読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2019-01-01から1年間の記事一覧

澤村伊智「予言の島」

やりましたね。やってくれましたね。気づかなんだ。てか、これはわからんわ。でも、楽しい。こういうの大好き。真相がわかってから読み返してみたら、なるほど引っかかっていたところにそういう意味があったのかー。 瀬戸内海に浮かぶ霧久井島。そこで起こる…

頭木弘樹編「トラウマ文学館」

けっこう耐性は強いほうなので、なんでもこいって感じなのだが、こうみえて子どもの頃はなかなかの怖がりだった。その頃は本を読む習慣はなかったのでもっぱらテレビばっかりみていたのだが、その頃にであったトラウマが今でも記憶に残っている。心底恐ろし…

木下古栗「グローバライズ」

グローバライズ: GLOBARISE (河出文庫) 作者:木下 古栗 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2019/03/06 メディア: 文庫 抵抗力に自信がないわけではないし、好き嫌いはあまりないほうだと自負している。本書を読む前はなんてことないんだろうと思って、…

フランシス・ハーディング「カッコーの歌」

カッコーの歌 作者:フランシス・ハーディング 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2019/01/21 メディア: 単行本 祈る気持ちで読み進めた。どうか、どうか、ぽくの気持ちをへし折らないで下さい、悲しい結末に直面させないで下さい。その時のぼくは、心の底…

「背徳についての七篇-黒い炎」

背徳についての七篇-黒い炎 (中公文庫) 作者:円地 文子,永井 荷風,小島 信夫,河野 多恵子,幸田 文,久生 十蘭 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2018/08/21 メディア: 文庫 こんなおもしろいアンソロジーが出てるなんて、まったく知らなくて。本書が第…

スティーヴン・キング「心霊電流(上下)」

心霊電流 上 作者:スティーヴン キング 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2019/01/30 メディア: 単行本 心霊電流 下 作者:スティーヴン キング 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2019/01/30 メディア: 単行本 本書の原題は[REVIVAL]。よく映画でリバイ…

ホルヘ・ルイスボルヘス、アドルフォビオイ=カサーレス「ボルヘス怪奇譚集」

ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫) 作者: 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/04/06 メディア: 文庫 本好きのみなさんならご存知のとおり、ボルヘスといえばアルゼンチンの博覧強記の書痴なのであります。ぼくは常々、ボルヘスとナボコフがノーベル文学…

キム・ヘジン「娘について」

母と娘。答えはでないままだ。結局、『普通』という曖昧で肯定とも否定ともとれるなんとも形容しがたい概念にとらわれて、母は娘を受け入れることができないままなのだ。 母は多くを求めているわけではない。ただ『普通』に娘に結婚して、子どもをもうけて、…

西成彦 編訳「世界イディッシュ短篇選」

ぼくは、これだけ色々な媒体でユダヤ迫害について見聞きしてきたにも関わらず、まだその本質を理解していない。その世界が内包する様々な条件、色彩、苦悩、歴史、希望、地理、喜び、痛み、何もわかっていない。大きな出来事の表面だけをなぞって、そこにあ…

ビヨン・ヘヨン「ホール」

本書は、いたって普通の小説だった。以前読んだ「アオイガーデン」はなんとも変な作品ばかりで、韓国文学の奥行きを実感したのだが、これはオーソドックスな展開で、肩透かしでもあった。おそらく、ぼくは素直ゆえこんな感じで読了してしまったのだろう。 本…

ウラジーミル・ナボコフ「ナボコフ・コレクション ルージン・ディフェンス 密偵」

ナボコフ・コレクションの二冊目なのであります。これよりまえに『処刑への誘い 戯曲 事件 ワルツの発明』という巻が出ていたが、発表年代順に読むならば、本書が二番目なのである。 で、「ルージン・ディフェンス」なのだが、これは以前、若島正氏の英訳で…

宮澤伊織「裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ」

本書でこのシリーズの流れは変わる。さて、どれだけ続くかわからないが、この第三巻が本シリーズの変化点であるのは間違いないのである。本書には三編収録されている。 ファイル9 「ヤマノケハイ」 ファイル10「サンヌキさんとカラテカさん」 ファイル1…

舞城王太郎「されど私の可愛い檸檬」

二ヶ月連続作品集刊行の第二弾(ちなみに第一弾は「私はあなたの瞳の林檎」ね)であります。 本書には三作収録されている。 「トロフィーワイフ」 「ドナドナ不要論」 「されど私の可愛い林檎」 前回が恋愛編で今回が家族編なのだそうだが、ま、ゆるい括りだ…

宮澤伊織「裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト」

というわけで、早速第二弾読んじゃった。 読みやすいからスイスイ読めちゃうんだよね。で、今回もネットロアネタが色々出てきて楽しませてもらいました。でもね、前回シリーズ第一弾の感想書いたとき、主人公二人のことにまったく触れてなかったんだよね。な…

岸川真「暴力」

三編収録。本のタイトルの通り理不尽で唐突で理解しがたい暴力が描かれる。 しかし、ここで描かれるそれぞれの話は、過剰さを含んだ非情な行為だけが描かれるのではなく、多かれ少なかれ信条を貫く根本にある思想が幅をきかせている。 その感覚は、まるでプ…

宮澤伊織「裏世界ピクニック  ふたりの怪異探検ファイル」

ネットロアという造語を本書で知った。ネットとフォークロアを合わせたのだそうな。世に不思議な話は尽きないのだが、ネットが普及してからこういった不思議な話、奇妙な話、怖い話が世に広まる速度には目覚ましいものがあったよね。もともとぼくは2ちゃん…

アフィニティ・コナー「パールとスターシャ」

離ればなれになる双子、パールとスターシャ。ユダヤ人であるがために、強制的に家族もろとも収容所に連れていかれ、悪魔ともいうべきメンゲレから、おぞましい人体実験を受けることになる。彼女たちは、双子ゆえメンゲレの注目を浴びる。薬品の点眼による瞳…

C・J・ボックス「震える山」

ジョー・ピケットの猟区管理官シリーズ邦訳第4弾でございます。(第2作が邦訳されていないので、本当は第5弾ね)。今回は自殺したジャクソンの猟区管理官の代理を務めることになったジョーの活躍を描く。まず、根本にあるのはその自殺が本当なのかどうか…

2018年 年間ベスト発表!

あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。 昨年も、ほんと読めませんでした。数えたら、50冊いってなかったもの。ここ何年かこの場で同じこと書いている気がするけど、ほんと読めなくなっております。最近はまた音楽にも興味が…