「横なめ」という妖怪が出るというので、退治しにいくことになった。
ぼくは、老人と少女を従えて、「横なめ」が出没するという砂浜にやってきた。
「横なめ」とは、荒馬にあぐらをかいて座った全裸の女の妖怪で、捕まってしまうと頭だけをバリバリ喰
われてしまうという恐ろしい妖怪なのだ。だから、この砂浜近辺には頭のない死体がゴロゴロしていた。
どうやら、「横なめ」は海の中に住んでいるらしいというので、ぼくと老人と少女は海に入って行く。
どんどん、どんどん潜っていくと、やがて庭園のあるこじんまりした日本家屋が見えてきた。
門の前におりたち、おとないを請うけど誰も出てこない。
それじゃあ、こちらからお邪魔しようかと、ぼくたちは門を開け玄関に入った。
そこでもう一度声をかけてみた。
しかし誰も出てこない。
お邪魔しますよーと声をかけ、土足のまま家に上がった。
長い廊下を抜けると、奥に茶室みたいな部屋があった。
そこに、女主人と女中らしき二人の女人がいて談笑している。
なんだ、人がいるんじゃないかと部屋に入っていくが、二人はぼくたち等いないかのように振舞ってい
る。
おかしい。どうも、ぼくたちの姿は二人には見えてないみたいなのだ。
談笑しあう二人の間に入って顔を覗きこんでも、まったく反応しないのだ。
ぼくと老人と少女は、その状況がおもしろくて、しばらくその場で二人の女人にちょっかい出していた。
すると、女中の方が
「もうそろそろ、よろしいのではないですか?」
と女主人のほうに言った。
すると主人の方も
「そうね。もういいでしょ」と同意をしめして、スルスルと着物を脱ぎだした。
なんだなんだと驚いていると、左の襖を突き破って馬が飛び込んできた。口から泡を吹いて、目が血走っ
ている。
全裸になった女主人は、その馬にひょいと飛び乗ると、あぐらをかいた。
「横なめ」だぁ、と思った時にはもう遅かった。
まず、少女が頭を食いちぎられ、大量の血を迸らせながら、ドウッと倒れた。頭は丸呑みだった。
次に老人が捕まり、頭を食いちぎられた。バリバリ噛みくだく音がした。
そして、ぼくの目の前に「横なめ」のさっきまで美しかったのに、いまではカーリー神のように牙をむ
き、血をしたたらせた口もとが迫ってきた。
アゴがはずれるらしく、スイカでもまるごと入りそうな口を開けている。
あああ、喰われる。
と思ったところで目が覚めた。