読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

北村薫 編 「北村薫のミステリー館」

 

 

 あまり趣味が合わないのを承知で読んでしまうんだうよね。巻末の宮部みゆきとの各作品についての対談にしても、なんだかピンとこないなぁと思いながら読んでるんだけど、なんなのかな、この違和感は。
彼らの話している言葉がストレートにこちらに伝わってこない部分と、なぜそんな些細なことにこだわってことさらその部分を強調して褒めるのかがわからない部分があって、三段論法みたいに畳みかけてきたとしてもそれが納得できないから、何を言ってるのかわからないと思ってしまう。う~ん、ぼくの頭が悪いのかな?ただ単に趣味が合わないのかな?いつも引っかかるんだよなあ。

 でも、それでも読んでしまうわけなのです。中にはお!と思う作品もあったりするからね。本書は、結構まえに刊行されてたんだけど、取りこぼしていましたね。まったくノーマークだった。千街昌之氏のTwitterで本の存在を知って、さっそく読んでみたわけ。収録作は以下のとおり。

『こちらからどうぞ』 

 「きいろとピンク」 ウィリアム・スタイグ

 「夜枕合戦」「枕の中の行軍」 岸本佐知子

『こわいものみたさの間』

 「犬」 スワヴォーミル・ムロージェク 

 「虎紳士」 ジャン・フェリー 

 「クレイヴァリング教授の新発見」 パトリシア・ハイスミス

 「息子」 オラシオ・キロガ

『ミステリーの大広間』 

 「告げ口」 ヘンリ・セシル 

 「二世の契り」 ヘンリイ・スレッサー 

 「フレイザー夫人の消失」 ベイジル・トムソン 

 「二十三号室の謎」  ヒュー・ペントコースト

 「わたしの本」 緑川聖司

 「盗作の裏側」 高橋克彦

『不思議な書庫』

 「神かくし」 出久根達郎

 「日本変換昔話「少量法律助言者」」原倫太郎/原游

 「本が怒つた日」 稲垣足穂

『ことばの密室』

 「契戀」「桃夭樂」 塚本邦雄

 「滝」 奥泉光

 「バトン・トゥワラー」 ジェーン・マーティン

 一番期待していた「滝」が不発だったんで、ちょっと物足りない。しかし、岸本佐知子さんのエッセイには笑った。この人センスあるよね。話の広げ方が素晴らしい。あと「少量法律助言者」に驚いた。よくこんなこと思いつくよね。ギクシャクした挿絵と相まって、おもしろいというよりお化け屋敷めいたいかがわしい怖さを感じたのはぼくだけだろうか。塚本邦雄氏の作品は味わい深かった。こういう作品は自分で見つけて読むってことがないので、とても贅沢な気分になる。こういうのがあるからアンソロジー読んじゃうんだよね。奥泉光氏の「滝」はさっきも書いたけど、あまりよくなかった。こういう雰囲気嫌いなんだ。神の教えとか信者とかヘレニズムとか耽美とか。もろ三島でやんの。あまりそういうのは好きじゃない。物語的にもなんだか不発だった。でも、その続きでの「バトン・トゥワラー」は良かった。こちらも、神がかり的なスピリチュアルな方に話が転んでいくけど、この感覚はわかる。ていうか、「滝」の並びだからこそ映えるんだと思う。ありだと思います。

 というわけで、読むか読まないかといえば、やっぱり読んじゃうんだよなあ。