教会に行ったまま帰らない君
嘘なんかついてないのに
いつもぼくの先回りをして
手足を拘束してしまう
アリガトウという言葉が出ないのは
そう思ってないからじゃない
恥ずかしいんだよ
なんだか電車の中でお年寄りに席を譲るときみたいに
とても面映くなってしまうんだ
処女であるぼくは君の童貞を奪った
それがいつまでも心に残ってる
約束は必ず守られるわけじゃない
ゆるやかに禁は破られる
目に見えない何かが
ふたりの間に堆積し
肩も、てのひらも白く覆ってしまう
ぼくは君を探せない
君はぼくを探さない
二人の指は触れることなく
ケープコットの海に砕け散り
ねえ、おかあさん、あなたはまだぼくを愛しているの?