幼児売春や臓器売買のことは知識として知っていたが、その実情はあまりにも酷いものだった。
もちろん、本書は完全なフィクションである。だが、ここに描かれている惨状が醜く強調された絵空事だ
とは思えない。これは信じたくはないが、現実に起こっていることなのだ。
この問題は、おそらくとても根が深い。貧困だけでなく、政治、思想、宗教までもが絡んでくる。
この悲惨な現状を阻止しようと地道な活動を広げているボランティア団体の活躍も空しく、闇の組織に一
矢を報いることもできない。
子どもたちは身を守る術もなく、蹂躙の運命に呑み込まれてゆく。読んでいて涙が止まらなかった。
八歳で売られたヤイルーンとその妹センフーの悲惨な運命には憤りで胸が苦しくなった。
この姉妹は、いったいなんのためにこの世に生を受けたのか。
本書は確かに問題作である。読み通すには、限りない忍耐と痛みに耐えなければならない。
梁石日の筆は、いつになく性急だ。本書の内容ゆえのことだろうか?少し違和感があった。
しかし、それだからこそ鬼気迫る筆勢に圧倒されたのも事実だ。
もう一度言おう。本書は問題作だ。
あらゆる意味でこれほど絶望感を与える本もないのではないだろうか。
子どもは無条件に守られる存在である。子どもは庇護を必要とする存在である。子どもは無条件の愛で包
まれるべき存在である。すべての人に問いかけたい。そうではないのですか?