読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

夢のこと

泥竜退治

ガトマンド城の西南6ジブのところにある霊守の森で生後間もない泥竜の鳴き声がしたという噂が広がり民の懇願が高まるにつれ執政にも支障がでるようになってきたので、やむなく討伐隊を編成して3月3日の早朝に出発した。 神話によれば、泥竜はこの世の汚泥…

リュックの中身

きない村だか、きさい村だかいう何もないような田舎の村のバス停であなたは待っている。 何を待ってるんだろう? バスを待っているのか、人が到着するのを待っているのか、よく思い出せない。 右を見れば田んぼの畦道を少し広くしたような地道がずーっと地平…

吹雪の夜に

悪路を走行するのは得意じゃない。まして、それが猛吹雪の中だなんてまるで悪夢みたいなシチュエーシ ョンだ。フロントガラスに叩きつけられる雪はほとんど塊で視界をふさいでくるので、ワイパーなどもの の役にも立たない。このままじゃワイパー自体がいか…

五つの掌編

【シーン1】 「嗅覚を刺激されると起こるんだって」 「というと?」 「たとえば、臭い匂いとか酸っぱい匂いとか、いわゆる刺激の強い匂いだね」 「ふ~ん、そうなんだ」 「だから、さっきはあんなことになったってワケだね」 「うん、よっぽどキツかったん…

甘党アニキとオレ

口に頬張った洋菓子は、あふれ出る唾液と共に咀嚼されグチャグチャといやらしい音をたてた。 ゆっくりと首を回しゴキゴキと音をたて、口のまわりにクリームをつけた男はこう言った。 「せやから言うたやろ?お前やっぱりあかんやろうって。おれの言うことに…

和風ウィンチェスター・ハウス

「南向きの窓がたいそう良うございます」 年季のはいったばあさんは、シワと同化した目で笑いながらそう言った。南向きだから良いのか、南向き の窓から見える景色がいいのか、いったい何がどういいんだろう?と考えながら部屋に入ると、ばあさん の言ってい…

魂泥棒 その2

おばあさんはニタッと笑うと、人差し指を上に向けてクイクイと手前に折った。こっちへ来いということ らしい。ぼくは正座をしたまま、両手を使ってすり寄った。 眼前に迫るシワくちゃのおばあさんの顔は正視にたえないが仕方がない。ぼくは縋る思いで、おば…

魂泥棒 その1

◆ 今回の夢はいつになく長いので、今日と明日の二回に分けてお送りいたします。 魂泥棒が出没するとても危険な世界である。誰もがいつ魂を盗られるのかと、おびえて暮らしている。 ぼくも、怖くて怖くて仕方がない。だから物知りばあさんの家まで行くことに…

捨てられる子

地下街は初めてだった。地面の下にこんなに明るくてきれいな店がたくさんあって、こんなに多くの人がいるなんてまったく知らなかった。 ぼくは母に手をひかれて駆けるように歩いてる。見上げた母の顔はいつもと違ってとても険しく、化粧もいつもより濃い感じ…

鼻血おばさん

※ みなさん、注意してください。一部グロい描写があります。 図書館の中はシンとして、誰かが空咳をする音が時々聞こえるだけだった。 ぼくはどうしたことか、とても大きい図版入りの皮装丁の本をめくっている。描かれている絵は本と同じ くしてとても古めか…

密室に佇む人たち

集まった人たちはみな呆けた顔をして所在なく立ちつくしていた。 天井の高い教会のような場所だ。しかし、窓はひとつもなく明かりはもっぱら室内に備えつけられている シャンデリアっぽい照明器具からのものしかない。調光機能がついているらしく、室内全体…

田舎の朝の事件

古い町並みはどことなく懐かしい雰囲気で、いつもなら知らない場所にいるという居心地の悪さに下腹がムズムズしてくるところなのだが、そういった不安感はまったくなく、どちらかといえば気分は高揚していた。 軒を連ねる家々は格子のはまった昔ながらの平屋…

ユークリッド・スライサー

敵は6人。気配を殺しているつもりでも、おれにはわかる。訓練して殺気は消すことができるが、相念まで消すことはできない。頭の中を空っぽにできる人間など存在しないのだ。 ジャンゴベリーの甘い香りが漂うこの山間の村で、いつになく鋭敏になったおれの知…

丸太男とチビ助

旅の途中、裸山に差しかかる峠を歩いていると前から奇妙な人物が馬に乗ってやってきた。どこが奇妙なのかというと、まだ遠目なので不確かなのだが、どう見てもその人物の顔から太い丸太が飛び出しているのである。信じられない光景だがどうも間違いないよう…

アダマ・ユキエ

裏の山で遊んでいると、友達のおーちゃんがいなくなった。 気づくのが遅かったので、おーちゃんはアダマ・ユキエさんに連れていかれてしまった。 アダマ・ユキエさんは山に潜む『連れさり人』で、二人以上で行動していると大丈夫なのだが一人になってしまう…

