読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

「国枝史郎伝奇文庫コレクション」

 国枝史郎伝奇文庫の存在は、古本屋で「名人地獄」を発見したときに知った。もう、十年ほど前のことである。斬新で美麗な表紙がいっぺんで好きになってしまった。横尾忠則のアクの強い装幀がなんとも印象的だった。

 

 今回はその伝奇文庫コレクションを紹介したいと思う。折をみてコレクションしているゆえ、ほんの数冊しかないのだが、どうかご容赦いただきたい。尚、このコレクションすべて未読である。念のため。でも、国枝作品は青空文庫で多くの作品が無料で読めます。

 

 まずは「名人地獄」と「神秘昆虫館」

 

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 「名人地獄」は鼠小僧、平手造酒、国定忠治なんかが登場するSFの要素も盛り込んだ白浪物

 

 「神秘昆虫館」は神秘の伝説をもっている『永生の蝶』を求めて剣侠の旅にでる一式小一郎と、それを阻む南部集五郎の宿命の闘い。そして、江戸四方五十里内にあるという『神秘昆虫館』の謎を描く。



 お次は「任侠二刀流」

 

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 これは原題が「木曽風俗聞き書き薬草採り」だったそうである(笑)。将軍吉宗の病状回復を願う水戸藩が木曽から迎えようとしたのが薬草道人こと甲斐の徳本。しかし、謀反をたくらむ薩摩の島津太郎丸がその行く手を阻む。暗躍する両藩の女忍たち。物語は波乱に波乱の連続する展開をみせる。



 どんどんいきましょうか。次は「娘煙術師」

 

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 これは、幕末が舞台。明和尊王事件で島流しとなり死んだはずの儒教者が江戸に出現。幕府方は厳重な警戒体制を敷くが、これを機に革命鼓舞を試みる事件の遺児たちの姿があった。



 次は「生死卍巴」と「血曼荼羅紙帳武士」

 

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 「生死卍巴」は、凄艶な美女から運命を買ったばかりに奇々怪々な事件に巻き込まれる男を描く。

 

 「血曼荼羅紙帳武士」は、人の生血で描かれた蜘蛛の絵のある紙帳と、その中に起居する殺人鬼五味左門というなんとも奇妙な奴が登場する非常に短い作品。ちなみに『紙帳』とは紙製の蚊帳のようなものだそうである。



 では最後に「沙漠の古都」

 

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 これは時代物ではなくて探偵小説らしい。架空の作者の翻訳物という体裁ですすめられるところなど古川日出男の「アラビアの夜の種族」みたいだ。スペインで人々を震え上がらせる『光る獣人』が登場するかと思えば探偵が二人も登場したり、支那の貴公子や謎の美女や秘術をつかう秘密結社の首領など多彩な登場人物が次々あらわれて物語を盛り上げる。



 以上7作品足早に紹介したが、伝奇文庫コンプリートの道はまだまだ長い。全部集めると28冊もあるのだ。このうち「神州纐纈城」は桃源社版で、「蔦蔓木曽桟」「八ヶ嶽の魔神」は大衆文学館で購入してある。読んでいるのは「神州纐纈城」と「八ヶ嶽の魔神」の二作品のみだ。

 

 国枝史郎という人は大風呂敷を広げるきらいはあるが、なんとも魅力的な作家だと思う。