読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2011-01-01から1年間の記事一覧

高野和明「ジェノサイド」

本書も角川書店の読者モニターで当選して読んだ本である。これで角川のモニターをするのは三度目だ。 本書は、長大で尚且つ一言で説明できない複雑な展開を見せる本なのだが、それをぼくなりに一応説明しようと思う。だが、リーダビリティは素晴らしいので、…

「二ノ国」についてる豪華な本について

みなさん、ニンテンドーDSの「二ノ国」ご存知ですか?もちろんご存知ですよね。あまりゲームをしないぼくでも知ってました。だって、あのジブリがアニメーション作画、久石譲が音楽を担当。声優陣も主人公の多部未華子を筆頭に長澤まさみ、古田新太、大泉…

西村賢太「暗渠の宿」

祝・芥川賞なのである。もしかしたら、これで脚光を浴びまくって本書のようなテイストの破滅私小説を書くことがなくなってしまったらどうしようと詮無いことを考えたりしたのだが、その予想が的中したかと一瞬思ってしまった記事が先週の週刊文春に載ったの…

BDコレクション クリストフ・シャブテ「ひとりぼっち」、エマニュエル・ギベール「アランの戦争」

国書刊行会から出たこのBDコレクションはバンド・デシネというフランスの漫画を紹介するシリーズである。今回このシリーズから三冊刊行された。とりあえず、そのうちの二冊を読んでみたので、ここに紹介しようと思う。 まず一冊目はクリストフ・シャブテ「…

瀬名秀明「小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団」

この歳になって、ドラえもんにまた相対することになるとは思いもしなかったが、とうとうこれを読んでしまった。こうみえても、小学生の頃はドラえもんの虜になっていたこともあって、コロコロコミックは毎号欠かさず購読していたし、漫画の単行本はすべて読…

シンギュラリティの犬

ぼくのおとうさんは、えすえふ作家です。いつもうーんうーんうなりながらパソコンのキーをたたいてます。そんなおとうさんをみて、おかあさんは「くだらない」と言っています。おとうさんのおかげで、ぼくたちが生活できているのに、なんてひどいことを言う…

「タイタンの戦い」

映画の話題つながりなのだが、最近またまた遅まきながらリメイク版「タイタンの戦い」を観たので、少しそれに関する話をしようと思う。とりあえず、リメイク版のポスターをご紹介。 やはり最新のCG技術でもって甦ったリメイク版は、かなり迫力のある映画に…

映画「キサラギ」について

映画「キサラギ」を観た。2007年に公開された映画だから随分以前の映画である。評判がいいのは知っていたので、必ずおもしろいはずだと思っていたが、これが底抜けにおもしろい映画だったのだ。 東日本大震災があり、ここ数日は大好きな読書にも身が入ら…

インガー・アッシュ・ウルフ「死を騙る男」

死を目前に控えた末期の癌を患う老女が殺害される。椅子に座らされ、喉を一文字に切り裂かれ、顔には奇妙な細工が施されて。やがて広大なカナダを横断する形で、似たような死を目前にした人々の無惨な死体が発見されてゆく。いったい彼らはなんの為に殺され…

古本購入記  2011年 2月

上の一言メッセージでも書いてるのだが、つい先日子どもが観たいといって借りてきた「おまえうまそう だな」という映画を何気なく一緒に観ていたのだけども、その内容の凄さにちょっと衝撃を受けてしまっ たのである。 その映画ってのはこれね ↓ まあ、ほん…

小野不由美「ゴーストハント1 旧校舎怪談」

入手困難だったこのゴーストハントシリーズの第一巻をようやく読むことができた。ずいぶん前にこのシリーズの番外編として講談社X文庫ホワイトハートから出た「悪夢の棲む家」を読んだことがあったのだが、それが結構怖かったので本編も是非読みたいと思っ…

ジャック・フィニイ、ロバート・F・ヤング他 中村融編「時の娘 ロマンティック時間SF傑作選」

本書に収録されてる短編は先日読んだ大森望編「ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選」 と同じ時間SF物ばかりなのだが、副題が『ロマンティック時間SF傑作選』となっているようにタイムトラベル絡みのロマンスを描いている作品が多く収…

朝吹真理子「きことわ」

貴子と永遠子(とわこ)。だから「きことわ」なのである。葉山にある別荘でめぐりあったふたり。貴子八歳、永遠子十五歳。思い出の中でひときわ輝くあの夏の日。それから二十五年の歳月が流れ、音信不通だったふたりは別荘の解体を前にふたたびまみえること…

真野倫平編・訳「グラン=ギニョル傑作選  ベル・エポックの恐怖演劇」

19世紀末にパリのモンマルトルの丘のふもとにある路地裏で礼拝堂を改装して作られた小さな劇場が産声をあげた。その劇場では犯罪や性的倒錯をテーマにした猟奇的作品ばかりが上演され、夜になるとパリっ子たちは恐怖とスリルを求めてこの劇場に詰め掛けた…

穂村弘「絶叫委員会」

歌人である著者が日々暮らす中で出くわすあまりにもおかしい『天使的な言葉』の数々。そこには目からウロコ的な笑いのツボにあふれたものや、鋭敏な言葉の感覚を持つ著者だからこそ気づくことのできるちょっと普通じゃないシチュエーション、偶然によってこ…

