これね、結構長い時間かけて読んだんですよ。おそらく5年くらいかかってるんじゃないかな。短編集だから、たまに電車に乗って出かけたりするときにお供にしながら読んだんだけど、これがなかなかいい効果だしていて、5年も経ったら先に読んだ作品のことなんか忘れるんじゃないの?って思うでしょ。
確かに詳細は忘れてたりするんだけど、ここに収められている短編ってラストを読めば、かなり詳細に物語を思い出すことができたりするんだよね。で、長い時間かけて読んでるから、結構自分の身体の中に浸透していて、それぞれの情景が思い出せたりするんだよね。速読も素晴らしい技術だと思うけど、やっぱりぼくは遅読をオススメします。遅読は絶対物語が身体に浸透するからね。
確かに詳細は忘れてたりするんだけど、ここに収められている短編ってラストを読めば、かなり詳細に物語を思い出すことができたりするんだよね。で、長い時間かけて読んでるから、結構自分の身体の中に浸透していて、それぞれの情景が思い出せたりするんだよね。速読も素晴らしい技術だと思うけど、やっぱりぼくは遅読をオススメします。遅読は絶対物語が身体に浸透するからね。
というわけで、本書の収録作は以下のとおり。
墓を愛した少年 フィッツ=ジェイムズ・オブライエン
岩のひきだし ヨナス・リー
フローレンス・フラナリー マージョリー・ボウエン
陽気なる魂 エリザベス・ボウエン
茶色い手 アーサー・コナン・ドイル
七短剣の聖女 ヴァーノン・リー
がらんどうの男 トマス・バーク
妖精にさらわれた子供 J・S・レ・ファニュ
遭難 アン・ブリッジ
花嫁 M・P・シール
喉切り農場 J・D・ベリズフォード
真ん中のひきだし H・R・ウェイクフィールド
列車 ロバート・エイクマン
旅行時計 W・F・ハーヴィー
ターンヘルム ヒュー・ウォルポール
失われた船 W・W・ジェイコブズ
一般的にこういうジャンルは、主流にはなり得ないし、とらわれ方としては本道から外れたマイノリティだ。だが周知のとおり嘗ての文豪たちはこの追いやられた、あるいは蔑まれた一群の作品たちをこよなく愛し、そればかりか自らの手で生み出していった。そう、彼等のような主流に位置する人たちが認めるほど、この工芸品の一群は人を惹きつけて止まないのである。そうやって連綿と続いてきたこのジャンルには、まだまだ陽の目をみない傑作が数多く埋没していると思われる。
そこで本書なのであります。ここに収録されている作品群は副題にもあるとおり、怪奇小説の黄金期である19世紀後半から20世紀前半に書かれたものから精選されたもので、編者の西崎氏オススメの素敵な作品が目白押しなのであります。各編については詳しくは書かない。読むのが一番、是非読んでみて下さい。でも、やっぱりちょっとだけだけ書こうかな。途轍もなく印象に残ったのは「遭難」と「列車」の中編二つ。他の作品より長いのもあるけどこの二つそれぞれナチュラルなものと超自然的要素のないものとが描かれ見事に完成された作品となっている。どちらも結末に至る道行きが丁寧に書き込まれており、見ようによってはそれが助長に感じられるかもしれないが、それこそが滋味であり物語を豊かたらしめているといえる。さらに付け加えるなら、どちらの作品も描かれる場面の一つ一つが鮮明に頭の中のスクリーンに映し出され、刻み込まれていき、映画を観たような錯覚に陥るほどだ。
というわけで怪奇小説黄金期に書かれた18編の精髄たち、とくと御賞味下さい。