もう一冊の「夏の雷鳴」を読んだ時、本書が見つからないと書いていたが、ありました。そりゃあるよね、買ってるんだもん。というわけで『わるい夢たちのバザールⅠ」なのでございます。世間ではキングの新刊「ビリー・サマーズ」や「死者は嘘をつかない」が話題ですが、そちらは、またの機会に。
こうやって邦訳最新のキング短編読んで感じるのは、安定のおもしろさだ。バカバカしい設定の話、奇妙な話、ありえない話、ワンアンドオンリーのアイディア勝負の話でもキングの手にかかると、それらが嘘っぱちのホラ話からリアリティあふれる迫真の物語となって立ち上がってくる。昔の彼の短編は、読むに耐えないものばかりだったのに。これぞ熟練の技というものか。読んでいてその安定感に安心して身をまかせてしまう。
登場人物たちの言動が、予想できる範囲で堅実であり、ストーリーのうねり的な大きな波がなかったとしても、読み手として納得できるからどんどん追いかけてしまう。まったくもって上手いのだ。この巻の中で一番おもしろかったのは、ラストの「UR」だね。最長でもあるし、物語的に広がりがあって楽しめた。Kindleをテーマに、二つの興味で引っ張っていく力量に感服。
他の作品も、昔のキング短編に比べたら三回生まれ変わったの?ってくらい上手くて巧いのばかりで、安心して読めちゃいます。
それにしても、最新長編の「死者は嘘をつかない」はあんな薄い文庫なのに1500円もするから、躊躇しちゃって、いまだにレジに持っていけないの。