読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

最後の願い

あの頭上に輝いている

赤い星は

火星だろうか

ぼくは犬と一緒に

暗い夜道を散歩している

突然に

ぼくは死を予感する

犬は無邪気に尾をふっている

今年の初雪は、たぶん十二月二十三日に降るだろうが

おまえもぼくも

それを見ることはないだろう

眼下を流れる大きな川に

一艘の船が流れていく

鼻をつく清い緑は川の上を流されて

灯りでまばゆいばかりの小さな船は

巧みにあやつる黒人とともに

ゆっくり

ゆっくり

小さくなっていく

ぼくの気持ちは光に濡れて

まっすぐあなたに届いてゆくだろう

あつい、あつい

血とともに