消えた息子と小さい老人

青銅の壺だ。かなり重そうだ。でも、よく見るとこれは動かせないんだなとわかった。なぜなら、ボルトで床に固定してあるからだ。いったい、何に使うんだろう?普通は花を活けたりオブジェとして飾ったりするのであって、すべり台の上にボルトで固定したりは…

マサミ・ストリート

どうしたことか道に迷ってしまった。ぼくはマサミ・ストリートに行きたかったのだ。なのに、またいつ ものように迷ってしまった。 以前から方向音痴で何度もひどい目にあっている。一番ひどかったのが丁度15年前、当時仕事をしてい た現場から、先輩のいる…

タッド

踏切の向こう側に立っている男の子と以前に会ったことがあると思った。 どこで会ったのだろう? 知り合いに白人の男の子はいない。なのに、ぼくはあの子を知っている。う~ん、これはいったいどういうことだろう? やがて、電車が二人の間を遮断した。特急ら…

緒形拳と老婆の呪文

誰かと一緒に商店街を歩いている。 ぼくは、連れとなにやら話しながらキョロキョロあたりを見回した。 店はみんな閉まっている。ぼくら以外に誰も歩いていない。 どうやら、いまは夜明け前らしい。 よくよく見ると、ぼくと一緒に歩いている連れは緒方拳だっ…

周回文書検閲制度

あなたの書いた手紙は法にふれるので、当庁の検閲改善課まで出頭を命じます、ときたもんだ。おいおいおい、ぼくの書いた手紙って、あのラブレターのことか?あれが抵触したっていうのか? いまさらながら、この周回文書検閲制度には腹が立つ。いくらテロ対策…

子盗り鬼

子盗り鬼がやってくる。 どうやら昼間、娘が連れて帰ってきたらしい。というのも昼間はこの鬼、とても愛らしい子供の姿をしてるから、大抵の人はまさかこの子供が子盗り鬼だなんて思わないらしい。だから、ウチの娘もだまされた。 子盗り鬼は吸血鬼と同じで…

世界の出口

『世界の出口』が見つかったとの報道に全世界の人々が興味津々である。聞くところによると、『世界の 出口』はイエメンにあるという。 連日テレビでは、『世界の出口』情報が報道される。 『世界の出口』は青い色の大きな穴で、近づくと吸い込まれるのだそう…

未知のゲート

カーキ色の作業服を着た男は言った。 「油断しちゃいけません。気をゆるめると命を失うことにもなりかねません」 物騒なことを言うなぁと思ったが、黙って頷いておいた。 「ただでさえ危険な作業ですから、慎重にすすめてください。あっ、それと」 そう言っ…

カラムス戦記

カラムス城を出てすぐに公爵が鼻をヒクヒクさせながら言われた。 「この匂いはあれか?肥料の匂いか?」 そうか、公爵は隣国のシェンツを公式訪問されていて二日前の戦争がどれほどの規模だったかご存知ないのだと思い至った。 「いえ、公爵この匂いは戦で死…

サムライ?

古瀬田街道を東に行くと、斜めに突き出た枝が見事な樹齢百年といわれる大木がある。 友人の山瀬と二人肩を並べて歩いていると、その木の前にうずくまる男がいるのに気がついた。 「もし、そこのお侍さん。いったいどうなされたんですか?」 そう声をかけて初…

風邪の時にみる夢

子どもの頃、風邪を引くと必ずみる夢があった。 どこか暗い場所。建物の中にいるらしいが、暗くてよくわからない。 風がビュービュー吹いてきて、とても寒い。 暗いから、意味もなく怖い。誰か早く電気つけてくれと思うけど、誰もつけてくれない。 自分でつ…

通夜

どこかの親父の通夜にむかっている。 会社の人と一緒だ。 ぼくは、一人先を急ぐ。 道はやがて土手沿いになり、見事な枝ぶりの大きな木が道にそってはえていて、垂れ下がった枝が邪魔 で、腰を屈めないと歩けない。 やがて道は、川と交わる。 そこには、橋が…

燃えるキリスト

星のきれいな夜。 ぼくは、誰か男の人と一緒に歩いている。 天の川が、のしかかるようにして空に横たわっている。 ほんとうに、きれいだ。 やがて、ぼくたちはオレンジ色の街灯に浮かび上がった水道局までやってくる。 すると、水道局の裏にある小さな山の向…

ヤ○ザ満載車

家の前に立ってると、車が一台やってくるのが見える。 それが尋常でない。 ワンボックスタイプの車なのだが、車の屋根の上にも座席が据付てあって、一台の車に20人くらい乗っ ているのだ。ちょうど、インドの路面電車のような状態だ。 さらに驚くのが、そ…

妖怪『横なめ』

「横なめ」という妖怪が出るというので、退治しにいくことになった。 ぼくは、老人と少女を従えて、「横なめ」が出没するという砂浜にやってきた。 「横なめ」とは、荒馬にあぐらをかいて座った全裸の女の妖怪で、捕まってしまうと頭だけをバリバリ喰 われて…