読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

マイクル・クライトン「ジュラシック・パーク」

この作品は映画の方が有名なので、誤解されてる部分があるかもしれない。本書を読んでこの作品のおもしろさを充分承知しているぼくでさえ、いまではこの作品を軽々しく認識している部分がある。それもこれも映画の印象が強いゆえ、メディアに商品化された作…

金原ひとみ「ハイドラ」

またまた「本が好き!」の献本である。 金原ひとみの本を読むのは、本書が初めてだ。どちらかというとこの人よりお父さんの金原瑞人氏のほう がお世話になっている^^。いままでこの人の本を手に取らなかったのは、過激な描写が多そうだなと感 じたからだ。…

桐生祐狩「小説探偵GEDO」

図書館でたまたま見つけて『小説探偵』という文字に惹かれて読んでみた。小説内に入り込む話といえばジャスパー・フォードの「文学刑事サーズデイ・ネクスト」を思い出すが、本書もあれに想を得て書かれたのだろうか? 本書は短編連作形式で話がすすめられる…

M・スラング編「レベッカ・ポールソンのお告げ」

文春文庫から出てたホラー・アンソロジーである。 簡単に各編の寸評いってみよう。◆ スティーヴン・キング「レベッカ・ポールソンのお告げ」 これを読んであの「トミー・ノッカーズ」がかなり不気味な作品だったんだなぁということに気づいた。この短編はあ…

おばあちゃんのこと

ぼくの母方の祖母は、現在102歳か103歳になっている。歳がはっきりしないのは、誕生日が二つ あるからだ。誕生日も二つなら、名前も二つある。通常はこちらという風に決めてあるようだが、実際 のところどれがほんとうなのか誰にもわからない。明治の…

鈴木光司「仄暗い水の底から」

水、特に海から得られるイメージは、明るく爽快で開放的なものである。 だが、それと同じくして背中合わせに、暗くてどんよりして密閉的なイメージも孕んでいる。明と暗。昼と夜の違いで、これほど印象が変わるのも海が生きている証拠である。 本書に収録さ…

ウィリアム・ディール「真実の行方」

この人は最初、冒険小説家としてわが国に紹介された。それらはすべて角川から出版されていた。 それほどブレイクはしなかったが、玄人筋には割りと評判がよかったように記憶している。そんなディールがサイコサスペンスで一躍脚光を浴びたのが本書「真実の行…

栗本薫・選「いま、危険な愛に目覚めて」

栗本薫愛するところの『耽美小説』ばかり集めたアンソロジーである。 これは日本ペンクラブが編纂していたアンソロジー集「日本名作シリーズ」の一冊であり、現在でも売られているのかどうか知らないが、それぞれのテーマをもったアンソロジーがその分野に明…

G・ガルシア=マルケス「わが悲しき娼婦たちの思い出」

久しぶりにマルケスを読んでみた。彼の最新作である。どうやらこの小説は川端康成の「眠れる美女」に触発されて書かれたものらしい。それはそれでいいのだが、この小説を書いたとき、マルケスが77歳だったということに驚いてしまう。内容も、かの小説を元…

魂泥棒 その2

おばあさんはニタッと笑うと、人差し指を上に向けてクイクイと手前に折った。こっちへ来いということ らしい。ぼくは正座をしたまま、両手を使ってすり寄った。 眼前に迫るシワくちゃのおばあさんの顔は正視にたえないが仕方がない。ぼくは縋る思いで、おば…

魂泥棒 その1

◆ 今回の夢はいつになく長いので、今日と明日の二回に分けてお送りいたします。 魂泥棒が出没するとても危険な世界である。誰もがいつ魂を盗られるのかと、おびえて暮らしている。 ぼくも、怖くて怖くて仕方がない。だから物知りばあさんの家まで行くことに…

宮部みゆき「R.P.G」

これってあんまり評判良くないのかな?ぼくは大好きなんだけど。 本書は2001年の夏に文庫書き下ろしで刊行された。文庫書き下ろしという形式が、彼女としてはめずらしい試みだったと記憶している。長編ではあるがほんとに短い作品で、数時間で読めてしま…

