読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

ウンベルト・エーコ「バウドリーノ(上)」

バウドリーノ(上) (岩波文庫)

 

 上巻を読了して、まずは中間地点での感想。エーコの本は「薔薇の名前」の上巻終了時に断念して以来一冊も読んだことがなくて、気になる本はあっても手をつけなかったんだけど、本書はなぜか読んでみたくなったんだよね。

 史実に基づいて展開する物語は描かれている時代が神聖ローマ帝国の時代という、現代のわれわれからすれば、ほとんどファンタジーの世界なので少々幻想風味がまぶされていても、まったく違和感ない。主人公のバウドリーノはエーコ自身の出身地であるアレッサンドリア生まれの農夫の子だったのが、時の神聖ローマ帝国皇帝のフリードリヒ1世の養子となり、西洋と東洋を股にかける大冒険を繰り広げていく。しかし、このバウドリーノ生まれつきのホラ吹きで、ぬけぬけと自分の口から出た嘘がまことになるなんて言うのである。そんな彼が、第四回十字軍のコンスタンティノープル陥落の最中ニケタス・コニアテスとその家族を救い、ニケタスに自分の生い立ちを語るところから物語は始まる。

 バックグラウンドはこれくらいでいい?で、このバウドリーノが語りに語ってくれるのだが、上巻を読了した段階ではホラ吹きの本領発揮という感じではない。でも、嘘をまことに構築する手管はいろいろ描かれていて楽しい。ほんと、こういうふうにして歴史は作られていったのかも?なんて思ってしまう。

 さて、これから下巻に取りかかる。これからがバウドリーノの騙りの本領発揮なのでは?と期待しているのだが・・・。