読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

キム・チュイ「小川」

ベトナム戦争が遺した負の遺産。戦争は、理不尽な運命をもたらす。抗えないその大きな力によって生が絶たれることもあるし、不自由ない暮らしから追いたてられ、流浪することになることもある。 著者であるキム・チュイ女史はベトナム戦争の最中ボートピープ…

皆川博子「クロコダイル路地Ⅰ、Ⅱ」

すべては冒頭の一行『竪琴の全音階を奏でるような、秋であった。』に集約される。長大で、まるで異世界のような馴染みのない場所と時間を切り取りながら、そこに展開する物語は精緻を極め、かろやかに自由に羽ばたく。 しかし、ぼくはそこに旨味を感じない。…