読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

頭木弘樹編「うんこ文学 ――漏らす悲しみを知っている人のための17の物語」

うんこ文学 ――漏らす悲しみを知っている人のための17の物語 (ちくま文庫 か-71-4)

 うんこ漏らしたことあるかって?そりゃ、ありますよ。オナラするつもりが、下痢っててでちゃったとか、いままでの人生で何回もありますよ。でも、正常の状態で便意をもよおして、トイレに間に合わず漏らしちゃったってのはないなー。でも、そういう危機に陥ってしまっている人がのっけから出てくるんですよ。本書に収録されているのは以下のとおり。


第一便 ある日、ついに……

 [帰り道で漏らす]

   私小説
   「出口」 尾辻克彦


 [家から最も遠い地点で]

   エッセイ
   「春愁糞尿譚」 山田風太郎

第二便 人間としての尊厳を失う漏らし

 [大勢の前で漏らす]

   感染症小説
   「コレラ」 筒井康隆


 [漏らさせられる]

   フランス文学・評伝
   「ルイ十一世の陽気ないたずら(抄)」 バルザック[品川亮 新訳](『おかしな小話』より)


第三便 隠せないにおい

 [においが教室に充満]

   自叙伝
   「ヒキコモリ漂流記 完全版(抄)」 山田ルイ53世

 [ドリアンだと思ったら……]

   エッセイ
   「黒い煎餅」 阿川弘之

 [親子三代]

   エッセイ
   「トルクメニスタンでやらかした話」 阿川淳之

第四便 うんこへの特別な思い

 [夕陽を見て漏らす]

   エッセイ
   「石膏色と赤」 吉行淳之介

 [美しい便の幻想]

   日記形式の短編小説
   「過酸化マンガン水の夢」 谷崎潤一郎

 [よくないものを出す]

   落語
   「祝の壺」 桂米朝

第五便 うんこと真剣に向き合う

 [自分の大便を見つめる]

   随筆
   「黄金綺譚」 潔癖の人必ず読むべからず 佐藤春夫

 [あえて外で出す]

   実践談
   「野糞の醍醐味」 伊沢正名(『くう・ねる・のぐそ 自然に「愛」のお返しを』より)

 [うんこへの思いを分類]

   評論
   「スカトロジーのために」 山田稔(『スカトロジア(糞尿譚)』より)

第六便 うんこのせつなさ

 [トイレを使わせてもらえない]

   韓国文学
   「半地下生活者」 ヤン・クィジャ(梁貴子)[斎藤真理子 新訳]

 [女性が大を漏らす]

   少女マンガ
   「ピクニックにきたけれど…の巻」 土田よしこ(『つる姫じゃ~っ!』より)

番外編1 お尻の拭き方

   「お尻を拭く素晴らしい方法を考え出したガルガンチュアに、グラングジエが感心する」 ラブレー[品川亮 新訳](『ガルガンチュアとパンタグリュエル物語』より)

番外編2 編集者の打ち明け話

   「お尻と大便のことにつきまとわれる」 品川亮


 よくも集めたり!素晴らしいでしょ?こんなにあるんだねうんこの尾籠な話。でも、この排泄ってのは生きていく上で切っても切りはなせないものだもんね。絶対一日一回はするし(ま、便秘の人はさておき)決して目をそらすことはできないことだからね。いってみれば、SEXせずとも生きていけるけど、排泄せずに生きていくことは絶対無理なのであります。あたりまえだけどね。
 だから、ぼくは必ず自分のヒリ出したものの色や形やにおいはチェックしてるもんね。それでだいたい腸内環境の具合がわかるから、ああ、こりゃヨーグルト食べとかなきゃいけないなとか、もっと食物繊維とらなきゃなとか判断して、口にするもの選んだりしているのである。この辺佐藤春夫の「黄金綺譚 潔癖の人必ず読むべからず」に大いに通じるところがあるといえる。

 筒井康隆の「コレラ」は初めて読んだけど、この人のうんこへのこだわりがよくわかる作品で初期の傑作「最高級有機質肥料」っての読んだことありますか?植物星人のいる星に赴任した地球の大使が経験するトンデモな出来事が描かれるのだが、当然、植物なんだから人間の排出するあらゆる物質が彼らの大好物になるってんで、お皿に盛った大使がヒリ出した大きなうんこをナイフとフォークで食す場面が出てくるのだ。筒井氏はこの場面を描くために実際に自分のうんこを皿にのせナイフで切ってみたとか・・・・・ひぇー!!!

 ま、そんなこんなでうんこについて語る機会もそんなにないもんだから、いろいろ出てくるね。

 というわけで、興味持たれた方是非お読みください。