」 五編の短編はゆるい連作みたいなものだ。ここで描かれるのはそれぞれの事情を抱えた親…

小杉英了「先導者」

極秘で運営されるある組織に属する者の物語。語り手である「わたし」は先天的な染色体異常をもっており、それゆえに『先導者』として『御役』につく運命を背負っていた。『御役』とは、生前に結ばれた契約によって死者となった名士・金持ちを、再び名誉ある…

ウィリアム・ピーター・ブラッティ「ディミター」

実をいうと「エクソシスト」は読んでいない。ぼくがこのブラッティを意識しだしたのは読み応え抜群のアンソロジー「999 狂犬の夏」に収録されていた中編「別天地館」でだった。これは幽霊屋敷物でありながらミステリとしての結構も備えたハイブリットで、…

10月の読書メーター

2012年10月の読書メーター 読んだ本の数:5冊 読んだページ数:1542ページ ナイス数:33ナイス http://book.akahoshitakuya.com/u/26117/matome?invite_id=26117 ■航路(下) さすがコニー・ウィリス!あなたの小説作法は、いうことなしです。 読了日:10月17…