読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2009-01-01から1年間の記事一覧

古本購入記 2009年12月度

さて、この記事で本年も最後となってしまいました。一年を締めくくるのにふさわしい記事ではないです が、ま、いましばらくお付き合いのほどを。 今月の古本購入数は19作品21冊。で、一年の締めということで年間の購入数は古本207冊、新刊3 4冊(内…

2009年 年間ベスト発表!

いよいよこのランキングの時期となりましたね。ブログ仲間さんの間でも続々と年間ベストの記事が書か れていて、それぞれ個性が感じられて非常におもしろい。というわけで、ぼくも年間ベストを粛々と発表 したいと思います。 ところで、今年読んだ本なのです…

高田侑「うなぎ鬼」

なんとも奇妙なタイトルに惹かれて読んでみた。ホラーサスペンス大賞といえば第一回大賞の黒武洋「そして粛清の扉を」しか読んだことがないのだが、ここからは道尾秀介、 誉田哲也、 五十嵐貴久、安東能明とけっこう活躍している作家が登場している。本書の…

アリと重力

幼い男の子がしゃがみこんで一心不乱に地面を見つめている。興味をそそられたぼくは、引き寄せられるようにそこに近づき、男の子が見つめているものが何なのか確かめた。 アリだ。そこそこ大きいアリが縦列で行進している。毎度おなじみの光景だ。ぼくも幼い…

阿刀田高「アイデアを捜せ」

本書では、非常に貴重な作家の創作秘話が語られている。短編の名手といわれている阿刀田氏の小説を書く極意が語られていてとても興味深い。阿刀田氏の作品はいわゆるアイディア・ストーリーと呼ばれるものが多く、分類的にはダールやサキやコリアのような『…

ガイ・バート「ソフィー」

この作者のことは一応知っていた。それというのも、いまから十年ほど前にけっこう鳴り物入りで紹介された「体験のあと」という本を読むか読むまいかですごく迷ったことがあったからだ。結局、そのときは見送ったわけなのだが、いまになってその作家の第二作…

ニール・ゲイマン「壊れやすいもの」

短編集なのだが、400ページ強の中に32ものタイトルが並んでいるのにまず驚く。何事だこれは!と思ってページを繰るとそのうちの半分が詩だとわかって納得した。だから本書に収められている短編は15編。読み始めは、正直あまりピンとこなかった。ホー…

「血の雨」

赤いものがムショウに食べたくなってしまった。だからとりあえずリンゴを20個食べる。しかし、まだ 物足りない。トマトが真っ赤だからトマトを食べればいいと思ったが、生憎ぼくは生のトマトが大嫌いな のだ。だから、ケチャップを食べることにする。皿に…

読書メーターの機能について

ぼくが読書メーターに登録したってことはもうみんなご存知だと思うのだが、ぼく自身このサイトの便利さってのをいまいちよく理解してなくて、ただ単純に日々の読書の記録をするだけの目的で使っていたのだが、これが真面目に使用するととても便利だってこと…

飴村行「粘膜人間」

年末のランキングで「粘膜蜥蜴」が話題になってたので、さっそくデビュー作である本書を読んでみた。物語の導入部はこんな感じ。身長195センチ、体重105キロという巨漢で横暴な小学生の義弟を殺そうと画策する長兄・利一と次兄・祐二。だが、体力的に…

ドン・ウィンズロウ「犬の力(上下)」

ドン・ウィンズロウがハードボイルド作家だというのは周知のことだろうが、彼がこれほど冷徹で非情な世界を徹底して描く作家なのだということは誰も知らなかっただろう。なにしろ圧倒的なのだ。何が? 染みわたる暴力と過剰な制裁が。おぼれるほどの暴力と煮…

舞城王太郎「ビッチマグネット」

前回の「ディスコ探偵水曜日」で初めての舞城挫折本を経験して、もうすっかり怖気づいてしまっていたのだが、信頼できる読み手のゆきあやさんの鉄板推薦をいただいて、この新刊に挑戦した。 買って読むべし!とまで言われたら、もう読むしかないでしょ?で、…

インフェルノ

人を殴ったら射精するという夢を二、三回繰り返してみたあと、場面が変わって定着した。 おそらくそこは大都市なのだろうが、いままでみたこともないような建物が乱立する異様な都市だった。 視界は琥珀色のフィルターを通して見るような感じで、常時たそが…

古本購入記 2009年11月度

今月は新刊を結構買っておりまして、それはこの記事の最後に紹介いたしますが、古本は16作品17冊 の購入となりました。今回は4回しか古本屋に行ってないんだよね。自重したつもりなんだけど、冊数は あまり変わっておりませんね。これじゃ、おんなじじ…

伊坂幸太郎「チルドレン」

あれ?不思議。スラスラと、それもなかなか楽しんで読了しちゃった。ゆきあやさんの見立て、どんぴしゃだったみたい^^。やっぱり偏見はいけないよね。最初の作品が合わなかったからって、それで毛嫌いしちゃ作者に悪いよね。本書を読みながら、ずうーっと…

