もう二十年以上前に刊行された本だから、存在自体が消えてしまっているよね。収録作は以下のとおり。
「魔術師」 芥川龍之介
「超自然におけるラヴクラフト」 朝松健
「わな」 H・S・ホワイトヘッド
「奇術師」 土岐到
「忍者明智十兵衛」 山田風太郎
「さびしい奇術師」 梶尾真治
「幻戯」 中井英夫
「花火」 江坂遊
「魔術師」 チャールズ・ボーモント
「手品師」 吉行淳之介
「劇場」 小松左京
「ハッサン・カンの妖術」 谷崎潤一郎
「ひわまり」 ラフカディオ・ハーン
いつものごとく、勉強になります。ほんと選者の造詣が深いとバラエティに富んだラインナップに驚かされる。この中に馴染みのない作家が一人いるんだけど、たぶん、これを読んでいるみなさんも知らない作家だと思うんだけど、その土岐到にしたって消息不明だっていうんだから、よくこんな作品掘り出してきたなあと感心してしまう。
何度も書くけど、ほんとこういう機会がないと一生読まないだろう作品ばかりで(風太郎は別ね。これは既読だったし)その顔触れに驚く。本書で二重に驚かされたのが芥川龍之介が谷崎潤一郎の短編をリスペクトして「魔術師」を書いていたってこと。こういうのって、広く網羅してないと気付かないもんね。
前回の「吊るされた男」ほどおもしろさはなかったんだけど、やはり読んでよかったと思わせる。アンソロジーって選者との相性あるよね。井上雅彦氏は、いい選者です。