読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

古本購入記  2011年 2月

上の一言メッセージでも書いてるのだが、つい先日子どもが観たいといって借りてきた「おまえうまそう

だな」という映画を何気なく一緒に観ていたのだけども、その内容の凄さにちょっと衝撃を受けてしまっ

たのである。

その映画ってのはこれね ↓

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まあ、ほんと子ども向けの映画って感じでしょ?ほんわかと明るくて色調もパステルっぽくってね。この

作品って絵本が元になっているのだが、この本はぼくも見かけたことがある。

その絵本ってのがこれね ↓

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みなさんもご存知 宮西達也氏の本だ。ぼく的には「お父さんはウルトラマン」のほうがよく知ってるし

何回も読んであげてたんだけどね。

で、この絵本を元にした「おまえうまそうだな」なのだが、これが草食恐竜に育てられた肉食恐竜の話で

まずそこで生じる齟齬が第一のショックとなる。主人公のハートは『肉食い』なのに、『草食い』に育て

られたことによって赤い果実だけを食べて生きている。『肉食い』の彼は家族と同じように草を食べるこ

とはできない。だからなんとか口にできる赤い実だけで大きくなってきたのである。そんな彼がある日肉

食恐竜の狩りの場面に遭遇する。殺されみんなに食べられてゆくトリケラトプスを見て、ハートはあまり

の恐怖に腰を抜かしてしまう。初めて見る凄惨な狩りの場面に驚くハートの姿は尋常じゃない。ぼくはそ

こにショックを受けてしまう。厳しい現実に直面し、自分がその血に飢えた『肉食い』と同類だと理解し

た彼の苦悩。これはすごく辛いことだ。ぼくがこんな目にあったらアイデンティティの崩壊をまねいてし

まうだろう。そうして自分の本当の姿に目覚めたハートは育ててもらった草食恐竜の元を離れ、一匹狼と

なる。『肉食い』の集団からも疎外され『草食い』からも恐れられるハートの孤独。そんなある日彼は小

さい卵を見つける。その瞬間に生まれたアンキロサウルスの赤ちゃんを食べようと「おまえうまそうだな

」と言うハートに向かって、小さい赤ちゃんは「お父さん!お父さん!」と擦り寄ってくる。「お父さん

ぼくの名前言ってくれた。ぼく「うまそう」だね」と。そうしてこの奇妙な親子の旅が始まるのである。

この映画の中には、ちょっとうまく説明できないような倫理道徳的な概念が含まれていて、それが通奏低

音として常に流れている。子ども的には、ただただストーリーを追うだけで瞬く間に時間が過ぎていくお

もしろい映画なのかもしれないが、なまじ大人が観ると、すごく複雑な心境になってしまう映画なのであ

る。気になった方がおられたら、どうぞ観ていただきたい。なんとも心に残るアニメ映画なのだ。

というわけで、長々と古本とは関係ないことを書いてきたのには理由があって、今回はあまり紹介するほ

ど本を買ってないのである。驚くことに購入した古本は3冊。わお。すごく減ったんじゃない?いやいや

普通、一般的にはこのくらいの冊数が普通で、十何冊も買っているぼくが普通じゃないんだろう。で、い

つものごとく列挙すると


「きことわ」 朝吹真理子

「羊の目」 伊集院静

「レースリーダー」 ブルノニア・バリー


となる。凄いでしょ?随分我慢したもの。古本屋にもあまり行ってないもの。だから先月は読了本の記事

も多かったわけだ^^。伊集院静の本を買ったのは今回が初めてなのだが、この「羊の目」はすこぶるお

もしろいヤクザの話だそうで、気になって仕方がなかったのだ。「レースリーダー」はミステリ書評家が

こぞって褒めてた本で、レースの編み目を見て未来を読む不思議な能力を持つ人の話。実をいうと、これ

100円になるのをずっと待っていたのだ^^。

新刊は一冊購入。


「連続殺人鬼カエル男」中山七里


この人の「さよならドビュッシー」や「おやすみラフマニノフ」にはあまり食指が動かなかったのだが、

このタイトルはダメでしょう。こんなの買ってしまうに決まってるじゃないか。いったいどんな話なんだ

ろう?はやく読みたいのだが、読むのはまだ先になりそうだ。

そして『本が好き!』の献本が二冊。


「ディーン牧師の事件簿」 ハル・ホワイト

「死を騙る男」 インガー・アッシュウルフ 


「ディーン~」のほうはすでに紹介済みで、「死を騙る男」はいま読書中。これ結構分厚いんだけど、案

外読みやすいので、躊躇してる方読んでみて下さい。老齢の警察署長代理を務める女性が主人公というだ

けで映画「ファーゴ」を思い浮かべてしまうぼくは単純かな?まだ30ページしか読んでないんだけど、

これは期待大ですよ。