アラン・ベネット「やんごとなき読者」

薄い本なのですぐ読み終わってしまうのだが、なんともチャーミングな本である。だがチャーミングな部分が全面に押し出されているのではなく、そこかしこに皮肉や軽いブラックなジョークが顔をのぞかせているところが読みどころだ。 現役の英国の女王が、ある…

掌編三編。

歩いていると、妙に目が回る。クラクラクラクラ足が地につかない感じで、気持ちが悪い。 ええい、クソ!何なんだ、このおぼつかない感じは! 頭を振るが、酩酊感にさらに拍車がかかってしまい、とうとう膝をついてしまう。 ううう。なんかムカムカしてきたぞ…

マルセル・F・ラントーム「騙し絵」

まずおもしろいのがこの本の成立過程。第二次世界大戦時にドイツの捕虜収容所で本格ミステリマニアのフランス人が暇つぶしに書いたミステリだというのだから驚いてしまう。そこで彼は素人探偵ボブ・スローマンを主人公にしたミステリ三作品を書いた。本書は…

沼田まほかる「アミダサマ」

この人の本は今回初めて読んだのだが、非常に惜しいと感じた。細部を取り出すと、これほどゾクゾクさせてくれる本もないなと思えるほど怖いのだ。だが、いかんせん物語の本筋がなんとも弱かった。だから凄く惜しいのだ。この怖さとストーリーのおもしろさが…

池井戸潤「鉄の骨」

本書で池井戸氏が描くのは公共工事に関わる談合疑惑なのだが、やはりいつものごとく緩急つけた物語展開は読む者をとらえてはなさない吸引力にあふれている。この一見地味で華のない世界を舞台に、よくこれだけためになっておもしろい話が書けるものだと相変…

桜庭一樹「製鉄天使」サイン本ゲット!

東京創元社のメールマガジンをいつも見ているのですが、このたび桜庭一樹「製鉄天使」のネットサイン 本の発売があったので、応募してしまいました。はい、わたくし生粋のミーハーでございます。こういう のは我慢できないのでございます。この、東京創元の…

スティーヴン・キング「悪霊の島(上下)」

久しぶりのキングの長編を、いま満足の溜息と共に読了した。これだけの分量を(上下巻合わせて千ページ強!)飽きさせもせず読み切らせてしまうのはやはりいろんな意味で『帝王』だけのことはあるなぁと思うのだが、なにより凄いのは本書の構成なのである。 …

「白髪薔薇、眼鏡ひまわり、脂アサガオ」

前に並んだ三人の男は、みな表情がなかった。しかし呆けているわけではなく目線には力があり、この場 がとんでもなく重要な場なんだということはヒシヒシと感じられた。 ぼくは、圧倒されながらも慎重に三人の前に進みでた。 「5番、○○です」 大きな声で名…

中島かずき「髑髏城の七人」

話題になっている『いのうえ歌舞伎』というものを一度観劇したいものだと思っているのだが、それもなかなかままならない。いまでは看板役者となった古田新太の怪物じみた演技をこの目で見てみたい。なんとも熱い登場人物たちの掛け合いをナマで感じたい。本…

平山夢明「DINER ダイナー」

久々の平山新刊本である。彼の小説はすべて読んできているのだが、ちょっと前に刊行された「他人事」だけはあまり気が乗らなかった。読まなくてもいいやと思っちゃったのである。だからもしかしたら、このままこの人からも離れていってしまうことになるのか…

古本購入記 2009年10月度

キングの最新刊も無事購入し(でも、今回ソフトカバーだったんだよね。やっぱりキングの単行本はハー ドカバーのがっちりした本が良かったんだけどね)、さあ読みましょうかと両手をこすり合わせていると ころへ平山夢明の「DINER」が刊行されたので、…

東野圭吾「眠りの森」

というわけで、加賀恭一郎なのである。つい最近、ゆきあやさんの記事でシリーズ物にたいする意見としてシリーズ物を最初から読まないのはリサーチ不足だと言い切ってしまったのだが、その禁忌を思いっきりやっちゃってるのがこのシリーズなのである。エラソ…

ジム・ケリー「水時計」

新人によるイギリス発の正統派本格ミステリなのである。おおまかなアウトラインは以下のとおり。 イギリス東部の町イーリーで、氷結した川から引き上げられた車のトランクから死体が発見される。これが謎に満ちた死体で、頭部を銃で撃ちぬかれた上に首が折ら…

本多孝好「チェーン・ポイズン」

記事にはしてないのだが、この人は以前にデビュー作の「MISSING」を読んだことがあった。なかなかせつない雰囲気があって好印象だったのだが、それ以後この人の本を読むことはなかった。 今回べるさんの記事で興味を持って読んでみたのだが、なるほど…

地下街の放火魔

250ccのバイクに乗って地下街に下りてゆく。階段を下りきったところで放火魔に遭遇。相手はオードリーの春日じゃないほうにソックリな奴だ。放火魔は右手に100円ライターを持ち、左手にジッポー・オイルの缶を持って、ぼくに火をつけようとしてくる。…