読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

夢の競演・・・・そして続編

ほぼ気を失いかけたところで、誰かのごつい手に抱かれて持ち上げられる感覚があった。だが、そこで意識は遠のきぼくは忘却の彼方に置き去りにされた。次に目が覚めたときには、ぼくはあたたかい部屋の中でふかふかのベッドに寝かされていた。顔がチリチリし…

「世界の料理ショー」

以前にも記事にしたことがあったが、ぼくの大好きな料理番組で「世界の料理ショー」というのがあって、司会進行兼料理人のグラハム・カーの軽妙なトークとかなり大雑把な印象を受ける料理の仕方にすっかり魅了されたと書いていたのだが、驚いたことにその番…

ジョー・ウォルトン「バッキンガムの光芒 ファージングⅢ」

〈ファージング〉三部作、堂々の閉幕なのである。思わず唸ってしまうほどの完成度だった。何がどう素晴らしいのか、どこがどうおもしろいのか微に入り、細を穿ち詳しく説明するのが筋なんだろうが、いやあ、それは出来ない相談だ。だって、そんなことをすれ…

ミランダ・ジュライ「いちばんここに似合う人」

とにかく読んでみて。もうこの本について語るときはいきなりそう言ってしまいそうな勢いなのだ。ほんと、ここに収録されている16の短編はすべてにおいて新鮮な驚きと小憎らしいほどの可愛さと、儚い痛々しさにあふれており、触れればパチンとはじけてしま…

ジェイムズ・ボーセニュー「キリストのクローン/新生 (上下)」

キリストのクローンなんて題材、いままで掃いて捨てるほど描かれてきた。時にはオカルティックに、時にはメディカルスリラー風に、またある時にはポリティカル・サスペンス風に。 では、本書はいったいどんなテイストの物語なのか?いやいや早急な判断はまだ…

天狗の死体

蔵の中にある死体が気になっていた。どうやってその死体と関わったのかはわからないのだが、とにかくぼくはその死体を発見されないように細心の注意をはらっていた。 だが、秘密は暴かれるためにある。ぼくの努力は報われることなく、秘密が秘密でなくなる日…

古本購入記  2010年12月

今年の年始は例年になくよく本を読めたので、本の更新ばかりで昨年ラスト月の古本購入記を書くのを忘 れていた。今年の正月は一日からビンゴ大会で一位入賞して、晩に霜降りの最高級肉のすき焼きを食べ、 二日目は伊勢海老の入った高級おせちをいただいた。…

西村賢太「二度はゆけぬ町の地図」

今日、今期の芥川賞と直木賞の候補作が発表されたが、本書の西村賢太も新潮12月号に発表した「苦役列車」で候補に挙がっている。だからというわけでもないのだが、たまたま手にとった本書を軽い気持ちで読みはじめたら、まさにグイグイと引っ張られてしま…

飯塚朝美「地上で最も巨大な死骸」

すごくしっかりした文章を書く人だというのが第一印象。見返しの著者プロフィールを見てみれば、1983年生まれというから、まだ二十代の女性ではないか。このあいだ読んだ朝吹真理子さんも同年代だし、なんだかうれしくなってしまうのだ。こういうしっか…

ウィリアム・トレヴァー「アイルランド・ストーリーズ」

ウィリアム・トレヴァーはジョイス、オコナー、ツルゲーネフ、チェーホフに連なる現代最高の短編作家と称されているそうな。名の挙がっている作家で読んだことがあるのはオコナーだけなのだが、そんな不甲斐ないぼくが読んでもトレヴァーの資質には驚嘆を通…

角川書店編集部編「列外の奇才 山田風太郎」

また角川文庫から山田風太郎ベストコレクションと銘打って新装版の文庫シリーズが刊行されている。 これは山田作品を総括してその中からのベストチョイスとなっているので、忍法帖から明治物からミステリからエッセイからすべて選出されており、確かに代表作…