読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

セルビアの二人

教会に行ったまま帰らない君

嘘なんかついてないのに

いつもぼくの先回りをして

手足を拘束してしまう

アリガトウという言葉が出ないのは

そう思ってないからじゃない

恥ずかしいんだよ

なんだか電車の中でお年寄りに席を譲るときみたいに

とても面映くなってしまうんだ

処女であるぼくは君の童貞を奪った

それがいつまでも心に残ってる

約束は必ず守られるわけじゃない

ゆるやかに禁は破られる

目に見えない何かが

ふたりの間に堆積し

肩も、てのひらも白く覆ってしまう

ぼくは君を探せない

君はぼくを探さない

二人の指は触れることなく

ケープコットの海に砕け散り

ねえ、おかあさん、あなたはまだぼくを愛しているの?