攻めてるよね、竹書房。一皮剥けたっていうか、方向転換ていうか。決してメジャーにはならないんだろうけど、この新生 竹書房を歓迎している人もきっと多いはず。ギリシャSFなんて、日本語で読める日がくるなんて思ってましたか、みなさん!
というわけで、収録作は以下のとおり。
「ローズウィード」ヴァッソ・フリストウ
「社会工学」コスタス・ハリトス
「人間都市アテネ」イオナ・ブラゾプル
「バグダッド・スクエア」ミカリス・マノリオス
「蜜蜂の問題」イアニス・パパドプルス&スタマティス・スタマトプルス
「T2」ケリー・セオドアコプル
「われらが仕える者」エヴゲニア・トリアンダフィル
「アバコス」リナ・テオドル
「いにしえの疾病」ディミトラ・ニコライドウ
「アンドロイド娼婦は涙を流さない」ナタリア・テオドリドゥ
「わたしを規定する色」スタマティス・スタマトプロス
名前の表記で「蜜蜂の問題」のスタマティス・スタマトプルスと「わたしを規定する色」のスタマティス・スタマトプロスは同一人物なのだが、この通りに表記されているのでそのままにしておく。英語表記から推測するに、スタマトプロスが正解だと思う。
で、内容なのだが、どうもお国事情が色濃く反映されているようで、全体的に見通しの暗いトーンの沈んだ作品が多いように思う。ラストの「わたしを規定する色」が色のない世界を描いているので、それで締められてより一層モノトーンで陰鬱な印象が強調されたのかもしれない。
サイエンス・フィクションのもつセンス・オブ・ワンダー的なアイディアと見たことのない景色、高揚感、脅威というものがあまり感じられなかった。そんな中でも立ち位置の反転で当たり前の事実が恐怖となった世界を描く「いにしえの疾病」は印象に残った。ラストの二編「アンドロイド〜」と「わたしを〜」はどちらも一度読んだだけでは、話の構成がすんなり頭に入ってこない書き方だから、これもなかなか印象に残った。「われらが〜」も、夏の強い日差しの中で輝く儚さが描かれていて忘れがたい。そんなとこかな。
でもこういう未知の作品が日本語で読めるなは、本当に素晴らしいことだと思うのである。だから、次に刊行されるギリシャミステリ傑作選もいまから楽しみで仕方がない。鶴首して待つことにしよう。