星のきれいな夜。
ぼくは、誰か男の人と一緒に歩いている。
天の川が、のしかかるようにして空に横たわっている。
ほんとうに、きれいだ。
やがて、ぼくたちはオレンジ色の街灯に浮かび上がった水道局までやってくる。
すると、水道局の裏にある小さな山の向こうから、燃える十字架に磔にされたキリスト像が浮かび上がっ
てくる。
大きい。さしわたし20メートルはありそうだ。
その大きなキリスト像が、メラメラと火におおわれている。
ぼくは、怖くなる。
なにか、とてつもないタブーが露見するような、全世界的な恐慌にも似た恐怖を感じる。
燃える像は、ゆっくりと漂いながらぼくたちの頭上までやってくる。
キリストの顔は、口も目も開かれている。絶望に、何かを叫んでいるような顔だ。
ぼくたちの真上まできたところで、浮遊する像は静止した。
すると、ぼくと一緒にいた男の人が、キリスト像から垂れ下がっているロープに気づいた。
だめだ!と言おうとしたが時すでに遅し。彼はそのロープを引っ張った。
引っ張られたロープは、ピンと張って少し抵抗したがやがて落ちてきた。荒法師と共に。
キリスト像から落ちてきた荒法師は、道路の反対側に着地した。
墨染めの衣を着て、手には錫丈を持っている。
顔の大部分は、大きな笠に隠れて口元しか見えない。
その口元が、なにやらつぶやいている。
こちらを向いていないのでよくわからないが、しきりに何かをつぶやいている。
それを見て、ぼくはさらに怖くなった。
奴は、とんでもない呪いの言葉を吐いてるんじゃないのか?
それは、とても忌まわしい呪いなんじゃないのか?
恐怖に卒倒しそうになったところで、目が覚めた。