またまた「本が好き!」の献本である。
がお世話になっている^^。いままでこの人の本を手に取らなかったのは、過激な描写が多そうだなと感
じたからだ。ぼくも男だからそういうのは嫌いではないのだが、どうもこの人の書くものは好きになれな
い気がして避けていた。その点、本書はそういった過激な部分が軽減されているようなので手を出してみ
たというわけ。
しかし、なんともとりとめない話だった。一応恋愛小説なのだが、ここに描かれる主人公早希にはまった
く魅力を感じなかった。彼女は傷つく自分を懼れて、男の言いなりになるような女だ。失うものとして懼
れているのは相手ではなく自分なのだ。そういった保身的な恋愛が成功するはずはなく、そこには常に破
滅の予感が漂っている。彼女のとる『誰にも知られたくない行動』の描写は鬼気迫るものだ。この場面で
は誰もが嫌悪感をもつことだろう。愛する者との間に危うい均整で保たれているわずかな接点。人は常に
試されているのだとしたら、彼女はそれをチャンスとはとらえず脅威とみなす。
これではまったく共感できない。これほど受身になりきり、且つ保身に目がぎらついている女性には魅力
を感じない。彼女は『愛は与えること』という意味を知る唯一の手掛かりをあっさりと捨ててしまう。
しかし、そこでも保身が顔を出す。彼女が選んだ道は彼女自身が選択したのではなくて、あらかじめ決め
られたことだったんじゃないかと。
だからなんとも曖昧だ。とりとめなく、不安定。均整を保とうとするバランス感覚が、はじめっから狂っ
てる。そのスタンスで語られる物語は歪で禍々しい。
薄い本なので、すぐ読めてしまうのが唯一の救いだ。この人の言語感覚にもうまく馴染めなかったから、
これで三百ページもあった日には、途中で本を閉じていたことだろう。
すいません。今回もこんな結果になってしまいました。