子どもの頃、風邪を引くと必ずみる夢があった。
どこか暗い場所。建物の中にいるらしいが、暗くてよくわからない。
風がビュービュー吹いてきて、とても寒い。
暗いから、意味もなく怖い。誰か早く電気つけてくれと思うけど、誰もつけてくれない。
自分でつければいいのだが、ぼくには両腕がない。
はやくこの場所から抜け出したい。
明るいところに行きたい。
そう思って、ぼくは動きだす。
そろり、そろりと前に進むと開いているドアがある。
そこを抜けると、月明かりに照らされた部屋があった。
片隅で、女の人が泣いている。壁際にしゃがみこんでシクシク泣いている。
赤ん坊を抱えているみたいだ。
なんで、泣いてるんだろう?
しかし、この部屋は暑い。さっきは寒かったのに、この部屋の暑さときたら真夏みたいだ。
ぼくは、女の人に声をかけようとして気づく。ぼくには、舌もないんだ。
声をかけることもできず、静かに近づいていくと気配を感じたのか、女の人が顔をあげる。
女の人はぼくを見て、抱いてる赤ん坊を差しだした。
両腕がないから、受けとることができない。
よく見ると、赤ん坊は人形だった。
そこで、ぼくは怖くなる。
息が苦しくなって、頭が重くなる。
苦しい。
どうしたらいいのか、わからない。
やがて、光が射してきて世界が白くなり、眼が重たくなってきたなと思ったら、目が覚めた。