ハル・ホワイト「ディーン牧師の事件簿」

まぎれもなく本作は2008年に刊行された現代を舞台にした短編集であるにも関わらず、一読すればわかるとおり、本格推理黄金期の不可能犯罪趣味が横溢する短編集で、かつてカーやチェスタトンの短編に胸躍らせた人にはなかなか懐かしい仕上がりとなってい…

『ご開帳』

町を貫く目抜き通りをゆくとまず目につくのが大きな球場で、そこでは毎年、軍艦奉行が集って全身の刺青を披露するという全国でもめずらしい催しがあるのだが、今年に限ってそれが花魁のご開帳になったというから、年が変わってからこっち、町の話題はそのこ…

大森望 編「NOVA 2 書き下ろし日本SFコレクション」

昨年刊行された大森望編の国内SFアンソロジーの中で一番気になったのが本書。本書には12人の作家の作品が収録されている。タイトルは以下のとおり。 「かくも無数の悲鳴」 神林長平 「レンズマンの子供」 小路幸也 「バベルの牢獄」 法月綸太郎 「夕暮に…

シャーロット・アームストロング「魔女の館」

負傷して身動きのとれない男性が、気のふれた女によって監禁される話といえば、誰がなんといおうとやはりキングの「ミザリー」が一番有名なのだが、本書はその「ミザリー」よりも二十年も前に書かれた同じシチュエーションのサスペンスミステリーなのである…

古本購入記  2011年 1月

ここ二、三日ほんと暖かい日が続いているが、また寒くなるよね?それとも、このまま春になっちゃうの か?いやいやそんなことないでしょ。だって、まだ二月だもの。二月っつったら、ぼくの人生の中では一 年で一番寒い月だったのだ。なのに、なんだこの陽気…

「ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語」

セルビアのベオグラードといわれても、まるっきし何処かわからない。それが旧ユーゴスラビアといわれてもあまりピンとこない。本書はそんな遠い国の作家の本である。 ゾラン・ジフコヴィッチはベオグラード大学の創作文芸の教授。本書には彼の手になる三つの…

飴村行「爛れた闇の帝国」

本書も角川書店の『読者モニター企画』でいただいた簡易製本。前回の読者モニターで一路晃司「お初の繭」のことを散々けなしてしまったのにもかかわらず、また本書で当選してしまったのである。まさか再び選ばれるとは思ってもみなかったので、正直驚いた。 …

夢の競演・・・・そして続編

ほぼ気を失いかけたところで、誰かのごつい手に抱かれて持ち上げられる感覚があった。だが、そこで意識は遠のきぼくは忘却の彼方に置き去りにされた。次に目が覚めたときには、ぼくはあたたかい部屋の中でふかふかのベッドに寝かされていた。顔がチリチリし…

「世界の料理ショー」

以前にも記事にしたことがあったが、ぼくの大好きな料理番組で「世界の料理ショー」というのがあって、司会進行兼料理人のグラハム・カーの軽妙なトークとかなり大雑把な印象を受ける料理の仕方にすっかり魅了されたと書いていたのだが、驚いたことにその番…

ジョー・ウォルトン「バッキンガムの光芒 ファージングⅢ」

〈ファージング〉三部作、堂々の閉幕なのである。思わず唸ってしまうほどの完成度だった。何がどう素晴らしいのか、どこがどうおもしろいのか微に入り、細を穿ち詳しく説明するのが筋なんだろうが、いやあ、それは出来ない相談だ。だって、そんなことをすれ…

ミランダ・ジュライ「いちばんここに似合う人」

とにかく読んでみて。もうこの本について語るときはいきなりそう言ってしまいそうな勢いなのだ。ほんと、ここに収録されている16の短編はすべてにおいて新鮮な驚きと小憎らしいほどの可愛さと、儚い痛々しさにあふれており、触れればパチンとはじけてしま…

ジェイムズ・ボーセニュー「キリストのクローン/新生 (上下)」

キリストのクローンなんて題材、いままで掃いて捨てるほど描かれてきた。時にはオカルティックに、時にはメディカルスリラー風に、またある時にはポリティカル・サスペンス風に。 では、本書はいったいどんなテイストの物語なのか?いやいや早急な判断はまだ…

天狗の死体

蔵の中にある死体が気になっていた。どうやってその死体と関わったのかはわからないのだが、とにかくぼくはその死体を発見されないように細心の注意をはらっていた。 だが、秘密は暴かれるためにある。ぼくの努力は報われることなく、秘密が秘密でなくなる日…

古本購入記  2010年12月

今年の年始は例年になくよく本を読めたので、本の更新ばかりで昨年ラスト月の古本購入記を書くのを忘 れていた。今年の正月は一日からビンゴ大会で一位入賞して、晩に霜降りの最高級肉のすき焼きを食べ、 二日目は伊勢海老の入った高級おせちをいただいた。…

西村賢太「二度はゆけぬ町の地図」

今日、今期の芥川賞と直木賞の候補作が発表されたが、本書の西村賢太も新潮12月号に発表した「苦役列車」で候補に挙がっている。だからというわけでもないのだが、たまたま手にとった本書を軽い気持ちで読みはじめたら、まさにグイグイと引っ張られてしま…