読書の愉楽

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小野不由美「ゴーストハント1 旧校舎怪談」

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 入手困難だったこのゴーストハントシリーズの第一巻をようやく読むことができた。ずいぶん前にこのシリーズの番外編として講談社X文庫ホワイトハートから出た「悪夢の棲む家」を読んだことがあったのだが、それが結構怖かったので本編も是非読みたいと思っていたのだ。

 

 本作で描かれるのは、とある高校の敷地内にある古びた旧校舎にまつわる怪談である。この旧校舎は取り壊そうとすると事故が起きたり、幽霊出没の噂が絶えなかったりして、関係者から恐れられていたのだがようやくその問題を解決しようと校長が動きだしたのだ。そして白羽の矢をたてられたのが『ナル』こと17歳の渋谷一也が所長を務める渋谷サイキックリサーチだったのである。

 

 この際、どうして高校生の分際で数々の高価な機材を用いて心霊現象の調査事務所を構えていられるのかなんて不思議はうっちゃっておこう。おそらく、そこらへんの事情は追々解明されていくのだろうから。

 

 ナルの調査方法はいたってシンプルであり、おそろしく科学的で実証重視の帰納法に基づくものである。

 

 ビデオカメラやサーモグラフィ、集音マイク等を設置しあらゆるデータを集積してゆき結論を導き出す。

 

 その姿勢はすばらしく機能的なのだ。だから17歳だからといって見くびってはいけないのである。

 

 そして、もう一人このシリーズには欠かせない仲間がいる。興味本位で調査中の旧校舎に入り込み、ナルの助手に怪我を負わせてしまい、代わりに助手として調査を手伝わされることになった高一の谷山麻衣である。本編は彼女の一人称で進められていく。これがなかなかツボにはまってしまったのだが、高校生にしてはいたく晦渋な言葉を使ったりもするこの女子高生の存在が本書に華をそえているのは確かだ。

 

 彼女の言動がノーマルなだけに、まわりにいる心霊のエキスパートたちのキャラが強調されて、さらに話

 

を盛り上げる。そうそう、紹介が遅れたが、本書にはあと四人の心霊エキスパートが登場するのである。

 

 もと高野山の僧侶であり現在は山を降りてしまった茶髪の破戒僧・滝川法生、派手なメイクで色気を振りまいている巫女の松崎綾子、テレビにも出演しネームバリューのある着物姿の美少女霊媒師・原真砂子、関西弁まじりの変な日本語を話すオーストラリア出身のエクソシスト ジョン・ブラウン。彼らはサイキックリサーチの所長が17歳の少年だったことに驚いた校長が不安払拭のために新たに雇った人たちなのである。

 

 さて、当時はジュブナイルとして書かれていたにも関わらず、リライトされているとはいえ、本書で紹介される数々の心霊現象に関する事例はなかなか本格的なもので、これはすごく興味深かった。

 

 だが、読了していえることは本作はホラーというよりミステリー寄りの話だったということ。なるほど、そういう決着になるのですか、という感じだった。おそらく本巻以降の作品でホラー面が強調されていくのだろう。とにかく、ようやくこのシリーズが読めたことに関して喜びたい。以後も続けて読んでいきましょう。