明治から大正にかけて、横濱で蚕糸で財を成した檜垣澤家に引き取られた妾の子、かな子。亡くなった母は、彼女に女が生きていく上でのノウハウを叩き込んでいた。ゆえにかな子は幼少より人をよく観察し、話を聞きそれをすべて生き残るために利用する術を身につけていた。
檜垣澤家は、女系家族。祖母のスエを頂点にその娘、花そして花の子として三人の娘、郁乃、珠代、雪江がいた。
当初は、妾の子として狭い女中部屋におしやられていたかな子だったが、運命のいたずらと自らの才覚で徐々に屋敷での立場を優位にしてゆく。
というお話なのであります。この時代の雰囲気を存分に味わえます。話的には主人公のかな子の幼少から成人するまでを描いているのだが、いろんな人の思惑や企みや懐疑などがてんこ盛りで、もうお腹いっぱい。谷崎潤一郎の「細雪」は未読だし、山崎豊子の「華麗なる一族」も読んだことないんだけど、こういう感じなのかな。でも、まあ本書は読みやすい。七百ページ強あるが、結構スイスイ読めちゃう。ミステリ的な要素としては、いろいろ伏線回収があったりしてそれも楽しめちゃいます。この時代にあった様々な歴史的な出来事も盛り込まれており、ラスト近くになってあれがくる、あれがくるぞと思っていたら、やはり描かれていました。しかし、凄いことになってますね。いったいあの状態からどう復活するんだろう?本書はそこで終わっているので、この後のかな子の人生もまた描かれるのかもしれない。
しかし、最初、このかな子のあまりのしたたかさに辟易したが、妾の子として生き残っていこうとすれば、これぐらいじゃなきゃすぐ押しつぶされてしまうかもしれないと思いなおして、それからは、応援する気持ちとともに読み進めた。
さて、第二弾もしでるのなら、やっぱり読むとおもいます。