この手のアンソロジーは大好物で、たいがいあれこれ読んできてるのだが、本書は最初期待していたものとは違った感触だったので、すこし残念だった。ま、こまかい説明は省くとして、本書は洋邦のファーストコンタクト物を集めたアンソロジーでありまして、割合的には国内産のほうが多いけど、なかなか楽しそうなアンソロジーだと思って読んでみたわけ。収録作は以下のとおり。
「関節話法」 筒井康隆
「コズミックロマンスカルテット with E」 小川一水
「消えた」 ジョン・クロウリー
「タンディの物語」 シオドア・スタージョン
「ウーブ身重く横たわる」 フィリップ・K・ディック
「イグノラムス・イグノラビムス」 円城塔
「はるかな響き Ein leiser Ton」 飛浩隆
「わが愛しき娘たちよ」 コニー・ウィリス
「第五の地平」 野﨑まど
懐かしいものから新しいものまで色々あるけど、これが個人的にファーストコンタクト物なのか?って思うものがけっこうあって純粋にそうだと思うのは「コズミックロマンスカルテット with E」と「消えた」の二作のみで、これにしたってぼくからすればファーストコンタクト物の醍醐味ともいえる異分子同士の衝突と干渉が引き起こす問題や、それに付随する恐怖、お互いが理解しようとするささやかな感動などがほとんどなく、だから個人的に不満が残ったというわけ。
他の作品にしても未知なる存在との接触が描かれているものがあったとしても、そこに上記に書いたような個人的に期待するファーストコンタクト物の醍醐味は皆無で、接触がもたらす変化が少し描かれるだけで、そこに新味はない。ラストの「第五の地平」に至っては、ファーストコンタクト物ですらなかった。だって、チンギス・ハーンが宇宙に進出して宇宙空間に草原を現出させる話なんだもんね。なんだ、これ?
本書の中で好きなのは、以前「不思議のひと触れ」に収録されていたのを読んだことがあるスタージョンの「タンディの物語」。これは構成が揮ってて、なかなか楽しい。あとはその他大勢って感じで、飛びぬけて良いなと思った作品はない。ぼくとしては、キャンベルの「影が行く」みたいなガッツリまみえるファーストコンタクト物が一つでも入っていたらと思うのである。これは企画倒れって感じなんだもん。