読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

通夜

どこかの親父の通夜にむかっている。

会社の人と一緒だ。

ぼくは、一人先を急ぐ。

道はやがて土手沿いになり、見事な枝ぶりの大きな木が道にそってはえていて、垂れ下がった枝が邪魔

で、腰を屈めないと歩けない。

やがて道は、川と交わる。

そこには、橋がなくて木を組み合わせて筏のようにして水に浮かべただけのものがあるだけで、不安定こ

の上ない。

どうしても落ちそうになるので、ぼくは四つんばいで進むことにする。

その不安定な筏が一キロほど続いたところで、やっと向こう岸が見えてくる。

どうにかこうにか辿りついて、目的の家を探しあてると、お通夜のはずなのにそこは灯りの消えた大きな

旅館だった。

玄関を開けて声をかけても誰も出てこない。

家を間違えたわけでもないのに、おかしいなと思っていると会社の人たちが追いついてきた。

事情を話すと、向こうで祭りやってるから行こうとのこと。

そういえば、さっきからにぎやかな喧噪が聞こえていた。

でも、お通夜はどうなるのかと訊いたら、そんなものはどうでもいいとのこと。

じゃあ行きましょうかと、ぼくたちはそこに置いてあった車に乗り込む。

祭りは盛大なもので、人があふれかえっている。

運転している同僚は、その人ごみの中に車を進めようとする。

歩行者天国になってるみたいだから、車では無理だろうと言うと、そんなことはないと無関心な様子。

仕方なく様子をみていると、向こうから不良少年の一団がやってくるのが見える。

それが只の不良ではなく、殺気をはらんだとても危険な集団のように思われた。

と、ぼくらの乗っている車に一人の男が乗り込んできた。

顔を見ると、とても美しい男だった。

だが、デンジャラスな匂いもプンプンしている。

やがて、不良少年たちが、すぐ側までやってきた。そのなかの一人が、なにかを投げた。

それは、運転席の窓から入ってきて、助手席側のドアの内側に突き刺さった。

それは赤と白のストライプ模様の紙飛行機だったのだが、ヘリの部分がカミソリのようになっている非常

に危険なシロモノだった。

不良少年たちのほうを見ると、みんなニヤけた顔でこちらを見てる。あきらかな挑戦だ。

すると、先ほど乗り込んできた見知らぬ男が、それはこの紙で作ったものだと一枚の紙切れを取りだし

て、ぼくに見せてくれた。

その紙は、飛んできた紙飛行機と同じ模様だった。でも、正方形の紙切れで飛行機の形にはなってない。

これをどうやったら、あんな物騒なものになるんだと訊くと、男は紙をぼくの手から引ったくって、瞬時

にあの凶器の飛行機を作ってしまった。

ぼくは驚いて、お前は誰だ?と訊いた。

男はちょっと考えて、あの不良少年たちと同じ世界に住む人間だと答えた。

名前は?と訊くとシグラだと言う。

聞き間違えかと思って、志村?と訊きかえすと、シグラだと大きな声で言われた。

変な名前だなと言うと、お前もこの紙飛行機で切り刻んでやろうかと言う。

いえいえめっそうもございません。素敵な名前でございますね、と取り繕って言うと

わかればいい、このままシラカセに行ってくれと言う。

どこですかそれは?と訊くと

このまま行けばすぐわかるとのこと。

とりあえず、ぼくたちはシグラを乗せてシラカセに向かった。

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