イアン・マキューアン「セメント・ガーデン」

原書が刊行されたのが1978年。その翻訳が出たのが2000年である。この間20年以上のひらきがあるのはなぜだろう?その一因にはマキューアンのわが国内での認知度という問題もあったろうし、出版社の事情もあるかもしれないのだが、一番の要因はやは…

有川浩、角田光代その他「Sweet Blue Age」

こんな本が角川から出てたとはね。う~ん、まったく知らなかったぞ。ここに収録されてる作家陣の顔ぶれは結構豪華なんじゃないの?ここで収録作を紹介しておこうか。 ◆ 角田光代 「あの八月の、」 ◆ 有川 浩 「クジラの彼」 ◆ 日向 蓬 「涙の匂い」 ◆ 三羽省…

こんな世界で

数珠つながりに連想する不埒な幻想 鏡に映るぼくの眼は死んでいて 最近では感動すら宇宙の果てに遠ざかってしまった 頭の中の不安なぼくと 心の中の短気なぼく どちらが勝ってもままならない 世間の風はいつもぼくを攻めるけど 誰も知らない 知ろうともしな…

山之内正文「エンドコールメッセージ」

この人の作品は、ブログ仲間の間ではそれほどいい評価をもらってなかった気がする。とりあえず初めての作家さんはデビュー作を読んでみるという定石を踏んで本書を手にとった。 本書には四編の短編がおさめられている。それぞれおもしろくミステリとしてのカ…

清水義範「ターゲット」

清水義範がこんな本を書いてたなんて知らなかった。うっかり見落としてたなぁ。平成12年かぁ。ついこのあいだじゃん。T・ハリスの「ハンニバル」と一緒に刊行されてるから、店頭で見てたはずなんだけどなぁ。まったく記憶にないや。この藤田新策の表紙は…

スティーヴン・キング「図書館警察」

キングの短編が、なんともお粗末なシロモノだということは何度も書いてきた。中には 「道路ウィルスは北にむかう」なんてゾクゾクするような作品もあるのだが、総じて彼の短編はB級作品のオンパレードである。やはりキングの真骨頂はその執拗な書き込みであ…

三雲岳斗「聖遺の天使」

この人ラノベから出てきた人だけど、本物だね。初めて読んだ本書で確信した。だって、15世紀のイタリアを舞台に、これだけしっかりしたミステリ書いてんだもん、こりゃ本物だわ。まして探偵役は、あのダ・ヴィンチときたもんだ。う~ん、素晴らしいぞ。 そ…

吉村萬壱「ハリガネムシ」

この感触はなんだろう?とずっと思いながら読んでいた。とても短い作品でもあり、すごく読みやすいの で、あっという間に読み終えてしまうのだが、これがなかなかどうして結構ガッチリと心に食い込んでく るのである。しかし、それはいい意味での食い込みで…

藤谷治「恋するたなだ君」

本書は「夜は短し歩けよ乙女」と非常に似通っている。といっても刊行されたのは本書のほうが先なのでこっちが本家本元というわけだ。しかし、似通った設定とはいえ本書も独自のカラーをもっており、無類におもしろかった。タイトルからもわかるとおり本書の…

捨てられる子

地下街は初めてだった。地面の下にこんなに明るくてきれいな店がたくさんあって、こんなに多くの人がいるなんてまったく知らなかった。 ぼくは母に手をひかれて駆けるように歩いてる。見上げた母の顔はいつもと違ってとても険しく、化粧もいつもより濃い感じ…

島本理生「ナラタージュ」

ここのINDEX書庫にもあるとおり、お誘いを受けてブログランキングのサイト『ブログウェブ』に参加さ せてもらってるのだが、そこの文学・カルチャー/文学カテゴリーで現在1位になってるサイトで 石畳の彼方の時計塔へというのがある。たまたまどんな ブロ…